半導体大手のルネサスエレクトロニクスが、自動運転・ADAS分野向けのAI(人工知能)システムに関し、すでに1,000億円以上の商談を獲得していることが分かった。同社が転職サイトに新たに掲載した求人情報から判明した。
ルネサスエレクトロニクスは自動運転・ADAS分野を成長分野として重要視しており、中でも特にAIは、自動車メーカーや1次サプライヤー(ティア1)のスムーズなAIアプリ開発を支援する最重要技術として捉えている。
AI事業の強化に向け、エンジニア人材の採用にも力を入れ始めているようだ。
■自動運転・ADAS分野に注力するルネサス
具体的には、求人情報では以下のような説明のされ方をしている。
ADAS/自動運転は、ルネサスのフォーカスする成長分野のひとつであり、その中でも特にAIは、OEM/Tier1の注力する最も重要な技術である。ルネサスは、この分野ですでに1,000億円以上の商談を獲得しており、そのお客様のAIアプリケーションのスムーズな開発を支援する高度に最適化されたAIツールは必須な技術である。
自動運転・ADAS分野を「フォーカスする成長分野のひとつ」としているルネサスエレクトロニクス。確かに同社の近年の動向からはそのことがうかがえる。
2019年には、同社が開発する自動運転システム向けの車載SoC(システム・オン・チップ)「R-Car V3H」に関し、自動運転やADAS開発を加速させる「認識用クイックスタートソフトウェア」の提供開始を発表した。
同年、国際的コンソーシアム「Autonomous Vehicle Computing Consortium(AVCC)」にコアメンバーとして参加したことも発表している。AVCCは、2019年10月に発足した完全自動運転車の実現を推進するための企業横断型組織。自動車業界やテクノロジー業界をリードする大手企業が参画している。
【参考】関連記事としては「半導体大手ルネサス、自動運転コンソーシアム「AVCC」に参画」も参照。
2020年12月には中国・吉林省において中国の第一汽車集団有限公司(一汽集団)とともに、インテリジェント運転開発プラットフォームの共同研究所を設立したことを発表した。研究所では車載電子制御システム(ECU)を共同開発している。
【参考】関連記事としては「日の丸ルネサス、自動運転に注力!第一汽車との研究所設立、新チップ発表」も参照。
そして同時期、自動運転向けの「R-Car V3U」を発表した。自動運転システム向けの車載SoC「R-Car」製品としては最高性能であり、1チップで深層学習による車載カメラ画像の物体認知や、レーダーやLiDARのセンサーフュージョン、走行計画の立案から制御指示など自動運転のメインプロセッシングが実現できるものだ。
そして2021年1月にはコネクテッドカー開発において米Microsoftとの協業を発表した。この協業によりMicrosoftのモビリティ業界向けプラットフォーム「Microsoft Connected Vehicle Platform(MCVP)」の開発環境で、車載SoC「R-Car」を搭載した「R-Carスタータキット」が利用できるようになった。
【参考】関連記事としては「半導体大手ルネサス、コネクテッドカー開発支援で米Microsoftと協業」も参照。
■AIエンジニアを募集、予定年収は650万〜900万円
冒頭触れたように、ルネサスエレクトロニクスは現在、自動運転・ADAS分野での事業をさらに強化すべく、AIエンジニアを募集している。以下の募集要項によれば、予定年収は650万〜900万円で、主任クラスから課長クラスでの採用を検討している。
▼【東京】AI システムエンジニア(自動運転分野強化の募集)
https://doda.jp/DodaFront/View/JobSearchDetail/j_jid__3005816303/
応募には必須条件が3つある。1つ目はニューラルネットワーク、特に推論ツールに関する十分な理解があること、2つ目は一定レベルのプログラミングスキル(C. C++. Python)、3つ目はSoCに実装されるAI関連IPの一定の理解があることだ。
日本を代表する半導体メーカーで自動運転分野の仕事をしてみたい人は、ぜひ応募を検討してみてはいかがだろうか。
【参考】関連記事としては「大手企業の求人多数!自動運転&MaaS、気になる求人4選【2022年1月】」も参照。