
2024年の衆院選に続き、2025年の参院選でも与党が大敗した。衆参両院で自公政権は過半数を割り、厳しい政権運営を強いられることになった。
トップである石破茂首相の責任論も噴出し、退陣の意向を示したとの一部報道も流れたが、首相は改めてこれを否定し、続投の意向を示した。
迷走がいつまで続くかは定かではないものの、そもそも発足当初から一枚岩になり切れていない自民党内からの退陣圧力はくすぶり続けるだろう。
国の政治のトップが代われば、当然政策も変わってくる。自動運転関連の施策は今後どうなるのか。政権交代が起きずに高市・小泉の両氏のどちらかが首相になれば、実用化の加速は濃厚という見方も出ている。想定されるシナリオ別に、施策動向を探ってみよう。
記事の目次
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■政局の行方
今後の組閣は3パターン
石破・麻生・菅・岸田の首相経験者4人による会談が23日に開かれたが、毎日新聞は石破首相が8月までに退陣を表明する意向を固め、周辺に伝えたと報じた。読売新聞に至っては号外まで発行したようだ。
この一部報道を受け、石破首相は「出処進退については一切話は出ておらず、報道されている事実は全くない」と完全否定した。この結果だけを見れば「誤報だった」ということになるが、麻生氏を含むこの4者が会談して、退陣に関する話題が一切出ないというのも不自然だ。
火のないところに何とやら――ではないが、おそらく水面下では退陣を含む今後の在り方について何かしらの協議が進められているものと思われる。もちろん、退陣ありき――というわけではない。
政局次第で、今後の組閣は3パターンのシナリオが想定される。一つ目は、石破首相の続投だ。米国との関税交渉も合意に達し、大きな山場を越えた。選挙敗戦の責任を取るには絶好のタイミングだが、結局のところ、敗因は石破首相だけでなく自公の政策や体質に起因する部分が大きい。
首を挿げ替えても一時しのぎの支持率回復に過ぎず、根本的な部分が変わらない限り同じ道を歩みかねない。特に今回は保守層の票が大きく流出したと言われている。よほどの独自色を出せる人物でない限り、復権は難しいものと思われる。
であるならば、風向きが変わるまで石破首相に矢面に立ってもらう…というシナリオもアリだろう。フィクサーであるA元首相も、自身の息がかかった候補が新総裁となる目途が立つまでは石破首相を転がしておこう――と目論んでいるかもしれない。
また、辞任に伴う総裁選で石破首相が再任される――というミラクルも、限りなくゼロに近いだろうが可能性は残されている。以上が石破首相続投のシナリオだ。
二つ目は、自公政権内における首相の交代だ。確率としてはこれが一番高い。関税交渉も一段落し、首相をはじめとした執行部を一新して復権を目指す流れだ。物は言いようだが、スタートの段階で落ちるところまで落ちているため、あとは登るだけ――と捉えれば、イメージを刷新しやすい。
三つ目は、野党からの首相選出だ。過半数を握る野党が一枚岩になれば、自公政権を崩すことができる。ただ、共産党含め一枚岩になる可能性は限りなく低く、キャスティングボートを握る利点を生かして自公サイドと調整した上での選出となるだろう。
ここからが本題だ。各シナリオにおいて、自動運転関連施策はどうなるだろうか。以下、上記三つのシナリオ別に自動運転施策の動向を予測してみた。
■石破首相続投のシナリオ
続投なら既定路線変わらず
石破首相が続投する場合、現行の取り組みがそのまま継続される可能性が高い。石破内閣発足後の動きを見ても、石破首相自身に特段の自動運転施策があるようには感じられず、流れを引き継いだまま取り組んでいる印象が強い。
それゆえ、続投時の施策の行方は、自動運転施策の権限を有する国土交通大臣、経済産業大臣、デジタル大臣の人事に委ねられる。
公明党の指定席となっている国土交通大臣は、良くも悪くも変化がないものと思われる。現在、経済産業大臣は武藤容治氏、デジタル大臣は平将明氏がそれぞれその任に就いている。
武藤氏は、党内に「自動運転車・サポカー推進議連」が発足したことを告げ、世界に勝っていくため自動運転普及を支援していくとしている。平氏は視察で訪れた米サンフランシスコでWaymoに乗車し、日本企業との提携について記者に尋ねられた際、デジタル赤字の問題や日本の道路事情などを前提に「日本では日本製の車両が合っていることもある。サービス運営の主体も日本企業が担うことに越したことはない」など述べた。
平氏は平和島自動運転協議会も視察し、活発な意見交換を行ったという。議員の中では先端技術やイノベーションに理解が深いタイプと思われるだけに、石破政権下では、こうした要職を誰が担うかで推進体制に変化が出そうだ。
【参考】平デジタル大臣の発言については「デジタル大臣、自動運転車で「日本製優遇」を示唆 トヨタ有利に?」も参照。
■自公政権による首相交代のシナリオ
新総裁は誰の手に?
相次ぐ批判の声に石破首相自らが辞任、あるいは党則に基づくリコールが成立した場合、総裁選が前倒しで行われることになる。事実上の首相交代劇だ。
その際、誰が新たな総裁選に手を挙げるのか。昨秋の総裁選では、高市早苗氏、小林鷹之氏、林芳正氏、小泉進次郎氏、上川陽子氏、加藤勝信氏、河野太郎氏、石破茂氏、茂木敏充氏の9氏が立候補し、決選投票の末石破氏が高市氏を抑えて新総裁の席に就いた。
この時の情勢を踏まえると、最有力候補は高市氏となる。高市氏はすでに近い議員と会合を行い、麻生氏とも会談したという。
報道によると、旧茂木派の中堅・若手議員が開始した、両院議員総会の早期開催を求める署名に協力することを確認したという。今のところ明言を避けているものの、次期総裁に意欲を示しているのは事実だ。
なお、昨秋の総裁選の1回目の投票結果は、高市氏181票、石破氏154票、小泉氏136票、林氏65票、小林氏60票、茂木氏47票、上川氏40票、河野氏30票、加藤氏22票だ。上川氏、河野氏、加藤氏はおそらく次期総裁選に出馬しても特段の伸びしろはなく、出馬を見送るか、出馬しても傍系で終わりそうだ。
サイバーセキュリティの高市氏、イノベーション推進の小泉氏

高市氏が次期総裁に就いた場合、自動運転施策はどうなるか。自動運転そのものへの言及はそれほど多くないが、同氏はサイバーセキュリティ関連に精通しており、その領域から新たな自動運転施策を実行する可能性が考えられる。
技術開発や人材育成の強化とともに、システムの内製化を推進する可能性もありそうだ。海外製ソフトウェアの導入などに強力な規制をかけるところまで踏み込めばマイナスの影響も懸念されるが、しっかりとバランスを図ることができれば、国内産業を押し上げることもできそうだ。
コメ政策で話題となった小泉氏も依然有力候補として名が挙がる。小泉氏は自動運転推進の立場を明確にしており、その点では他の候補より頭一つ抜きん出ている。

具体的な施策は不明だが、規制緩和を進め実証や実用化を行いやすい環境を構築してくれるかもしれない。自動運転領域を担うオフィサー次第では、大きな転換点を迎えることも考えられる。
現政権で官房長官を担う林氏も、将来の首相候補の一人だ。ただ、施策に関する情報発信が乏しく、判断が難しい。自動運転施策を後退させることはないだろうが、最先端分野に対しどのような独自色を発揮できるかが問われそうだ。
小林氏はデータ活用に意欲
小林氏は、情報通信分野に関する知見が深いものと思われ、これまでサイバーセキュリティや5G、エッジコンピューティングなどの点から自動運転に関わる質疑を行っている。
2024年9月には、新たな法体系として「データ法」を提唱した。データという無体物の権利が法的に定義されていないことを踏まえ、データを使い倒してイノベーションを起こすことを国の方針にする観点から、データに関する権利を明確にし、自動運転や農業、防災など各分野でどんなデータを開示またはクローズにするかルール化する案を検討しているようだ。
茂木氏は、経済再生担当大臣を務めていた2017年、米テスラの自動運転EV(ADAS)の試乗やUber Technologiesへのライドシェアに関するヒアリングなどを行ったほか、2018年にはスウェーデン・ストックホルムのエリクソン本社を訪ね、AIを使った都市交通システムや自動走行バスの公道実証実験を体験している。
安倍政権下、当時の日本の自動運転施策の一翼を担っていた実績があり、自動運転に対する考え方もまとまっているものと思われる。既存路線の延長線上にどのような色を付けるかが試されるところだ。
西村氏や萩生田氏の復権も?
このほか、自民党内においては西村康稔氏や萩生田光一氏も有力な存在となる。安倍派5人衆として期待されつつも、政治資金問題で党員資格停止や役職停止処分などを受け、2024年の衆院選では両者とも自民党非公認の立場で出馬した。しかし、強い逆風が吹き荒れる中でも再選を果たした。
2025年4月にはそれぞれの処分期間が満了し、復権に向け党内活動を本格化させている。総裁選出馬はまだ早いかもしれないが、実力者だけに今後の動向に注目が集まるところだ。
【参考】2024年の総裁選候補の人物像については「自民総裁選、自動運転「実用化が進みそう」ランキング!2位は河野氏、1位は?」も参照。
■野党から首相選出のシナリオ
自動運転どころではない政局に?
野党から首相が選出される可能性もゼロではない。自公政権に野党の一部が糾合する新体制と野党大連立の可能性があるが、前者については現時点で立憲民主党、国民民主党、日本維新の会とも否定している。一応、参政党も否定している。
野党が固まる場合、衆議院では野党の議席は共産党を除いても237議席あり、過半数(233議席)を超えている。
一方、参議院では自公122議席に対し、野党ほかが126議席で逆転した。共産党が7議席を有しているため、共産党以外の野党による大連立では過半数を取れない。
ただし、与党内から造反する動きが出てもおかしくはない。つまり、何があってもおかしくない状況なのだ。
主要野党は自動運転推進派
あくまで仮にだが、野党候補が首相の座に就いた場合どうなるか。立憲民主党は「主な政策項目 2025」の中で、「特定条件下での完全自動運転(レベル4)・完全自動運転(レベル5)を社会実装するため、研究・開発支援と普及・拡大に向けて関連する法整備等を総合的に進めます」としている。
国民民主党は政策各論の中で、投資の拡大策の一つとして「完全自動運転の巡回バス・乗用車・船舶を実用化し、地域公共交通システムを構築するスタートアップ企業を優遇します。地方における移動手段の確保をはじめ交通事故の削減、高齢者等の移動支援や渋滞の解消等に資する完全自動運転(レベル5)を早期に実現します。その実現に向けた技術開発や道路の高度化に投資し、安全な交通社会の推進に取り組みます」としている。
日本維新の会は、維新八策2024における成長戦略の中で「世界的な開発競争が生じている自動運転の国内技術発展を支援し、レベル5(完全な自動運転)の公道実験の推進等により早期の実用化を図ります」としている。
いずれの党が実権を握っても、自動運転施策は推進されることになりそうだ。ただ、野党から首相が選出された場合、おそらく各党の調整で自動運転施策どころではなくなる可能性が高い。良い意味でも悪い意味でも既定路線を歩むことになりそうだ。
■【まとめ】協調領域から競争領域のフェーズへ
新たな首相が自民から選出されるにしろ野党から選出されるにしろ、しばらく不安定な政局が続くものと思われ、自動運転施策に新たなメスを入れる余裕はないかもしれない。AIをはじめとした最先端分野におけるイノベーションを重点施策に掲げる候補者かどうか、また閣僚人事で適任者を浮上させることができるかどうか……という点にせめて注目したい。
これまでの日本の施策は官民協働スタイルで、一丸となって法・規制をはじめとした協調領域において成果を出してきた。その反面、競争領域の進展が乏しかったと言える。民間の競争が促進されていなかったのだ。米国や中国に劣るのもまさにこの部分だ。
新たなフェーズとして、この点にスポットを当てた施策を展開すれば、自動運転分野は間違いなく盛り上がるだろう。
何はともあれ、まずは石破首相の動向に注目だ。
【参考】関連記事としては「【最新版】自動運転、日本政府の実現目標・ロードマップ一覧|実用化の現状解説」も参照。