人の指図を全く受けない「自動運転トラック」、米Plusが中国で試験成功

高速道で一般車に混ざり「本当のレベル4」



出典:Plusプレスリリース

自動運転トラックの開発で知られる米スタートアップPlusは2021年8月17日までに、中国の高速道路で、完全ドライバーレスの自動運転トラックの走行実証に成功したことを発表した。

「高度自動運転化」と自動運転レベル4は、特定のエリア・条件下においてシステムが運転の主体となる技術レベルを指す。しかし実際、完全にシステムに任せるということのハードルは高く、現在はセーフティドライバーの同乗やリモートオペレーターによる常時監視の下で実証実験などが行われている。


しかし今回Plusが行った走行実証は、セーフティドライバーが同乗しない状態で行われた。さらには車内にセーフティドライバーが同乗しなかっただけでなく、いざという場面に対応するリモートオペレーターも不在の状態で行ったと発表している。

■YouTube動画で見せつけた安定・安全性

実証が行われたのは、中国最大ともいえる経済中心地の長江デルタ地域を走るWufengshan(五峰山)高速道路だ。

五峰山高速道路は通常交通量が多く、上海にも近いことで、「ビジネスハブ」と呼ばれており、この重要道路をドライバー不在の大型トラックが走り抜けたという事実は極めて大きな意味を持つ。

走行実証の様子はYouTubeで公開されており、一般自動車に混じり、ドライバーレストラックが高速道路をスムーズに走る様子が確認できる。


自動運転トラックは、必要に応じて他車を追い越したり車線変更を行ったりと、見事なハンドルさばきを見せている。1分23秒ほどのビデオは、トラックがパーキングエリアに入り、滑らかに駐車するところで終了する。

Plusの共同創業者でありCOO(最高執行責任者)を務めるショーン・ケリガン氏は、今回の実証結果に「Plusの自動運転技術の安全性や習熟度、そして技術をいかに機能的に発揮できるかという実力を見せることができた」とコメントしている。

■アマゾンが車両1,000台分のシステムを発注

Plusは2016年に設立された中国系スタートアップだ。自動運転トラックの技術開発で知られ、米シリコンバレーに本社を置くほか、中国にも研究開発拠点を設置している。


2021年7月には、米アマゾンが車両1,000台分のシステムを発注したことで話題になった。また、2021年5月には、ニューヨーク市場にSPAC上場する計画を発表している。

このように、Plusが一目置かれる自動運転企業に成長した背景には、これまで積極的に実施してきた数々の自動運転デモと、そこで見せつけてきた実力がある。

同社は2017年からアメリカで、様々な気象条件を設定しながら長距離輸送実証を意欲的に行ってきた。その後の2018年4月、中国・青島で自動運転トラックの実証を開始した。そして今回の実証実験では、「本当のレベル4」での試験走行をやってのけた。

■2022年に特定エリアでのレベル4実用化を予定

レベル4の車両利用で最も注目されているのは自動運転タクシーと言えるが、今回のPlusの実証のように、高速道路経由で倉庫間の輸送を行う長距離トラックの自動運転化も、同じくレベル4の商用例として注目され続けている。

Plusは2022年に特定エリアでの自動運転レベル4の実用化を予定しているが、実際の規模など詳細はまだ公表されていない。ちなみにショーンCOOは「今後、商業化に向け、顧客たちとさらに近しい関係を築いていくことを楽しみにしている」と話している。

▼Plus公式サイト
https://plus.ai/

【参考】関連記事としては「Amazonを虜にする自動運転トラックベンチャー「Plus」とは?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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