自動運転実現へ、企業単独では難しい10分野と国の取組方針まとめ

地図、通信インフラ、認識技術、セキュリティ、人材…





経済産業省と国土交通省が2015年に設置した自動走行ビジネス検討会は2019年6月、「自動走行の実現に向けた取組報告と方針」の報告書概要を発表した。







この中で、自動運転の実現・実用化を図るうえで日本が競争力を獲得していくにあたり、企業が単独で開発・実施するには、リソース的、技術的に厳しい10分野を重要な協調領域として特定し、実現すべき姿や取り組み方針などがまとめられている。

以下、この10分野それぞれの概要を紹介し、どのような方針のもと実現を進めていくのかまとめてみた(認識技術・判断技術は便宜上1つにまとめている)

■地図

自車位置推定、認識性能を高めるため、高精度地図の市場化時期に即した迅速な整備を目指すこととし、2019年度中に特定地域での仕様検証・評価を進める。

また、ダイナミックマップに関し、プローブデータの活用方法や仕様、ダイナミックマップセンター機能の在り方などについて、2020年度まで検討する。2021年までに整備地域の拡大方針を決定し、加えて国際展開や自動図化などによるコスト低減を推進していくこととしている。

地図分野ではこれまでに、自動車メーカーや位置情報事業者らが高精度三次元地図データの生成・維持・提供を行うダイナミックマップ基盤株式会社DMP社を2016年に設立したほか、2017年度からは大規模実証に着手し、2018年度中に高速道路全道路のデータ整備、2019年度中に東京臨海部など一般道路における特定地域のデータ整備を進めているところだ。

【参考】ダイナミックマップの開発状況については「自動運転向けの地図、世界と日本の開発企業まとめ ダイナミックマップの業界動向」も参照。

■通信インフラ

高度な自動走行を早期に実現するために、自律した車両の技術だけでなく、通信インフラ技術と連携して安全性向上を目指すこととしており、路車間、車車間といったユースケースを産業界において決定し、無線通信技術のDSRCなどITS系やセルラー系に関する議論に適切にインプットしていくため、通信量の見込みや通信頻度、どのような情報を扱うのかなど、自動車OEM各社が協調して国際的な議論も踏まえて検討することが必要としている。

今後は、ITS専用周波数に加え、次世代移動通信システム「5G」などの通信技術の活用も視野に入れ、一般道路を中心とする路車間通信に関して、対象インフラや対象地域などを決めていくことが必要としている。

【参考】通信技術については「自動運転とデータ通信…V2IやV2V、5Gなどの基礎解説」も参照。

■認識技術・判断技術

認識技術・判断技術に関しては、海外動向を鑑み、最低限満たすべき性能基準とその試験方法を順次確立するとともに、開発効率を向上させるため、データベースの整備や試験設備・評価環境の戦略的協調を目指す。

また、センシング、ドライブレコーダー、運転行動や交通事故データの活用を推進していくほか、大学におけるオープンな研究体制のもと、自動運転レベル3、レベル4に必要な認識技術などの技術的要件について、2020年度末を目処に見極めていく方針だ。

データの活用に当たっては、基盤となるデータの収集が課題であり、各社における開発・評価を実施するためのデータ収集、シナリオ抽出やシミュレーション技術の研究開発を協調して実施することが重要としている。

一方、認識・判断技術を向上させるためには、技術を応用可能な他業界との協調をはじめ、あらゆる走行環境で試験可能な設備が必要とし、国際的に開かれた自動運転技術の評価拠点を整備することで、産学官連携による自動運転技術の向上や協調領域の課題解決を加速し、国際標準活動をリードしていくことも視野に入れているようだ。

■人間工学

開発効率を向上させるため、開発・評価基盤の共通化を目指す。運転者の生理・行動指標、運転者モニタリングシステムの基本構想を2017年度に確立しており、2017~18年度に実施した大規模実証実験の検証を踏まえ、グローバル展開を視野に各種要件等の国際標準化を推進していくこととしている。

自動走行システムとドライバーとのインタラクション(内向きHMI)、及び自動走行システムと周囲の交通参加者とのインタラクション(外向きHMI)の開発に向け、①システムによる人間ドライバーの状態の把握と人間ドライバーによるシステム機能の理解②車両の挙動をいかに他の交通に理解してもらうか――を研究することが必要とし、協調による効率的な取り組みで開発効率を向上させるとともに、グローバル商品としての価値を高めるため、国際標準を見据え研究していくこととしている。

■セーフティ

セーフティ分野では、自動走行システムの正常作動時、異常作動時のリスク発生状況を運転モードの視点から抽出区分し、その区分に適した安全設計に対する開発と評価手法を確立することなどが求められており、安全確保に向け開発効率を向上させるため、開発・評価方法の共通化を目指す車両システムなどの故障時や性能限界時、ミスユース時の評価方法を確立していく。

これまでに、ユースケース・シナリオの策定を行い、センサー目標性能の導出、設計要件の抽出を完了し、2017年度に国際標準化を提案した。2018年度は、当該検証の知見・事例を広く一般で利活用可能なハンドブックにまとめ、2019年度以降活用を推進していく。

■サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティの分野では、安全確保に向けた開発効率を向上させるため、開発・評価方法の共通化を目指す。これまでに、最低限満たすべき水準を設定し、国際標準の提案や業界ガイドラインの策定を2017年度に実施した。2019年度までに評価環境(テストベッド)の実用化するとともに、今後、情報共有体制の強化やサイバーセキュリティフレームワークの検討を進める。

また、市場導入後の運用面において、未知のインシデント・脅威・脆弱性が発生し得るため、その情報を直ちに共有し、業界全体として被害拡散防止、対策レベル向上を図ることが必要とし、日本自動車工業会ににおける「J-Auto-ISAC WG」の設置や、米国の「Auto-ISAC」、欧州で設立検討中の「Auto-ISAC」とのグローバル連携や、国内のICT・金融・電力・交通ISACなど他業界との連携も進め、幅広い情報共有・分析に向けた取り組みを推進している。

【参考】サイバーセキュリティ開発については「「自動運転×セキュリティ」に取り組む日本と世界の企業まとめ」も参照。

■ソフトウェア人材

開発の核となるサイバーセキュリティをはじめ、ソフトウェア人材の不足解消に向け発掘・確保・育成の推進を目指す。これまでに、ソフトウェアのスキル分類・整理や発掘・確保・育成に係る調査を2017年度に実施したほか、2018年度にはスキル標準策定、試験路における自動走行時のアルゴリズム精度を競う大会(自動運転AIチャレンジ)を開催した。今後は人材の必要性や職の魅力を業界協調で発信する取り組みを検討することとしている。

人材発掘に当たっては、トップ人材の確保・育成やマス分野における自動車業界×ITの人材確保・育成システム構築を促し、グローバルな自動車×ITの人材確保・育成を意識しながら自動車ソフトウェア分野の人材を強固にしていく方針だ。海外でのIT人材の育成・確保も視野に入れている。

■社会受容性

自動走行の効用とリスクを示した上で、国民のニーズに即したシステム開発を進め、社会実装に必要な環境の整備を目指すこととし、その実現に向け、自動走行の効用を提示、普及の前提となる責任論を整理し、状況を継続的に発信する方針だ。

具体的には、事故時の被害者救済・責任追及・原因究明に係る自動走行特有の論点の整理をはじめ、自動走行技術のユーザー理解促進に係る取り組みを、ユーザー・事業者・社会基盤の有識者と議論するほか、ワールドカフェやアンケートなどにより、国民の意見や理解状況を確認しつつ、シンポジウムなどによって国民が認識・実施すべきことを広く周知を図っていく。

【参考】社会受容性に関する調査については「自動運転車の社会受容性、2年前より高まる 損害ジャパンが調査」も参照。

■安全性評価

自動走行ビジネス検討会などを通して開発した技術を活用した「安全性評価技術」の構築を目指す。2018年度は、国内の交通環境がわかる暫定的なシナリオを協調して作成し、国際的な議論にも活用した。2019年度以降は、引き続き国際連携の強化を図るとともに、今後発生する事故に関するデータに関する取り扱いを検討し、安全性評価へ活用していく方針だ。

■【まとめ】2020年が大きな節目に 自動運転開発や環境整備は待ったなしの状況

予定通り進めば、個人所有車の自動運転レベル3、移動サービスなど事業用向けの自動運転レベル4は2020年にも実現する見込みで、研究開発と環境整備はもはや待ったなしの状況だ。個別の技術開発とともに実証プロジェクトやルールづくりなどが産官学連携で進められ、国際協調を図りながら進展していく。こうした姿は今後どんどん可視化されていくだろう。

自動運転分野において、2020年は大きな節目の年になる。高度な自動運転の幕開けはすぐ目の前に迫っているのだ。







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