実績なら日産、ホンダは猛追!自動運転タクシー、「日本初」の称号を得るのは?

2022年以降に公道実証が加速する模様



自動車メーカーによる次世代交通サービス実現に向けた取り組みが加速している。ホンダと日産はそれぞれ自動運転タクシー(自動運転シャトル)の開発に力を入れ、両社とも実証段階に達している。







自動車メーカーによる国内初の自動運転タクシーは、ホンダと日産、どちらが先に実現するのか。この記事では、自動運転タクシーに関する両社の取り組みを解説する。

■ホンダの取り組み
米GM、Cruiseとパートナーシップ 2022年に公道実証へ

ホンダは、自動運転モビリティサービスの領域においては米GM(ゼネラルモーターズ)と同社傘下のCruise(クルーズ)とパートナーシップを結び、開発や社会実装に取り組んでいる。

国内自動運転モビリティサービス事業に向けては、GM「Bolt」をベースに自動運転車両に改造したクルーズの試験車両を活用し、3社による共同開発の一環として国内で技術実証を2021年中にも開始することを2021年1月に発表した。

その後、同年9月に栃木県宇都宮市・芳賀町で技術実証を行うことを発表した。第1段階として、同県内の試験コースで高精度3次元地図作成車両によるマッピングを行い、その後公道実証に移行していく計画だ。

試験コースにおける技術実証はすでに着手しており、年明けにも公道デビューする予定のようだ。車両は試験車両「クルーズAV」を使用し、日本の交通環境や関連法令などに合わせた自動運転技術の開発・検証を進めていくこととしている。

また、将来的には3社が共同開発した自動運転モビリティサービス専用車両「クルーズ・オリジン」を活用した事業展開を目指す方針で、ホンダモビリティソリューションズが事業運営を担う予定だ。

オリジン導入にも注目

ホンダの取り組みは厳密には自動運転タクシーではなく、自動運転モビリティサービス実現に向けたものだが、自家用車ベースの「クルーズAV」であれば自動運転タクシー、「クルーズ・オリジン」であれば自動運転シャトルサービスなどが中心となりそうだ。

特に注目を集めそうなのが「クルーズ・オリジン」だ。2018年にパートナーシップを結んだ3社の最初の成果物で、2020年1月に初公開された。詳細なスペックなどは明かされていないが、ハンドルやアクセル、ブレーキといった手動制御装置を備えない6人乗りの自動運転車となっている。

こうした車両の公道デビューは、本格的な自動運転時代の到来を予感させる。まずは2022年に開始予定の「クルーズAV」による公道実証に注目だ。

【参考】オリジンについては「GM Cruise、ハンドルなしオリジナル自動運転車を発表!」も参照。

スマートシティプロジェクトとの組み合わせも?

ホンダはモビリティサービス事業の本格展開に向け、同事業を担うホンダモビリティソリューションズを2020年2月に設立している。

今のところカーシェアサービス「EveryGo」の展開が主力事業となっているが、ネクストムーブメントに自動運転モビリティ事業を掲げており、現在レベル4自動運転技術の国内導入を推進する技術領域責任者や事業企画を担う人材の募集を行っている。今回の自動運転実証を契機に、自動運転モビリティサービス実現に向けた取り組みを一気に加速していく構えのようだ。

同社は2021年5月、宇都宮市内で予約・配車システムを用いたオンデマンドモビリティサービスの実証実験を開始した。同社は、双方向カーナビゲーションシステムによって蓄積された移動データを活用し、乗り合い型のオンデマンドモビリティサービスの予約・配車システムを開発しており、その有効性を検証するとしている。

こうしたオンデマンドモビリティサービスの配車システムは、当然自動運転にも応用できる。偶然か必然かは定かではないものの、ともに宇都宮市内における取り組みとなっており、将来の自動運転モビリティサービスに利用される可能性は高い。

また、この配車システムの実証は、スマートシティ実現を目指す同市のUスマート推進協議会におけるプロジェクトの一環でもある。同協議会は、構想の中でグリーンスローモビリティの自動運転化などを掲げており、将来、ホンダの自動運転事業がまちぐるみの取り組みとなる可能性も十分考えられそうだ。

■日産の取り組み
2018年にイージーライドのサービス実証開始

次世代交通サービス実現に向けた日産の取り組みの代表格は「Easy Ride(イージーライド)」だ。開発パートナーにDeNA(ディー・エヌ・エー)を迎え、2017年1月から自動運転技術を活用した新しい交通サービスの開発を進めている。

その成果物がイージーライドだ。EVや自動運転、コネクテッド技術など日産が有する先進技術と、インターネットとAIを活用したサービス設計や運営ノウハウをもとに自動運転サービス開発にいち早く取り組んできたDeNAが、それぞれの強みを結集して開発した。

誰もが好きな場所から好きな場所へ自由に移動できる交通サービスとして、「もっと自由な移動を」をコンセプトに掲げている。専用のモバイルアプリで目的地の設定や配車、決済などを簡単に行うことができ、目的や気分に合わせて地元のスポットやおすすめの観光ルートといった行き先を自由に選択できるようにする。また、遠隔管制システムにより、無人運転時でも安心して利用できるサービスを提供する。

2018年3月に神奈川県横浜市みなとみらい地区周辺で一般モニターが参加するサービス実証を初めて実施した。モニター約300組の参加を予定する本格的な実証で、自動車メーカー主導の自動運転サービス実証としては国内初の取り組みと思われる。

両社は2019年2月、2020年2月にも同様の実証を積み重ねている。初回の2018年はスマートフォンによる事前予約制で、各乗降地点にスタッフを配置するなど慎重を期した体制で臨み、2年目の2019年は対象エリアを走行ルートベースで約6倍に拡大し、スマートフォンによる即時配車やQRコードを活用するなど乗降地点の無人化を図った。

3年目の2020年には、タクシー事業者や地域の日産ディーラー関係者を中心に、現タクシーサービスとのタッチポイントの1つである専用配車端末「MOV CALL」を通じた自動運転サービスを提供した。

NTTドコモとの協業にも注目

日産は2021年9月から2カ月間にわたり、イージーライドを用いたオンデマンド配車サービスの実証実験をNTTドコモと実施した。

NTTドコモが開発したAI配車制御で、乗りたいときに乗りたい場所で誰もが簡単に乗車予約することができるオンデマンドサービス「AI運行バス」をイージーライドと組み合わせ、将来の完全自動運転による交通サービスをイメージさせる最新技術やサービスを提供し、検証を進めた。

年を重ねるごとに着々と進化を遂げているようだ。イージーライドは、2020年代早期の実現を目指すこととしている。

【参考】イージーライドについては「【インタビュー】日産×DeNA、自動運転タクシー「Easy Ride」の進化に迫る」も参照。

SAMやI2Vといった先進技術も

イージーライドのバックボーンには、日産が米NASAと共同開発した「シームレス・オートノーマス・モビリティ (SAM)」と呼ばれる遠隔コントロールシステムが存在する。

事故や路上の障害など不測の事態に直面した際、人が介入し遠隔で全ての無人運転車両をコントロールするとともに、クラウドに情報を集め全てのクルマをつなぐことでクルマを安全に誘導し、無人運転車両の効率的な移動を可能にするという。

自動運転タクシーなどは、基本的に1台単位ではなく複数台のフリートとして一括管理される。こうした将来に活躍しそうなシステムだ。

また、イージーライドとは別に、日産とNTTドコモは2019年、5Gを用いて「Invisible-to-Visible(I2V)」技術を走行中の車両で活用する実証実験を行っている。

I2Vは、リアル(現実)とバーチャル(仮想)を融合し、ドライバーが見えないものを可視化する技術として日産が開発を進めているもの。交差点における死角や濃霧による視覚不良時など、コネクテッド技術を活用して見えないものを可視化する。また、AR技術により、車内に3Dアバターを登場させることなども考えている。

将来の自動運転サービス全般で活躍しそうな技術だ。

【参考】Invisible-to-Visibleについては「日産、”ビルを透明化する”将来技術発表 自動運転車に搭載へ」も参照。

■【まとめ】先行する日産、ホンダはパートナー企業とともに猛追開始

一足早くイージーライド実現に向けた取り組みを進めている日産が2020年代早期の実現を目指す一方、ホンダは実証に着手したばかりで、まだ実現時期を見通していない印象だ。

ただ、開発パートナーのCruiseらは米国内で膨大な公道実証を行っており、1~2年内にサービスインする可能性が高い。このノウハウを日本国内における取り組みに効果的に落とし込むことができれば、先行する日産を捉えることも十分考えられる。

両社の取り組みがいっそう加速するものと思われる2022年の動向に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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