三菱自動車と自動運転(2022年最新版)

日産との連携などに注目



世界の自動車市場で一大グループを形成するルノー・日産・三菱アライアンス。各社がそれぞれの強みを持ちより、技術の共有化を推進している。







アライアンスに2016年に加わった三菱自動車は、同盟内でどのような立ち位置を担い、CASE時代に立ち向かっていくのか。この記事では、CASE分野における三菱自動車の取り組みに迫っていく。

■三菱自動車の戦略
日産と自動運転やコネクテッド領域などで協業深める

2020年7月に発表した2022年度までの中期経営計画「Small but Beautiful」によると、三菱自動車はこれまでの全方位拡大戦略から方針を転換し、競争力強化に向け集中と選択をさらに加速させるとしている。

▼中期経営計画|三菱自動車
https://www.mitsubishi-motors.com/jp/investors/corpmanage/plan.html

強みのあるアセアン地域に経営資源を集中投入するほか、自社開発したPHEV((プラグインハイブリッドカー)やHEV(ハイブリッドカー)といった環境技術と四駆技術の強化、ルノー・日産といったアライアンスパートナー技術を活用した世界最新レベルのクルマを提供し、収益力を高めていく。

2022年度までに環境対応車のラインナップを強化し、それ以降もアセアンでピックアップトラックやSUV、MPVなど新型車を投入していく計画だ。

技術戦略では、次世代ディーゼルとフレームモデル性能の向上、次世代PHEVとHEVを軸とした電動化の推進などによって収益拡大を図っていく。自動運転などの最先端技術においては、アライアンスによる新技術を効果的に活用していく方針だ。

日産とは、自動運転やコネクテッド、EV(電気自動車)の協業深化を図るとともに、パワートレインやプラットフォームの相互補完についても検討を進めていくとしている。

■三菱自動車の自動運転・ADAS技術
ADAS「e-Assist」と「MI-PILOT」
出典:三菱自動車公式サイト

三菱が開発・実装を進めるADAS(先進運転支援システム)「e-Assist」は、衝突被害軽減ブレーキや踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱防止支援機能、2台前のクルマの動きを捉えて事故予防をアシストする前方衝突予測警報などを備えている。

また、アダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープアシスト(LKA)を備え自動車専用道路の同一車線における走行をサポートするレベル2相当のADAS「MI-PILOT(マイパイロット)」も実装が始まっている。

設定した車速を上限に先行車の加減速に合わせて車間距離を保持するACCは、渋滞時には先行車に合わせて停車や再発進することも可能だ。LKAは車線の中央付近を走行するよう、ステアリングをサポートする。

このほか、速度標識を読み取り設定速度を自動で切り替える機能や、ナビゲーションの地図情報をもとにカーブや分岐などで適切な車速に自動調整する機能なども備えている。

■アライアンスの取り組み
リーダーフォロワースキーム導入

ルノー・日産アライアンスに2016年に加わった三菱自動車は、メンバー企業それぞれがプラットフォームやプラント、パワートレイン、バッテリーなど特定分野における強みを生かしてリーダーシップを発揮し、専門知識をメンバー間で共有している。

三菱自動車はC・DセグメントのPHEVの開発リーダーとしてアライアンスをけん引している。自動運転技術は日産がリーダーを担い、コネクテッド技はルノーがAndroidベースのプラットフォーム開発をリードしている。

2025年までにアライアンスモデルの50%近くがこのリーダーフォロワースキームのもと開発・生産される予定としている。

EVとコネクテッド分野に注力

2022年1月に発表した最新のロードマップでは、2030年に向けてEVとコネクテッド技術を注力分野に据え、2026年までに80%以上までプラットフォームとテクノロジーの共有を高めていく方針を打ち出している。

EV関連では、アライアンスは今後5年間で230億ユーロ(約3兆1,000億円)を投資し、プラットフォームの拡張や次世代高性能バッテリーの開発を進めるとともに、2030年までに5つのEV専用共通プラットフォームをベースに35モデルの新EVを市場投入する。

2030年までにグローバルで220GWhのバッテリー生産能力を確保し、共通のバッテリー戦略を強化する。日産は全固体電池の技術開発をリードし、ルノーは一体型の共通電気・電子アーキテクチャーの開発をリードする。

コネクテッド関連では、2026年までに2,500万台の車両をアライアンス・クラウドに接続し、膨大なデータ利用を可能にすることで自動車業界を新しい次元へと導くとしている。

自動運転関連では、日産の「プロパイロット」に代表される知能化技術や運転支援の技術革新を推進し、2026年までにアライアンス全体で45車種に運転支援技術を搭載し、1,000万台以上を販売する見込みという。

プラットフォームの共通化は、ADASや自動運転技術の共有も容易にする。三菱自動車は、独自開発を進めるとともに自動運転領域のリーダーである日産の技術を有効活用していくことになりそうだ。

【参考】アライアンスの取り組みについては「車両をソフトウェア定義!日仏連合の2030年計画、EV以外で語ったこと」も参照。

■CASE関連の取り組み
PHEVが大きな武器に

1964年に電気自動車の研究開発を開始したという三菱自動車。2009年に世界初の量産型EV「i-MiEV」、2013年に世界初のSUVタイプのPHEVとなるアウトランダーをそれぞれ発売するなど、電動化分野では先駆的な取り組みが目立つ。

特にPHEVは2021年度における国内販売台数でトップに輝くなど大きな強みとなっている。外部給電機能により1500ワットの電力を供給することができ、V2H(Vehicle to Home)機器と接続することで家全体に電力供給することもできる。ガソリン満タンの場合、最大約12日間分の電力を確保できるという。

このPHEVを災害時に生かす「DENDOコミュニティサポートプログラム」にも取り組んでおり、これまでに全国113の自治体と災害時協力協定を締結している。

商用EVコネクテッドサービス確立に向けDeNAと検討開始

三菱自動車は2022年3月、ディー・エヌ・エー(DeNA)と物流車両や営業車、自治体公用車、カーシェア・レンタカーといった商用EV分野におけるコネクテッドカーの協業モデルの検討を開始したと発表した。

双方の強みを生かし、自動車メーカーのデータ主権や既存の車両システムを維持しつつ、EVの車両データ管理や各種サービス事業者との連携をクラウド事業者が担う水平分業型の産業構造の構築を目指すという。

出典:DeNAプレスリリース(※クリックorタップすると拡大できます)

従来のコネクテッドカーの通信フォーマットや車両データの規格は各社で異なるが、自動車メーカーによるコネクテッドサービスは自社ブランドの個人オーナー向けが中心となっており、自社内で完結しているため特に問題となることはなかった。

しかし、カーシェアやレンタカー、EVを蓄電池として電力連携させるサービスなどの商用分野では、さまざまな車種やメーカーのEVを束ねるコネクテッドサービスを展開する場合、規格の違いがサービス事業者にとって大きな負担となっている。

商用車向けのコネクテッドサービス普及に向けては車両やクラウド、サービスといった各階層間で分業化するのが合理的と考え、自動車メーカー主導の垂直統合型から異業種連携による水平分業型への新たな産業構造変革に挑戦するとしている。

AIスーツケース開発へ

三菱自動車は2020年2月、アルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本アイ・ビー・エムとともに次世代移動支援技術開発コンソーシアムを設立した。視覚障がい者のアクセシビリティと生活の質向上を目的に、AIを活用した移動やコミュニケーション支援の統合技術ソリューション「AIスーツケース」を開発し、社会実装に向けた実証実験などを進めていく。

出典:三菱自動車プレスリリース(※クリックorタップすると拡大できます)

AIスーツケースは、視覚障がい者が日常的に無理なく携行できるウェアラブルデバイスとナビゲーション・ロボットで、外出時などにスーツケースのように手を添えて携行する。

センサー情報を基に障害物を認識して避ける機能や、位置情報や地図情報をもとに最適ルートを探索する機能、音声や触覚などによる情報提示を交えながら誘導する機能、知人の識別や周囲の人の行動などを認識し、社会的行動やコミュニケーションを支援する機能などを備える。

乗り物ではないが、視覚障がい者の移動や社会生活を支援する一種のモビリティと言える。

■【まとめ】長所を生かしアライアンス全体を最適化

レベル3やレベル4などの自動運転開発に関するトピックから遠ざかってしまった印象が強いが、選択と集中によってPHEVなどの長所を生かしてアライアンス全体の最適化を図っていく戦略は、単独での生き残りが困難になるだろう今後の自動車業界を象徴する動きでもある。

自動運転開発から完全に撤退することはないだろうが、確固たる武器を磨き上げ、業界における存在感を今後どのように発揮・強化していくのか。アライアンスの動向とともに注目していきたい。

【参考】関連記事としては「自動運転、歴史と現状(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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