中国の自動配送ロボが暴走!工事現場にダイブ、冠水も無視

前進あるのみ!・・・な動画が話題に



出典:YouTube

百度(Baidu)の自動運転タクシーが工事中の穴に落ちる事故を起こしたことは記憶に新しいところだが、そもそも中国の自動運転モビリティは恐れ知らずなのかもしれない。

あるSNS投稿では、同国製の中速中型以上の自動配送ロボットが「やんちゃ」に公道を走行する動画が紹介されている。良く言えばアグレッシブだが、なかなか恐れ知らずの走りっぷりを披露している。


車道を走行する中型以上の自動配送ロボットで世界をリードする中国。その実情に迫る。

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■話題のSNS動画の概要

8件の自動配送ロボットのやんちゃぶりを収録

見てもらいたいのは、2025年8月にXに投稿されたばかりの動画だ。わずか18秒の動画に、8件の自動配送ロボットの様子が収められている。車両は、中型・中速モデルから一般乗用車サイズまでさまざまだ。大きいものは自動運転車と同等だが、運転席などを備えず、人間の乗車を前提としていないため「ロボット」として取り扱われる。

投稿者は「These self-driving delivery vans in China are hilarious(中国の自動運転配送バンは面白い)」としている。

すべての車両・走行エリアが中国かは不明だが、1台目は、右車線で工事が行われているところ、ロボットがカラーコーンの隙間からわざわざ工事中の車線に突っ込み、段差が30センチ以上ありそうな低い面に落ちて停車した様子が収められている。

その先で右折するためか、あるいは端っこの走行車線に早く戻りたかったのかは不明だが、少しばかり先走ってしまったようだ。


2台目は、水が溜まった工事中の穴に頭を突っ込んでいる様子が収められている。もともと車道上だったのか、路外に逸脱してしまったのかは不明だ。側面にJDLの文字が見られるため、京東物流のロボットと思われる。

3台目は、Neolixのロボットが車止めのような防護柵を押し出して無理やり進路を作ろうとしている様子が映し出されている。前進か後進かはわからないが、明らかに柵にぶつかっているにもかかわらず強気の運転を見せている。

4台目は、でこぼこで起伏の大きい道路を、まるでオフロード車のようにお構いなしで突き抜けていくロボットの様子が収められている。ロボットは大きくバウンドしたものの走行に支障はなさそうだが、中の荷物が気になるところだ。

5台目は、右車線にトラックが並走しているにもかかわらず果敢に進路変更しようとするロボットの様子が収められている。接触寸前で停止したようだ。

6台目は、冠水した道路に速度を落とすことなく突進したあげく、水の抵抗で停車するロボットの様子が収められている。その後大丈夫だったのだろうか。


7台目も冠水した車道上を水しぶきを上げながら走行するロボットの様子が収められている。最後の8台目は、アスファルト敷設作業中と思われる道路工事現場にロボットが突っ込んでくる様子が収められている。作業員もギリギリまで気付かず、驚いている様子がリアルだ。

段差や冠水に果敢に突っ込んでいくさまは、運転経験の浅いやんちゃなドライバーが「このくらいなら大丈夫だべ!!」……と猛進する姿と妙にダブる。恐いもの知らずの運転だ。

自動運転は起伏や段差、水たまりに対応できるか?

真面目に論じると、これらのロボットに搭載された自動運転システムは、イレギュラーな状況に対応できるよう設計されていないように感じる。多くは事前にマッピングした地図データをもとに自律走行を実現しているものと推測されるが、工事中や冠水などイレギュラーな状況を把握できておらず、こうした事象に対応できるよう設計されていないのではないだろうか。

柵を押し込む3台目と並走車両に気付かない5台目は明らかに自動運転システムに不備があり、ただちに改善しなければ重大事故を引き起こしかねないエラーと言えるが、走行経路上の段差は、事前にしっかりチェックしておかないと把握しきれない可能性がある。

数十センチクラスの段差は別だが、ちょっとした段差や起伏は車載カメラやLiDARでは見逃しやすく、検知したとしても許容範囲に設定されているのかもしれない。

冠水に関しては、事前にどのように設計されているか気になるところだ。動画で紹介されたシステムは、おそらく水たまりくらいの判定で気にすることなく走行するよう設計されているのではないだろうか。端から冠水を考慮していないのだ。

水たまりは、自動運転システムにとって実は非常に厄介な存在かもしれない。水たまりそのものを認識できても、その深さを瞬時に判定できないためだ。事前にマッピングしたデータをもとに推測することはできるが、知らない間に陥没して水が溜まっている可能性もぬぐえない。これは、人間のドライバーでも同様だ。

冠水している場合も、薄く水が張っている程度で走行可能なこともあるが、進行したところ途中から深くなって……というケースも少なくない。あらかじめ判断基準をセッティングしておかなければ、やんちゃな走行で周囲に迷惑をかける可能性が高まるだろう。

今回の動画で取り上げられた開発企業や走行時期などは一部を除き不明のため、これが中国の現時点における自動運転水準というわけではないだろう。しかし、こうした事案が実際に起こったということも紛れもない事実だ。

各企業はその後しっかりと改善を図ることができたのか、気になるところだ。

公道走行するロボット数が激増中

もう一点、こうした動画が多数出始めた……ということは、それだけ開発企業が増加し、稼働するフリート台数も増加している証左ではないだろうか。

主に歩道を走行する小型の自動配送ロボットも実用化されているが、中国では車道を走行する中型・大型ロボットの実用化も進んでおり、この分野で世界を大きくリードしている。

中型タイプで先行するNeolixは、6立米の空間に最大1トン積載可能なモデル「X6」を実用化するなど、車両の大型化を図っている。12立米の積載能力を誇るX12もあるようだ。

すでに中国内250以上の都市で公道使用権を取得し、世界13カ国100都市で計5,000台以上の自動配送ロボットを納入しているという。

2025年に資金調達C+ラウンドで10 億人民元(約200億円)の C+ 資金調達ラウンドを完了し、年内に1万台以上のレベル4車両を納入・管理する予定という。

【参考】Neolixの取り組みについては「京セラ、自動運転宅配ロボに「中国製」使用か 車体写真が酷似」も参照。

EC・物流系企業も自動配送ロボットの開発・実用化に力を入れており、アリババや京東集団(JD.com)、美団などがそれぞれオリジナル車両・ロボットを発表している。

スタートアップのZELOS(九識智能)も美団や百度の投資部門などから出資を受け、中型モデルの開発・実証を進めている。

自動運転タクシーで活躍するWeRideも、2025年に運転席を備えない自動運転配送ロボット「Robovan W5」を発表した。最大積載量1トンを誇る直方体ボディが特徴で、トラックの荷台部分だけが走行しているようなイメージだ。

日本でも現在中型・中速モデル実用化に向けた規格化などが進められており、今後、世界的に車道を走行する自動配送ロボットが市民権を得ていく流れになりそうだ。

【参考】WeRideの取り組みについては「自動配送車、中国企業が「無人で積載量1トン」実現!WeRideが発表」も参照。

自動配送車、中国企業が「無人で積載量1トン」実現!WeRideが発表

■中国系自動運転車の動画

情報規制で事故動画は極端に少ない

情報が規制されているため、中国の自動運転サービスが第三者目線で世界に発信される量は米国などに比べ非常に少ない。特に、事故案件などはすぐに当局に対処され、消されてしまう。その意味では、冒頭紹介した動画は非常に貴重と言えそうだ。

ただ、拡散力が強いインパクトの高い案件などは当局の手の及ばないところまで広がり、鎮火しきれないケースもある。今夏重慶市で発生した、自動運転タクシーが工事現場に落下した事故などはその例にあてはまる。

百度(Baidu)の自動運転タクシーが客を乗せて走行中、道路脇の工事現場の大きな穴に落ちてしまったという。詳細は不明だが、工事現場の穴はタクシーがすっぽり落ち込むほどの深さがあり、タクシーが真横の体制で落ち、女性がはしごで救助される動画が拡散されている。

現場には、バリケードや警告標識が設置されていたとされており、なぜ百度の自動運転タクシーがこのようなわかりやすい事故を起こしたのか原因が気になるところだ。

映像を見る限り、工事区間は結構長く、目につくところにカラーコーンなども設置されておらず、車道と工事の穴の境目を区切るものは何もない。可能性としては、警告標識が工事区間のごく一部に限られており、自動運転車はその区間を把握できないため、路肩に停車しようとして落ちた――などが考えられる。

いずれにしろ、こうした動画がネット上に残っているのは非常に珍しい。

【参考】Baiduの事故については「中国の自動運転タクシーは、「工事中の穴」に落ちます」も参照。

中国の自動運転タクシーは、「工事中の穴」に落ちます

ロボット同士が会話する動画も

自動配送ロボット関連では、Neolix製の無人移動販売車2台が「口げんか(会話)」する様子が話題になったこともあった。

1台の無人移動販売車が停車して飲み物を販売していたところ、もう1台が後方から近づいて真後ろで停車し、自動音声で「車の前から離れてください」と呼びかけた。すると、販売中の無人移動販売車は「販売中のため、お待ちください」と応じたようだ。

ロボット同士が自動でやり取りしあう様子は珍しく、事故案件でもないため今でもネット上に残っている。

バスと自動運転タクシーの衝突後の動画も発見

米コミュニケーションサイトRedditには、百度の自動運転タクシーがバスと衝突した際の映像がアップされている。これも珍しい動画だ。

バスと自動運転タクシーのどちらに過失があるかは不明で、コメント欄にも「一方的に自動運転タクシーを悪者にすべきではない」とする声が寄せられている。

▼Chinese Apollo Go robotaxi collides with bus
https://www.reddit.com/r/SelfDrivingCars/comments/1gfqnpi/chinese_apollo_go_robotaxi_collides_with_bus/

高度な自動運転技術を収めた動画も続々

事故ばかりを取り上げてきたが、中国の自動運転技術は決して低くない。米Waymoに匹敵すると言っても間違いではない水準だ。

百度の自動運転タクシーを快適に楽しむ様子もアップされている。乗車から降車までの様子が収められており、交通量の多い市街地や渋滞区間、高速道路などを問題なく安全に走行する様子が見て取れる。

動画の11分過ぎには、左側から車線変更してきた車両とニアミスする場面があるが、自動運転タクシーは即座にクラクションを鳴らし減速する様子も収められている。

ひとたび事故が発生するとその技術やサービス全般が問題視されがちだが、基本的な自律走行性能は高い水準にあるのだ。

Xでは、「Fully autonomous cargo trucks are becoming normal. This is the future. This is China.(完全自動運転貨物トラックが当たり前になりつつあります。これが未来です。ここは中国です)」といった投稿が見つかった。

右側の車線を自動運転トラックが走行している様子を収めた動画だが、運転席を備えたトラクター部分がなく、トレーラー部分、荷台部分のみが走行しているのだ。

こうした乗用車サイズ以上の配送ロボットの実証・実用化は、米国よりも中国が先行している。実際に遭遇したら、おそらく二度見、三度見してしまうほどのインパクトだ。

中国系動画はTikTokが多い?

中国の自動運転動画は、XやYouTubeよりもTikTokの方が多くアップされているのかもしれない。

・中国ではすべてが自動化されているようです
https://www.tiktok.com/@dailyexpressmalaysia/video/7473911736337222919?q=CHINA%E3%80%80Autonomous&t=1756494507404

美団の黄色い自動配送ロボットが市街地を走行する様子がいろいろと収められている。中型タイプだが、見る限り最高速度は時速40キロ程度出しているように感じる。

・人間の目が抜けないかもしれないものを、私のAIドライバーはすぐに見ることができます。私のRT 6が通りの真ん中で2匹の野良犬をスムーズにかわすのを見てください。
https://www.tiktok.com/@baiduapollo/video/7491218532601023762

百度公式による投稿で、自動運転タクシーが道路上の野良犬をしっかり検知し、右に操舵して避ける様子が収められている。

・中国生活:パート6 🇨🇳深圳で初めて自動清掃車を見ましたが、信じられませんでした!ここの技術は別次元です
https://www.tiktok.com/@that_tumi/video/7482836699278560519?q=CHINA%E3%80%80Autonomous&t=1756494507404

変わり種としては、歩道を清掃中の自動清掃ロボットを収めた動画もアップされていた。屋内ではなく、屋外で活躍するこうしたロボットが実用化されている点もポイントだ。

■【まとめ】やんちゃ感も否定できないが・・・

米国系に比べ第三者情報の露出が極端に少ない中国系自動運転だが、その技術水準は決して低いものではない。自動運転タクシーや配送ロボットなどの稼働台数が激増している点と、開発企業が多く技術水準に幅があるために事故もそれなりに発生し、そして情報規制されているがゆえにひとたび事故がクローズアップされると、その安全性を必要以上に疑問視されてしまうのだ。

自動配送ロボットのやんちゃぶりは正直危険性を感じるが、もしこれが日常茶飯事レベルで発生しているなら、情報を規制しきれず社会問題化しているはずだ。実際は大半が安全に走行しており、米国と世界最先端を争っているのだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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