2023年「MaaS」市場展望!自動運転タクシーも呼べるように?

実用化に向け「大連合」続々生まれる?



出典:損害保険ジャパン・プレスリリース

交通課題をはじめとしたさまざまな地域課題の解決に向け、各地で導入が進められているMaaS(Mobility as a Service)。民間主導のもの、行政主導のものなどが入り混じり、独自の進化を遂げている感が強い。

現在進行形で発展し続ける日本版MaaSは、2023年にどのような成長を遂げていくのか。MaaSの展望に迫る。







■実用化に向け「大連合」進む?

国内で展開されているMaaSは、大きく2つに大別できる。自治体主導のものと民間主導のものだ。自治体主導のMaaSは地域課題の解決が主軸となり、交通課題をはじめ地域活性化や福祉の向上などに力を入れている。

一方、民間主導のMaaSはビジネス性を重視し、各移動サービスの利用者増に重点を置いているケースが多い。鉄道事業者などが主体となり、沿線エリアの他の交通事業者や観光などと結び付け、移動そのものの付加価値向上を図っている。

こうしたMaaSの普及により、同一エリアで複数のMaaSが展開される例や、MaaS同士が隣接する例なども徐々に増加している。こうした流れは、当然今後も続いていくことになる。

利用者目線では、同一エリアで複数のMaaSをそれぞれ利用するのは効率的ではない。隣接エリアに移動するケースなども同様だ。可能な限り使い慣れたMaaSアプリを広範囲に利用したいはずだ。

参画する各交通事業者も、それぞれのMaaSにデータ提供などを行うより、1つに統一された方が業務上効率が良いのは明らかだ。MaaS主導者サイドとしては、競争を選ぶか、協調を選ぶかを選択しなければならない。

サービスに磨きをかけて競争を選ぶのも一手だが、MaaS本来の主旨を汲んで協調路線を歩む向きの方が現状は強そうだ。

複数の鉄道事業者が同一MaaSで協調する例は増加しており、2022年には関西エリアの鉄道会社7社が協調し、MaaSアプリの共同構築を進める取り組みも発表された。

大都市圏では交通事業者の競合が盛んだが、連合を組みMaaSを一元化することで効率的かつ効果的なサービスを安定して提供することが可能になる。

2023年もこうした流れが続いていく可能性が高そうだ。

【参考】関西圏の鉄道事業者の取り組みについては「国内初は「関西」!鉄道会社7社、MaaSで仲良く手を組んだ」も参照。

トヨタmy route、全国的に展開拡大か

他のMaaSと一線を画すトヨタのMaaSアプリ「my route」。一般的なMaaSは、主導する自治体や交通事業者のサービス提供エリアを対象に提供されており、自治体や自社サービスの範疇を越えてMaaSを展開することは基本的にない。

一方、トヨタはレンタカーやカーシェアで全国ネットワークを有する上、MaaS領域ではプラットフォーマーとしての立ち位置でビジネス展開を進めている。特定のサービス提供エリアに縛られることがなく、全国を対象にサービス展開していくことができるのだ。

my routeは2018年に福岡県で実証を開始し、2019年11月にサービス展開に本格着手した。以後、2020年に神奈川県と宮崎県、熊本県、2021年に富山県と愛知県、2022年に佐賀県、大分県、沖縄県、長崎県と拡大しており、2022年12月末までにサービス提供エリアは10県まで広がっている。対応エリアは順次拡大予定としており、2023年もさらなる拡大が予想される。

MaaSアプリの開発・提供を行うプラットフォーマーは少なくないが、my routeのような特定のサービスで全国展開する例は国内ではほかにない。

2023年中、my routeがどこまでエリアを拡大するのか、また全国展開を目指す新たなプラットフォーマーが出現するか――などに注目だ。

■MaaSアプリから無人タクシー・バス利用可能に?

2023年4月までに、無人自動運転を実現するレベル4の公道走行を解禁する改正道路交通法が施行される。本格的な自動運転時代の到来だ。

国は2025年をめどに無人移動サービスを全国40カ所ほどで実現する目標を掲げており、改正法施行直後に導入に向けた取り組みを本格化させる自治体や企業はもちろん、導入に向けた検討を開始する自治体などもどんどん出てくるものと思われる。

先行勢は、BOLDLYなどが関わる茨城県境町や北海道上士幌町、すでに遠隔監視・制御によるレベル3を実現している福井県永平寺町や沖縄県北谷町、道の駅を拠点としたサービス実証地域、HANEDA INNOVATION CITYのように比較的限られた範囲でサービス提供を行う取り組みなどが考えられる。

各地の取り組みはすでにサービス実証段階に進んでおり、今後は運転手を無人にするための技術高度化やサービス対応などを詰めていくことになる。

このほかにも実証を行っている地域は多く、国のMaaS支援事業採択地域においても、愛知県名古屋市や愛媛県伊予市など自動運転サービスの導入を検討している例は多い。MaaS導入地域などは交通課題に対する意識が高く、それ故自動運転サービスの導入を検討する割合も今後高まっていくことが予想される。

2023年は、将来的なMaaSへの統合を見据えた自動運転実証が大きく前進する可能性が高い。自動運転サービスそのものの実証をはじめ、MaaSアプリを介したサービス提供まで踏み込む取り組みが出てくるのかなど、さまざまな観点から注目だ。

■「MaaSの仕組み」を海外に輸出する例も増える?

国内で独自の進化を遂げる日本版MaaS。今やフィンランドをはじめとした先進地に劣らぬMaaS先進国となりつつある。

日本版MaaSのプラットフォームは多々あるが、その多くは各種移動サービスの統合を図る機能にとどまらず、観光や飲食をはじめとした対象エリアの経済と結び付けている点が特徴だ。日本ではこうしたMaaSアプリがスタンダードなものとなっている。

こうした進化を遂げる国産MaaSを、東南アジアをはじめとした海外に輸出する動きが出てくる可能性もありそうだ。

すでに先進国の多くでMaaSの概念が浸透し、それぞれ独自のMaaS開発が進められているが、未整備の国もまだまだ多い。特に東南アジアでは道路交通に課題を抱えている国も多く、各種モビリティを有効活用した効率的な道路交通の再構築が求められているのではないだろうか。

各国ではライドシェアをはじめとした配車アプリの活用は進んでいるため、MaaSアプリへの抵抗も少ないはずだ。各国政府や自治体の意向次第では、大きなビジネスとなる可能性が考えられる。

一方、日本政府はインフラシステムの海外展開を後押ししている。モビリティ・交通分野においては、鉄道、道路、港湾、航空・宇宙、船舶・海洋開発、自動車技術などが項目化されており、すでに大きな成果を上げているようだ。

2022年6月に改訂されたインフラシステム海外展開戦略2025の追補版では、スマートシティやMaaS、AI(人工知能)オンデマンド交通といった交通ソフトインフラ分野を推進することにも言及している。

国土交通省はこれを受け、交通ソフトインフラ海外展開に向けた官民協議会を設置した。交通の枠にとらわれない幅広い企業間、官民の情報共有や意見交換などを通じて案件形成を促進していく方針だ。

MaaSに関する輸出事例が2023年に創出されるか、要注目だ。

【参考】交通ソフトインフラの輸出については「海外輸出、「原発」から「交通ソフトインフラ」の時代に」も参照。

■商用車業界では「物流MaaS」の構築進む

国は物流版MaaSの創出にも力を入れている。物流業界で慢性化する需要過多・人手不足といった課題解消に向け、MaaSの概念からアプローチしているのだ。

経済産業省は2020年度に「物流分野における新しいモビリティサービス(物流MaaS)勉強会」を立ち上げ、商用車メーカーや荷主・運送事業者、ITソリューション事業者などを交え取り組むべき方向性について議論を進めてきた。

①トラックデータ連携の仕組み確立②見える化・混載による輸配送効率化③電動商用車活用・エネルギーマネジメントに係る検証――を柱に研究や実証を積み重ねており、2022年度も、トラックデータ標準化に向けた実証やIT事業者・保険会社などとの連携による運行品質向上モデルの構築、幹線スキームによる省人化、環境負荷低減、働き方改革の実現――などの取り組みが進められている。

取り組みは2023年度以降も継続されるものと思われる。商用車業界がターゲットとなるため一般には見えにくい分野かもしれないが、MaaSにおけるこうした側面にもしっかり注目していきたい。

【参考】物流MaaSについては「物流MaaS、さらに前進!鍵は「見える化」&「自動荷役」」も参照。

■「MaaSコーディネーター」創出?

新たなモビリティサービスの社会実装を推進する2022年度のスマートモビリティチャレンジは、3つの方向性のもと事業が進められた。

1つ目は、スマートモビリティチャレンジ推進協議会としてMaaSの普及につながるよう各地域内外の関係者のニーズも集めながら最大限効率的に活動を行い、ベースアップ機能の強化を図ることとしている。

2つ目は、地域新MaaS創出推進事業として、これまでの取り組みの軸を生かしつつ、新たなリスクやコストを負担する仕組みの確立や、実証から実装フェーズへと進めるための事業者間の共通認識の醸成、キーパーソンの巻き込みを含む恒常的な体制整備、データ利活用上の受容性・事業体制面での工夫といった課題を定量的・横断的に評価・分析し、克服に向けた知見を示せるよう意欲的に取り組む地域との連携を強化することとしている。

3つ目は、モビリティデータ利活用推進事業として、課題解決へのさまざまなアプローチ(各論)を持続させるためのバックエンドの仕組みとして、地域における人的資源・車両といったアセットをデータも有効活用しながら全体最適的にオペレーションする「MaaSコーディネーター」の創出を目指すこととしている。

なお、これらの取り組みは、「2025年度ごろまでに無人自動運転移動サービスを40カ所以上で実現」という政府目標に沿った自動運転関連の取り組みとも連携しながら推進することとしている。

【参考】スマートモビリティチャレンジについては「経産省、「MaaSコーディネーター」創出へ」も参照。

【参考】地域新MaaS創出推進事業については「自動運転、我が街でも!国のMaaS実証事業、「先進地域」決まる」も参照。

2022年度事業のとりまとめ結果はまだ公表されていないが、既存の課題解決に向けた事業はブラッシュアップする形で2023年度も継続していく可能性が高い。

スマートモビリティ支援対象に選定された地域は、2020年度に50地域、2021年度に26地域、2022年度に17地域と徐々に絞り込まれてきている感はあるが、事業はまだまだ継続されていく見込みだ。

前述した自動運転関連の取り組みも本格化する可能性がある。引き続き各地の取り組みに注目していきたいところだ。

■【まとめ】2023年はさらなるブラッシュアップの年に

MaaSにおける基本的な要素はほぼ確立されており、今後は各種課題の解決に向け具体的にどのようなアプローチを行っていくのか、またビジネス面では事業継続に向け収益性をどのように高めていくのかなどが問われていくことになる。その意味で、2023年はさらなるブラッシュアップを行っていく年となりそうだ。

一方、MaaSはあくまで概念であり、現在のアプリを主体とした取り組みが全てではない。新たな発想をもとに事業を新規展開する動きなども出てくるかもしれない。

2023年にはどのような取り組みが進められていくのか。自動運転サービスの動向とともに引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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