光学・電子機器メーカーの京セラ株式会社(本社:京都府京都市/代表取締役社長:谷本秀夫)は、自動運転向けの製品開発に力をいれている。その製品の一つに距離や方向の異なる複数対象物が1台で検知できる「マルチファンクション型ミリ波レーダー」があるが、この開発秘話についてのYouTube動画がこのほど公表された。LiDARや画像センサーなど多様な製品のなかでも、京セラが特にこのマルチファンクション技術に自信を持っていることが感じられる。
■自動運転社会から必ず選ばれる企業に
この動画で同社の研究開発本部・先進技術研究所の小林正弘所長は、マルチファンクション型ミリ波レーダーについて、「京セラがこれまで培ってきた通信技術・光学技術などのアナログ技術と、近年強化したAIなどのデジタル技術をすり合わせることで、京セラ独自の自動運転センサー技術を研究開発しています」の述べた上で、「京セラは選択肢のひとつではなく自動運転社会から必ず選ばれる企業を目指します」と語っている。
自動運転車などに搭載するレーダーは、ミラーに映らない部分を捉える「死角検知」、後方の障害物などを検知する「駐車支援」、駐車場から出る際に人や周囲状況を検知する「出庫時衝突検知」、さらに自動駐車システムに必要な「空間検知」など様々な役割のセンサーを取り付ける必要がある。京セラのマルチファンクション型ミリ波レーダーはこれらの機能を1台で実現という製品だという。
また、レーダーの小型化や低価格化を実現したことのほか、レーダーの検出誤差をわずか5センチに抑えられたことも説明されている。先進技術研究所・ADAS基盤技術ラボの本間本間拓也氏は「このレーダーで交通事故を一つでもなくしたいと考えました」とこの技術に込めた想いを語っている。
自動運転システムの研究を行う先進モビリティ株式会社は、このミリ波レーダーを使用してトラックの隊列走行実験を行った。同社の松本修一氏は実証実験について「精度の高い結果を得られています」と述べた上で「自動運転への実用化へ一歩ずつ近づいています」としており、京セラのマルチファンクション型ミリ波レーダーの性能を高く評価しているようだ。
■新研究所の設立など開発に注力する京セラ
京セラは自動運転や人工知能(AI)、ロボティクス、IoT(モノのインターネット)などの研究開発拠点として、新しく2019年7月に横浜みなとみらい21地区に「みなとみらいリサーチセンター」を開設している。
2020年1月には米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2020」に初出展し、LiDARと画像センサーを一体化した「カメラ-LIDARフュージョンセンサ」や5G技術を紹介した。また、JR東日本が主催するモビリティ変革コンソーシアムの「JR東日本管内のBRTにおけるバス自動運転の技術実証」にも参画している。
ちなみに「カメラ-LIDARフュージョンセンサ」については下記のYouTube動画でも機能などについて解説されている。
【参考】関連記事としては「AIカメラ、フュージョンセンサ…京セラの自動運転技術、ラスベガス開催のCESでPR」も参照。