
米Google系の自動運転開発も含む幅広い投資先を抱えるソフトバンクグループの時価総額が2026年6月1日、トヨタ自動車を抜いて国内企業の首位に立った。AIへの投資期待が株価を押し上げた結果である。だが孫正義会長が描くAIと自動運転の収益化は、足元ではまだ遠い。
SBG株は前週末比で一時15%高となり、時価総額は一時49兆円を超えた。投資マネーはAIを軸とした新たな経済への転換を先取りしている。一方、SBGが出資する米Nuro(ニューロ)をはじめ自動運転各社の現場では、事故や運行停止、無人化後も残る人手といった課題が積み上がっている。
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■時価総額日本一が映すAI期待の先行
ソフトバンクグループ(SBG)の時価総額が2026年6月1日、トヨタ自動車を上回り国内企業の首位に立った。SBG株は前週末比で一時15%高となり、時価総額は一時49兆円を超えた。投資マネーがAIを軸とした新たな経済への転換を先取りした結果である。
首位浮上を後押ししたのは個別の好材料だ。生成AI「ChatGPT」を開発する米OpenAIの上場見通しや、SBGがフランスでAI向け大規模データセンターを建設すると発表したことが、株価を押し上げた。注目すべきは、この首位が確定した実績ではなく、AIと自動運転がこれから生む利益への期待で支えられている点である。収益化はこれからだ。
時価総額首位はAIへの期待が先行した結果と言える。自動運転を含む投資先の収益化はこれからが本番だ。株価が映す未来図と現場の実態のギャップを、業界として冷静に見極めたい。
【参考】関連記事としては「孫さん、自動運転で「天国と地獄」状態」も参照。
■出資先Nuroは前進、だが商用化は段階の途上
SBGのファンドが出資する米Nuro(ニューロ)は、自動運転タクシー事業で着実に前進している。サンフランシスコでは州車両管理局から無人運転試験ライセンスを得たのに続き、州公益事業委員会から安全運転者同乗型のライセンスを取得した。これにより、セーフティドライバーを乗せた商用化に向けたサービス実証が可能になった。
もっとも、これはまだ途上の段階だ。完全に無人で有料のサービスを展開するには、さらに別のライセンス取得が要る。Nuroがサンフランシスコで米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)、Amazon傘下のZoox(ズークス)に続く無人サービス企業になれるかが次の焦点となる。日本進出も表明しており、ロボタクシー市場での存在感はこれから問われる。
【参考】関連記事としては「SBG孫正義が出資のNuro ついにサンフランシスコでロボタクシー商用化へ」も参照。
■2030年に「今の10倍」 巨大化するロボタクシー市場の裏で
自動運転タクシー市場の拡大予測は力強い。エネルギー調査大手のWood Mackenzie(ウッドマッケンジー)は、2030年までに世界の無人タクシーが10万台を超え、自動運転フリートが現在の約10倍に拡大すると予測する。2026年を業界の転換点と位置づけ、展開にかかる期間やコストも下がり始めているという。
ロボタクシー市場が10倍へ膨らむという数字は、確かに夢がある。しかし市場の巨大さと、1台ごとの収益化は別の話だ。台数が増えるほど、事故や運行停止、車両管理といった現場の負担も比例して膨らむ。期待の数字の裏側で、何が起きているのかを見る必要がある。
【参考】関連記事としては「ロボタクシー市場が巨大化 2030年に「今の10倍」へ」も参照。
■事故・停止・残る人手 収益化を阻む現場の重さ
足元の自動運転は、トラブルと隣り合わせだ。Waymoでは、緊急時に消防士や警察官が立ち往生した車両を手動で動かす事案が、TechCrunchの調査で少なくとも6件確認されている。自治体側からは、公共安全の担当者が事実上のロードサービスになっており持続可能でない、との声も上がる。
運行停止も相次ぐ。Waymoは2026年5月、豪雨時に車両が冠水路へ進入する不具合への対応で5都市のサービスを停止した。約3,800台をリコールしたが、恒久的な対策のめどは立っていない。最も商用的に進んだフリートでも、悪天候で安定して走れないのが実態である。
無人化してもコストはゼロにならない。テスラは自動運転タクシー専用の洗車場をラスベガスに建設した。Waymoは日常的なメンテナンスを他社に委託し、UberはUber Autonomous Solutionsという管理サービスを始めた。ドライバーを無人化しても、洗車やメンテといった日常管理に人手が残る。運用コストは依然として重い。
■時価総額日本一でも、AI×自動運転の収益化はまだ遠い
時価総額日本一という看板は、孫会長が描く未来への期待の大きさを映している。ロボタクシー市場が2030年に約10倍へ向かう方向性も、おそらく間違っていない。だが現場では事故と停止が続き、無人化しても人手とコストが残る。期待と実態の距離はなお大きい。
AIと自動運転の収益化はまだ遠い。その距離を直視したうえで、市場の拡大と現場の地道な改善を両輪で進められるか。孫正義の「天国と地獄」が共存する時間は、もうしばらく続く。













