Amazon、無人トラック配送の実現目前!自動運転システムを1,000台分購入、米Plusから

全自動化に向けた新たな一歩



出典:NVIDIAブログ

米EC最大手Amazonがこのほど、自動運転トラックを開発するPlus(旧Plus.ai)と自動運転システムの供給に関し大型契約を交わした。

長距離移動を可能にする自動運転トラックの導入で、Amazonの荷物配送はどのように変わるのか。この記事では、ロジスティクスにおける自動運転技術導入のメリットや課題について解説する。







■Plusの概要とAmazonとの取引内容

Plusは2016年に設立された中国系スタートアップで、中国と米国を股に掛けて自動運転トラックの開発・実用化を進めている。自動運転システム「PlusDrive」は、LiDARやカメラといったハードウェアから物体認識や判断、ローカリゼーションを行うソフトウェアに至るまでを一体化したソリューションで、さまざまなプラットフォームに統合することが可能という。

中国の第一汽車集団(FAW)の協力のもと、2021年からPlusDriveを搭載した「J7L3」の量産を開始する計画を明らかにするなど、すでに実証から実用化の段階への移行を始めている。

2021年の第3四半期にニューヨーク証券取引所にSPAC上場する予定で、上場時の企業価値は33億ドル(約3,600億円)に上るという。

Amazonとの契約は2021年6月までに合意に達しており、Forbesによると、最大1億5,000万ドル(約160億円)で少なくとも1,000台のPlusDriveが提供される見込みのようだ。搭載車種などは明かされていないが、システムにはNVIDIA DRIVE Xavier SoCが用いられている。Plusは、2022年以降は最新のNVIDIA DRIVE Orinを導入する計画も発表しており、さらなる進化に期待が持たれるところだ。

取引に合わせ、Plusの株式をAmazonが最大20%取得する協議も進められているという。

膨大な数の商品を連日世界各地に送り出すAmazonの配送に、自動運転トラックが導入される日が刻々と近付いているようだ。

■Amazonのこれまでの取り組み

自動運転トラックの導入により、Amazonは長距離輸送に伴う人件費を削減できる。また、休憩をはさまず効率的な配車が可能となるため、配送時間の短縮にも期待が持たれるところだ。

ただ、大型の自動運転トラックはあくまで長距離輸送用途であり、ミドルマイルやラストマイルは変わらず人の手が必要となる。ミドルマイルやラストマイルを担う自動運転車両を揃えることで初めて本格的な自動運転配送実現できるのだ。

Amazonはこれまでに、ラストマイルを担う自動走行ロボット「Amazon Scout(アマゾン・スカウト)」を自社開発し、カリフォルニア州やワシントン州などで配送実証を重ねている。

【参考】Amazon Scoutについては「米Amazonの自動運転配達ロボ「Scout」、試験の場を拡大中」も参照。

2020年6月には自動運転開発を手掛ける有力スタートアップの米Zooxの買収を発表した。買収額は12億ドル(約1,300億円)以上と言われている。同社は自動運転タクシーなど移動サービス向けの自動運転車の開発がメインだが、配送向けに技術を転用する可能性も考えられる。

そして今回のPlusとの取引だ。この取引により、Amazonはロジスティクスの大部分において自動化を図る展望が開けた。Plusの自動運転トラックで長距離輸送し、Zooxの自動配送車両が中距離のミドルマイルを担う。最後はScoutがラストマイルを……といった形だ。

■EC・物流分野における自動運転導入のメリット

長距離トラックをはじめとした自動運転モビリティの活用により、配送はどのように変わるのか。自動運転の最大のメリットとして安全性の向上と無人化が挙げられるが、ビジネスの観点からは無人化の恩恵がすこぶる大きい。

モノの配送においては、ファーストマイルからラストマイルに至るまで基本的にドライバーが搭乗する乗り物が担う。積載物が分散するラストマイルに近づけば近づくほど配送物1個あたりのドライバーの負担は大きくなり、必要とされる人件費も増大化するが、昼夜を問わず移動し続ける長距離ドライバーは労務負担が大きく、拘束時間に厳格に上限が設けられるなどドライバー保護の重要性が増している。

物流業界では、過酷な労働環境ゆえかドライバー不足が顕在化している。これに相反するかのようにEC需要は高まりを見せ、宅配需要は右肩上がりを続けようとしている。

日本国内でも以前、アマゾンの商品配送をめぐり宅配大手の佐川が音を上げたことがあった。続くヤマトも運賃交渉や荷受け量の抑制などで苦戦を強いられた。配送料金を可能な限り引き下げたいECサイドの要望を、宅配事業者が吸収しきれなくなっているのだ。

こうした業界が抱える構造的な課題を解決し得るのが自動運転技術だ。自動運転技術によって無人化を図ることができれば、長距離においては拘束時間の影響を受けずに配送することが可能になり、休憩なども不要となるため、配送時間の短縮に期待が持たれる。より大きな労力を必要とするラストマイルも小型のロボットが代替してくれる。

導入が進みイニシャルコストの低減が図られれば、浮いた人件費は配送料金の値下げという形で商品者らに還元され、EC需要をさらに加速させる可能性も高い。

EC業界にとっては、自動運転技術の導入は良いこと尽くめだ。一方、物流業界にとっても、雇用の維持といった側面を除けば業務の効率化を図るまたとないチャンスとなる。

■EC・物流分野における自動運転導入の課題

EC・物流業界においてはメリットが多い自動運転技術だが、そのメリットを本格的に受けられるようになるまでは、今しばらく時間がかかりそうだ。

自動運転トラック、ミドルマイル向けの自動運転配送車、自動走行ロボットそれぞれを実装するまでにまず時間がかかる。今回のPlusとの契約により自動運転トラックが実装されても、それにつながる形でミドルマイル向けの自動運転配送車を配備できなければメリットは限定される。

仮に全ての自動運転車がそろっても課題は山積している。米国では州ごとに自動運転に関する規制が定められているため、州をまたいで走行する長距離トラックに求められる要件と、ミドルマイル向けの自動運転車に求められる要件などがそれぞれ異なる可能性がある。広域展開すればするほど複雑性を増すのだ。

そして、さまざまな自動運転車を活用する上で必要不可欠となる荷物のリレーも大きな課題だ。各車間や配送拠点において荷物の受け渡しを行う際、人手を要する場面がまだまだ多い。自動運転フォークリフトや自動走行棚など、倉庫におけるオートメーション化も進んでいるが、完全無人化までの道のりはまだまだ長い。ここに自動運転トラックなどを連携させる点も踏まえると、ロジスティクスにおける完全無人化には今しばらく時間がかかりそうだ。

■【まとめ】全自動化へのピースを集めるAmazon

ロジスティクス全体における自動運転化にはまだ課題が残っているものの、ロジスティクスの構成要素である長距離トラックに自動運転を導入する意義は大きい。構成要素一つひとつを順次自動化し、一歩一歩前に進むことで全自動化へのゴールが見えてくる。

Zooxがミドルマイルの担い手候補となるかは定かではないものの、着実にAmazonはピースを揃え始めている。全てのピースが揃い、各ピースが一つにまとまったとき、本格的なロジスティクス革命が訪れるのだ。

▼Plus公式サイト
https://plus.ai/

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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