独ダイムラーの高級車ブランド「メルセデス・ベンツ」は2022年5月19日までに、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の有料オプション「DRIVE PILOT」の注文受付を開始すると発表した。「Sクラス」とSクラスのEV版「EQS」で注文可能だという。
オーナーカー向けのレベル3の提供は、日本のホンダに続いて2社目となる。いよいよ自動運転レベル3で公道を走行する流れが本格化する。
自動運転レベル3は、エリアや速度などの一定条件下で自動運転システムに運転を任せることができる水準のことを指す。
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■「高速道路」「時速60キロ以下」で作動可能
DRIVE PILOTではドイツ国内の高速道路において、渋滞時や混雑時に時速60キロまでの一定条件下のもと、ドライバーはシステムに運転操作を委ねることができる。車両前方や周辺の状況は常にセンシングされ、速度やハンドル操舵が自動制御される形だ。
こうした自動運転システムが作動可能な条件を「ODD」と呼び、DRIVE PILOTのODDの道路条件は「高速道路」、走行条件は「渋滞時」「時速60キロ以下」ということになる。
【参考】関連記事としては「自動運転とODD(2022年最新版)」も参照。
予期しない交通状況にも対応し、ハンドル操作による回避やブレーキ操作などで危険を避ける。DRIVE PILOT用のセンサーとして搭載されている、レーダーやLiDAR、カメラのほか、超音波センサーや水分センサーが活躍する。
メルセデス・ベンツ・グループAGのBritta Seeger氏(マーケティング&セールス担当役員)はレベル3の技術について「DRIVE PILOTは『時間』を生み出す革新的な技術だ」と述べ、ドライバーが一定条件下で運転から解放されるという強みを強調した。
■10秒以内に人に引き継げない場合でも・・・
DRIVE PILOTではブレーキシステムなどに万が一故障が生じても、自動運転システム側は冗長化されたシステム設計によって安全な走行を維持しつつ、ドライバーに運転を引き継げるようになっている。
ちなみに、ドライバーが10秒以内に引き継ぎ要求に応じない場合には、自車と後続車などの安全に問題が起きないルート・場所で安全に停止する。これはいわゆる「ミニマム・リスク・マヌーバー(MRM)」という技術だ。
【参考】関連記事としては「自動運転における「ミニマム・リスク・マヌーバー(MRM)」とは?」も参照。
ちなみに車両の自己位置については、従来のGPS(全地球測位システム)よりも強力な高精度測位システムで把握するという。具体的には、LiDARやカメラ、レーダー、超音波センサーによって収集された空間でデータと高精度地図のデータを組み合わせることで、高精度な自車位置の特定が可能になるようだ。
■テスラがメルセデスベンツに後塵を拝す
カーオーナーに向けた有料オプションの提供は、米EV大手のテスラも行っている。しかし、テスラの有料オプション「FSD」はまだ自動運転機能の提供には至っておらず、日本の自動車メーカー以外だとテスラはメルセデスにレベル3提供で先を越された形だ。
DRIVE PILOTはドイツでの展開ののち、アメリカでも認証を得てスムーズに展開が始まるのだろうか。注目したい。
【参考】関連記事としては「テスラのマスク氏、FSD β版「2022年末に100万人目標」」も参照。