続々日本上陸!中国の自動運転ロボットは「脅威」なのか

代理店契約や日本法人設立が増加中



出典:Syrius Robotics公式サイト

公道における自動運転技術の実装が徐々に進み始めているが、工場内や店舗内などで活躍する自律走行可能なロボットはすでに市民権を得たようだ。

工場や倉庫では、従来のライントレース型に代わりSLAM型の搬送ロボットが主流となっている。飲食店では、コロナ禍を契機に配膳ロボットの導入が大きく加速した。労働力不足やDX化などを背景に、こうした動きはまだまだ続きそうだ。


一方、各所で導入されているロボットに目を向けると、想像以上に中国企業が活躍していることが分かる。配膳ロボットでは、国内シェアの大半を中国製が占めている状況だ。

この記事では、販売代理店や日本法人を通じて国内展開している中国企業・ロボットを紹介していく。

■KEENON Robotics
導入実績豊富、アイリスロボティクスとの協業も

KEENON Roboticsは2010年設立のスタートアップ。独自開発した高性能SLAMを活用した配膳ロボットや消毒ロボット、ホテルロボットなどを展開しており、世界600を超える都市で3万台以上が稼働しているという。

配膳ロボットは「T8」「T5」「T1」「T6」「T2」などラインアップが豊富だ。T1は「PEANUT」の名称で日本でも普及している。


T8は3つの高性能ビジョンで204度の視野角を落ち、高さ5センチの障害物も検知する。料理のピックアップ時のアナウンス・通知も、音声やライト、画面など複数を使用し、「山を越えてようやくここまできました」など愛嬌のある音声パッケージも豊富に用意されているようだ。

T8の本体寸法は384×468×1123ミリ、本体重量38キロ、最大積載量20キロ、走行速度は0.8〜1.2メートル毎秒。バッテリー駆動時間は10~15時間(ラベル)、8~10時間(レーザー)となっている。

導入実績も豊富で、「焼肉の和民」や「天下一品」「幸楽苑」といったチェーン店でも採用されている。ソフトバンクビジョンファンド2(SVF2)から投資を受けており、ソフトバンクロボティクスとアイリスオーヤマの合弁アイリスロボティクスが「Keenbot(キーンボット) アイリスエディション」の国内販売を行うなど、新たな展開を見せている。

【参考】アイリスロボティクスについては「清掃・配膳の自律走行サービスロボットで勝負!アイリスロボティクスが設立」も参照。


日本システムプロジェクトやRobot Japan、KOBOT、ははごころなど、販売代理店契約などを結ぶ企業も非常に多い。

▼KEENON Robotics公式サイト
https://www.keenonrobot.com/EN/About.html

■Pudu Robotics
すかいらーくグループが3,000台導入計画

Pudu Roboticsは2016年設立のスタートアップ。深センに本社を構え、サービスロボットの設計、R&D、生産、販売に特化したグローバル展開を推し進めている。

モーションコントロールや複数ロボットのディスパッチ、障害物の検出・回避、NVH、自動化されたシミュレーションテストなどのコア技術において数百件以上の特許を取得しているという。配膳ロボットやビル内配送ロボット、消毒ロボット、案内ロボットなどさまざまな自律走行型ロボットを開発している。

2017年に初号機となる配膳ロボット「PuduBot」を発売したのを皮切りに、2019年発売のネコ型配膳ロボット「BellaBot」が話題となり、導入する動きが一気に加速した印象だ。「KettyBot」や「PuduBot 2」などラインアップは徐々に拡充されている。

BellaBotはレーザーSLAMとビジュアルSLAMのデュアルSLAMをサポートし、無指向性3D障害物回避機能で安全な自律走行を実現している。猫モチーフの機体に合わせディスプレイにはさまざまな表情を映し出すことができ、AI音声によって客と楽しい会話を行うことも可能にしている。

本体寸法は565×537×1290ミリ、本体重量55キロ、最大積載量40 キロ、走行速度は0.5~1.2 メートル毎秒。バッテリー駆動時間は12~24時間となっている。

日本での導入実績も多い。特にすかいらーくグループが力を入れており、ガストやバーミヤン、しゃぶ葉など2022年末までに計約3,000台を配備する計画としている。

2021年には、パナソニック産機システムズとパートナーシップを結んでいる。両社の強みを生かし、日本のマーケットにおいてロボットの活用と普及に取り組んでいく方針としている。このほか、SGSTやHCIなど代理店契約を交わした企業も多いようだ。

▼Pudu Robotics公式サイト
https://www.pudurobotics.com/

【参考】Pudu Roboticsについては「自動運転の実用化、道路よりも「レストラン」が先!?」も参照。

■ORION STAR Robotics
「Lucki」導入店が日本でも急増

ORION STAR Roboticsは2016年設立のスタートアップ。最新の配膳ロボット「Lucki PRO」は、LiDARによるSLAMと視覚SLAMによるデュアルSLAMによって高精度な自律走行を可能にしている。LiDARは視野角240度で、小さな障害物も検知し回避しながら走行できる。トーションバー式サスペンションを採用し、凹凸路面においても高度な免震機能を発揮するという。

機能も多彩で、14.1インチディスプレイに魅力的な料理写真を載せて紹介したり、多彩な動画を配信したりすることもできる。通りすがりの人へ自ら声を掛けて対話もでき、エントランスから席への案内を行うこともできる。

Orionstarスケジューラーにより複数台を同時に利用することも可能で、それぞれのロボットが各位置を把握し、最短ルートで優先順位に従って自律移動することもできる。

拡張性も高く、モジュール設計で豊富なインターフェースを揃えているほか、OSは二次開発をサポートしており、SDKには数百のAPIインターフェースが含まれているという。

充電1回で最大16時間使用可能。本体寸法は525×550×1375ミリ、本体重量47キロ、最大積載量60キロ、走行速度は0.5〜1.2メートル毎秒。

Luckiは、日本では千葉県の「江戸前すし百萬石幸町店」や福岡空港内のレストラン「SORAGAMIAIR」、愛媛県内の居酒屋「じょうもん」、東京都内の高齢者住宅「ココファン新小岩」など、導入例が急増しているようだ。

▼ORION STAR Robotics公式サイト
https://en.orionstar.com/

【参考】ORION STAR Roboticsについては「1日600皿配膳も可!中国の自動運転AIロボが日本上陸」も参照。

■Beijing Yunji Technology
NECネッツエスアイが提携、国内展開を推進

Beijing Yunji Technologyは2014年設立のスタートアップ。ロボットの動作やIoT制御の分野で400以上の発明特許を所有しているといい、これまでに配送ロボット「RUN」やインタラクティブディスプレイロボット「SAIL」、インテリジェントシャーシ「Water」、インテリジェント小売システム「Aladdin」などを製品化している。

Huaweiやインテルなどと戦略的パートナーシップを結んでいる。日本ではNECネッツエスアイが独占販売権を獲得して同社製品を取り扱っており、これまでに自律走行型の配送(配膳)ロボット「YUNJI DELI」や案内ロボット「YUNJI SAIL」、型配送ロボット「YUNJI GOGO」などの実証を行っている。

配膳ロボット「YUNJI DELI」はデュアル3DカメラやLiDARなどのセンサーによって空間や障害物を認識し、自律走行を行う。本体寸法は710×490×1180ミリ、本体重量80キロ、最大積載量50キロ、走行速度は0.1〜1.0メートル毎秒。連続稼働時間は最大10時間となっている。

ステーキ宮が実施したロボットによる配膳・下膳業務の実証やHANEDA INNOVATION CITYにおける実証などに活用されているほか、鶴雅リゾートが同製品を納入している。

【参考】Beijing Yunji Technologyについては「日本に中国から上陸!自動運転配送ロボ「YUNJI DELI」とは?」も参照。

■Linming
エイム社が日本向けにカスタマイズ

詳細は不明だが、ホテルサービス支援事業などを手掛けるエイム・テクノロジーズが、中国Linming(上海立名智能科技)が開発したAI配膳ロボットを日本向けにカスタマイズして国内展開を図っている。

配膳ロボット「AIM ROBOT SAKURA」は、高度な2次元LIDARによる高効率・高精度のポジショニングや障害物回避といった基本性能に加え、日本の環境に合わせたジャパンクオリティのチューニングを施しているという。

本体寸法は720×580×1200ミリ、本体重量50キロ、最大積載量50キロ、走行速度は0.1〜1.5メートル毎秒。連続稼働時間は最大12時間となっている。

■Suzhou Pangolin Robot
2017年に日本法人設立

Suzhou Pangolin Robotは2006年設立のロボットメーカーで、2017年に日本法人パンゴリン・ロボット・ジャパンを立ち上げ、日本市場への進出を図っている。

ケータリング・配膳ロボット「Wenda Delivery Robot」は、本体寸法570×465×1280ミリ、本体重量45キロ、最大積載量50キロ、走行速度は0.1〜1.2メートル毎秒。連続稼働時間は最大10時間となっている。

▼Suzhou Pangolin Robot公式サイト
https://www.csjbot.com/

■Standard Robots
国内導入企業45社
出典:Standard Robots公式サイト

Standard Robotsは2016年に深センで設立されたスタートアップで、自動搬送ロボットやピッキングシステム、ムービングシステム、搬送プラットフォームなど、物流と倉庫の自動搬送を推進する機器の開発を手掛けている。

高性能LiDARによる高速マッピングで一度に最大25万平米のマッピングが可能という。アルゴリズムのみで停止誤差± 5ミリを実現し、さらにQRコードによる二次矯正によって誤差±2ミリを実現する。

自動搬送ロボット関連では、小回りが利く小型の「Oasis300C」や可搬重量600キロの「Oasis600c_SRL」、可搬重量1.2トン、牽引1.5トンを可能にする「Oasis1200D」などがラインアップされている。

同社製品はFoxconnやDJI、HUAWEI、TOYOTA、OPPO、HONDA(広州)などで採用されているという。日本ではテクトレが総代理店を務めており、2022年12月時点で国内における導入企業は45社を数える。

▼Standard Robots公式サイト
https://en.standard-robots.com/

■Syrius Robotics
2019年に日本法人設立
出典:Syrius Robotics公式サイト

Syrius Roboticsは、米グーグルでAR(拡張現実)プロジェクト「Project Tango」に携わっていた蒋超氏が2018年に設立したスタートアップ。自動搬送ロボットの開発をメインに据えており、2019年には日本法人シリウスジャパンも立ち上げている。

自律走行型ピッキング補助ロボット「FlexSwift」や「FlexComet」、「FlexPorter」などを製品化しており、関通やSTOCKCREWなどが導入しているという。

▼Syrius Robotics公式サイト
https://syriusrobotics.co.jp/

■Geek+
大和ハウス工業やアルペンなどが導入

Geek+は2015年設立の新興企業で、物流向けロボットソリューションの開発を手掛けている。世界40カ国超の国で導入されており、2022年には3億ドル超の注文があったという。顧客には、NikeやWalMart、Toyota、Siemensなど大手がずらりと並ぶ。

日本法人も2017年に設立されており、大和ハウス工業やアルペンをはじめ、大手物流プレイヤーに相次いで導入されているという。

ピッキングロボット「P500R」「P800R」「RS5」やソーティングロボット「S20C」「S20T」「S35C」「S100C」をはじめ、ピッキングロボットが大量のコンテナを備えた大型コンテナ収納ラックをステーションまで運び、出庫商品が入ったコンテナを自動で作業員の手元まで運ぶ「PopPickステーション」などのソリューションを展開している。

▼Geek+公式サイト
https://www.geekplus.com/

■ForwardX Robotics
2021年に日本支社設立

ForwardX Roboticsは2017年に米国で設立後、本拠を北京に移した中国系企業で、日本では2020年にフジテックスが同社製品の取り扱いを開始している。また、2021年には日本支社も設立している。

自動搬送ロボット「Flex AMR」「Max AMR」「Max L AMR」などを製品化しており、中国では伊藤忠ロジスティクスなどが導入しているという。

▼ForwardX Robotics公式サイト
https://www.forwardx.com/

■【まとめ】新たな機能・サービスなどで差別化を

配膳ロボットはターゲットとなる飲食店が国内各地に多数存在するため、人気のロボットは国内代理店も乱立している状況だ。

中国内でも大都市を中心に普及しており、開発プレイヤーは数えきれないほど存在するようだ。グローバル展開を進める動きも加速しており、今後新たに日本上陸を果たすロボットが出てくる可能性が高い。

日本の開発企業としては戦々恐々とした状況が続きそうだが、受け身でいるわけにもいかない。自律走行機能など各ロボットの基本スペックの差異はなくなり始めているため、今後は新たな機能・サービスやUI、UX、導入コストなどが試されていくことになる。

他社とどのように差別化を図り、シェアを広げていくか。各社の開発動向に注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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