
中国EV大手のXPeng(シャオペン)が、運転手のいらない高度な自動運転であるレベル4のロボタクシーの量産に踏み切った。2026年5月18日、広州の工場で量産1号車が完成し、生産ラインから出てきた。ソフトからチップ、車両までを自社で一貫して開発し、ロボタクシーを量産にこぎ着けた中国の自動車メーカーは、これが初めてとなる。
車両のベースになっているのは、市販SUVと共通の車台であるGXプラットフォームだ。運転手なしで走る高度な自動運転に対応できるよう設計されている。頭脳にあたるのは自社製のTuring AIチップ4基で、同社によればAIの計算速度は合計3,000TOPSに達する。1秒間に3,000兆回もの計算をこなせる能力だ。周囲をレーザーで測るセンサーのLiDARも、あらかじめ用意する高精細な地図も使わない。カメラがとらえた映像だけで走る純視覚方式を採る点はテスラと同じ考え方だが、チップから車両まですべてを自前でそろえる徹底ぶりはテスラ以上とも言える。
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■中国メーカー初、レベル4ロボタクシーを全部自前で量産へ
XPengが、運転手なしで走れるレベル4のロボタクシーの量産に踏み切った。2026年5月18日、広州の工場で量産1号車が生産ラインから出てきた。自動運転タクシーをめぐる開発競争のなかで、ソフトからチップ、車両までをすべて自社で開発し、量産にこぎ着けた中国の自動車メーカーは、これが初めてである。
今回の車両は、市販SUVと同じ車台をベースに、運転手なしで走れるレベル4の自動運転に対応できるよう設計された。テスト用に手作りした試作車ではなく、市販車と同じ生産ラインに乗る組み立て済みの量産車だという点が新しい。XPengは2026年1月に広州でレベル4車両の公道テスト許可を取得しており、今回の量産はその延長線上にある。
もっとも、ロボタクシー市場の先頭を走るのはGoogle系のWaymo(ウェイモ)であり、XPengは後発である。一部の海外メディアは今回の量産を先行勢から数年遅れと位置づける。それでも、中国メーカーが自前で量産フェーズに入った事実は、自動運転タクシー市場の競争構図を確実に動かす。
試作ではなく量産ラインに乗せたという点が重い。チップとAIと車両を一体で囲い込み、すべてを自前でそろえる手法は、ロボタクシーの量産コストを左右する。中国勢が量産フェーズに入った意味は大きいと言える。
【参考】関連記事としては「テスラのFSDがついに中国進出へ 中国でも自動運転の覇者になるのか」も参照。
■自社製チップ4基で3,000TOPS、LiDARなしの純カメラ視覚方式
量産ロボタクシーの心臓部は、XPengが自社開発したTuring AIチップ4基である。同社によれば、4基合わせてのAIの計算速度は3,000TOPSに達する。ロボタクシーは路上の状況を、外部のクラウドに頼らず車に積んだコンピューターで瞬時に判断する必要がある。そのため、これだけ高い計算能力が求められる。
特徴的なのは、レーザーで周囲を測るセンサーのLiDARも、あらかじめ用意する高精細な地図も使わない点だ。カメラがとらえた映像から運転操作までを一気に判断するAI、VLA 2.0が、その役割を一手に担う。途中で言葉に置き換えるような手順を省くことで、XPengはシステムの反応の遅れを80ミリ秒未満に抑えたとしている。なお、これらの性能値はいずれも同社の発表に基づくもので、第三者による独立した検証ではない。
このロボタクシーは、市販されるGX SUVと中心となる部品を共有する。Turingチップ4基、VLA 2.0、ハンドルの操作を機械ではなく電気信号で伝えるBoschの仕組み、安全のための備えを何重にも持たせた設計まで、土台は市販車と同じだ。違いは車内にある。ロボタクシー版は外から見えにくくするガラスや後席の映像画面など、乗客向けの仕様に作り替えられている。
【参考】関連記事としては「自動運転タクシー(ロボタクシー)とは?日本やアメリカ・中国の状況は?」も参照。
■チップから車両まで、テスラを超える全部自前の体制
XPengの強みは、開発範囲の広さにある。運転を支えるソフトから、その頭脳となるチップ、さらに車両の組み立てまで、すべてを自社で手がけている。部品やソフトを外部の供給元に頼る競合とは対照的だ。
カメラの映像だけで走る方式と、映像から運転操作までを一気に判断するAIという発想は、運転支援ソフトFSDで知られるテスラと共通する。テスラもLiDARを使らず、AIだけで運転判断を完結させる方向を追ってきた。だが、テスラがチップの設計まで自前で握るのに対し、XPengは同じ考え方をなぞりつつ、チップもAIも製造も中国国内で一通りそろえた。テスラ型の中国版でありながら、自前で固める徹底ぶりはむしろテスラ以上とも言える。
テスラは2025年6月に米オースティンでロボタクシーサービスを始め、当初は安全監視員を乗せていた。2026年1月からは監視員なしの車両を組み込み始め、専用車両Cybercabの生産にも入っている。先行する米国勢を追う形で、XPengは全部自前という独自の武器で自動運転タクシー市場に切り込む。
【参考】関連記事としては「謎の中国企業「テスラより先」にロボタクシー量産か」も参照。
■フォルクスワーゲンも採用、Turingチップが外部にも広がる
XPengが全部を自前でそろえる狙いは、自社で囲い込むだけでは終わらない。同社のTuringチップとVLA 2.0は、初の外部の顧客としてフォルクスワーゲンに採用された。VW(フォルクスワーゲン)は中国市場向けの新型EVにこれらを積む。欧米の大手自動車メーカーが、中国で開発された自動運転の中核技術一式を採用するのは初めてのことだ。
Turingチップは2025年7月から9月にかけて量産に入り、すでに出荷数は20万個を超えた。XPengは2026年に出荷が約100万個に達すると見込む。自社の車両に積むだけでなく外部にも供給できる規模が整いつつあり、XPengは単なる自動車メーカーから、自動運転の頭脳を他社に売る存在へと立ち位置を広げようとしている。
「中国が量産」という事実に「VWも採用」という事実が重なる意味は大きい。チップとAIを外部に売れるということは、自動運転タクシー市場の土台となる技術を中国勢が握りうるということでもある。自前で完結させ、さらに外へ売る。この構図は、自前にこだわる日本メーカーにとっても無視できない動きだろう。
【参考】関連記事としては「中国 自動運転の「独自ルール」策定へ 日本の国際規格と衝突か」も参照。
■まとめ:全部自前のレベル4量産が突きつけるもの
XPengは、量産から実際の運行までの工程表も描いている。2026年後半に試験的な運行を始めて技術と事業のかたちを確かめ、2027年初頭には安全監視員を乗せない完全な無人運行を目指す。配車の面では、アリババ系で月間の利用者が約8.7億人にのぼる地図アプリAmap(高德地図)と組み、ロボタクシーを動かす仕組みを外部の開発者にも開放する。利用者はAmapのアプリからXPengのロボタクシーを呼べるようになる。
チップもAIも製造も自前でそろえ、さらに外部への供給と仕組みの開放で技術の土台を広げていく。全部自前のレベル4量産という今回の一手は、一社の話を超えて、中国の自動運転タクシー市場全体の競争力を映し出している。先行するWaymoとの数年の差をどう詰めるかが、これからの焦点になる。自前を武器にした中国勢の量産が、ロボタクシー市場の地図を塗り替えるかどうか。その入り口に、いま立っている。













