CASE進展、2020年以降の自動車業界はどう変わる?電動化や自動運転化によるインパクトは?

製造工程や人材ニーズの変化、その他は?





自動車業界の潮流ともいえるCASE(コネクテッド、自動運転、シェア・サービス、電動化)。この流れは2020年以降も続き、業界の変革を象徴するキーワードとして定着・一般化しそうだ。







CASEの進展により未来の自動車業界はどのように変化していくのか。業界の動向について推測してみよう。

■電動化で自動車の製造工程が大きく変わる

EVは、自動車の心臓とも言われる内燃機関がモーターに置き換わるなど自動車の構造や製造工程に大きな変革をもたらす。各パーツの重要性は変わらないものの作業工程としては幾分か単純化され、製造・組み立てに要する労働力は減少するものと思われる。

また詳しくは後述するが、今後は移動モビリティや宅配向けモビリティのタイプがさまざまなニーズに合わせて多様化・細分化すると考えられ、少ロット体制に対応した製造ラインを検討する必要も出てくる。

主要部品の製造に3Dプリンターを活用する流れも加速する可能性がある。米スタートアップのLocal Motors(ローカルモーターズ)は、2015年に世界初の3Dプリント自動車を開発し、EVの「Strati」や自動運転バス「Olli」などを製造している。

主要部品に3Dプリンターを用いることで、金型費を50%、工程にかかる生産時間を最大90%まで削減できるとしており、EV化とともに3Dプリンター化も導入が進むことで、期間工などの従来の労働者需要が大きく変わることになりそうだ。

■製造に関わる労働者需要が減り、エンジニア需要が増加

製造に関わる労働者や従来の機械的なメカニック需要が減少する一方、自動車のあらゆる部分がコンピュータ制御されるシステム化が進み、コンピュータ専門のエンジニア需要がますます増加するものと考えられる。

自動運転車が実用化されると、車両の保守点検は従来のメカニカル的な部分とソフトウェア部分に大きく大別され、既存の自動車整備事業者らが対応できないケースが発生する頻度が高くなる。車検においても同様で、コンピュータ診断でエラーや不具合が確認された場合、具体的にその内容と改善策を把握し、実行できるエンジニアが現場にも必要になってくる。

AI(人工知能)の搭載率も増加し、エンジニアに求められる守備範囲は拡大する一方だ。自動車業界における新たな専門職は、引く手あまたの状況が長く続きそうだ。

【参考】自動運転関連の求人については「自動運転関連求人数、2019年10月は4カ月連続増の1万5804件に」も参照。

■移動モビリティの開発バリエーションが豊かに

MaaSに象徴されるように移動サービスに向けたモビリティの開発が現在進行形で行われているが、2020年代にはこうしたモビリティの多様化が進み、定着するものと思われる。そのため自動車業界の製造現場では、より移動モビリティの開発バリエーションが多様化するものとみられる。

例えば、トヨタが開発した超小型モビリティ「コムス」や「TOYOTA i-ROAD」のような1~2人乗りのモビリティをはじめ、セグウェイのようなイメージで歩行領域での活用が検討されている1人乗りの立ち乗りタイプや座り乗りタイプなど、さまざまな用途に特化した新しいモビリティが登場することが考えられる。

トヨタを例に挙げると、2人乗りで最高速度60キロ、航続距離約100キロの超小型EVと、1人乗りで最高速度10キロ、航続距離約14キロの立ち乗りタイプの歩行領域EVをそれぞれ2020年冬ごろに発売する予定だ。

短距離の営業や巡回業務といった短距離移動と離駐車を繰り返す業務での活用や、空港や工場など大規模施設での巡回・警備での活用、荷物が多い時の移動など、さまざまな用途を想定した開発と実用化が進められている。

また、自動運転を活用したタクシーやバスも、既成概念にとらわれないタイプの登場が予想される。群馬県桐生市のベンチャー企業シンクトゥギャザーが開発した16人乗りの低速電動コミュニティビークル「eCOM-10」は、片側にタイヤが5個ずつ並んだ10輪車仕様の目を引くデザインで、群馬大学などが自動運転の研究開発や実証に活用している。

ヤマハ発動機の電動ゴルフカートをベースにした自動運転車両も多く、測量設計などを手がけるアイサンテクノロジーと名古屋大学発のベンチャー・ティアフォーなどが製作した4~5人乗りの自動運転EV「Milee(マイリー)」は、卵のような形状が特徴的だ。

公道走行向けの車両、敷地内走行専用車両、無人移動コンビニのような小売り向け車両など、それぞれが独自の進化を遂げていく可能性も高そうだ。いずれにしろ、MaaSを構成する新モビリティとしても期待が高く、今後も新規参入が相次ぎそうな分野だ。

■宅配向けモビリティの開発バリエーションも豊かに

自動運転技術の導入において、ヒトの移動とともに注目が集まるのがモノの移動だ。特に、ラストワンマイルを担う宅配ロボの開発競争は激化しており、海外では実用実証が盛んに行われている。

そして今後は、他の車両として混在して公道を走行する大型タイプから、歩道(路側帯)や敷地内の走行に適した小型タイプなどのほか、宅配する荷物の種類や大きさなどにも合わせたさまざまなタイプの宅配向けモビリティのニーズが高まるとみられる。

現状、実用化に向け一歩進んでいるのが小型タイプで、商業施設や大学構内などを舞台に国内でも実証が進められている。

需要の増加と労働力不足に悩まされる宅配業界は、宅配ロッカーの導入などで再配達労力を緩和する対策が進められているが、抜本的な解決には及ばないのが現状だ。

今後、公道における実証などもガイドライン策定とともに急速に進む可能性が高く、どのような形で自動運転技術を導入するのが費用対効果を最大化できるのか、模索を続けながら徐々に実用化の波が押し寄せてきそうだ。

■【まとめ】CASEで変わる業界 しかしメインプレイヤーは不動か

今後、自動車業界は不動産や小売などさまざまな業種と絡み合いながら変革を進め、新たなモビリティ業界へと形を変えていく。激変する自動車業界の影響がどこまで波及していくのか、要注目だ。その一方で、CASEの浸透後もしばらくは大きく変わらない構図がある。業界のメインプレイヤーだ。

先進国を中心に自動車の販売台数は減少し、それを補う移動のサービス化に向けた自動運転開発や新サービスなどに新規参入する企業が相次いでいるが、その基礎となる車両を大量生産できるのは自動車メーカーだ。

自動車の構造が変わり、製造するモノの中身や方法は変わっていくものと思われるが、自動車に最も求められる安全性や耐久性といった基準は不変であり、モノづくりへの高い技術と経験を有する従来型の自動車製造業の強みは決して消えることなく、今しばらくメインプレイヤーであり続けることだろう。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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