独ダイムラーの高級車事業会社メルセデス・ベンツと半導体大手の米エヌビディアは2020年6月28日までに、自動運転技術で提携することを発表した。自動運転車両の「頭脳」となるシステムを共同開発し、2024年以降に発売する各モデルに搭載する予定だという。
メルセデスは、2019年から自動運転技術においてBMWとの共同開発を進めていたが、2020年6月19日に共同開発の中止を発表したばかりだ。連携する相手を切り替えた形となる。今回の発表と同様、BMWとの共同開発でも2024年のシステム搭載を目標としていた。
エヌビディアと開発する自動運転システムは、メルセデスベンツの「Sクラス」から「Aクラス」の全次世代モデルに搭載する計画のようだ。
特に興味深い点は、搭載したシステムは無線通信を通じたOTA(Over The Air)によるソフトウェアアップデートで、常に最新バージョンを維持できる仕組みにするという点だ。
■そもそも「OTA」とは?
OTAは無線通信を経由してデータを送受信することを指し、ソフトウェアの更新などを行う際にこのOTA技術が活用される。スマートフォンOSのアップデートをイメージすると分かりやすい。
自動運転は簡単に言えば、センサー類で得た情報をソフトウェアで処理することによって成立する。そのため自動運転車では従来の車両よりもソフトウェアの重要度が高く、OTA技術の活用は必須であると言える。
OTAを活用すれば、ソフトウェアが古くなってもディーラーなどに車両を持ち込む必要がなくなる。サイバー攻撃などに対する高いセキュリティを維持するためには頻繁なアップデートも求められ、こうしたことを視野に入れての今回の発表であると言える。
【参考】関連記事としては「Over The Air(OTA)技術とは? 自動運転車やコネクテッドカーの鍵に」も参照。
Over The Air基礎解説…自動運転車両で今後標準搭載へ 無線通信でソフトウェア更新 テスラが先行導入、トヨタ自動車や日産も https://t.co/pwLeTeoqhq @jidountenlab #OverTheAir #自動運転車 #コネクテッドカー
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) November 14, 2018
■共同開発するシステムの概要
共同開発するシステムは、エヌビディアの自動運転向けプラットフォーム「NVIDIA DRIVE」の次世代版をベースとして、GPUアーキテクチャ「Ampere」を基にした次期型SoC(System on Chip)「Orin」を採用するという。
GPUアーキテクチャは、計算処理に特化したコンピュータの「心臓部」に相当する。新たなシステムは同社の従来のものと比べて6倍以上の処理能力を有するとされており、膨大なデータ処理が求められるADAS(先進運転支援システム)や自動運転にも対応可能なようだ。
両社はこの新システムを活用した自動運転レベル2〜4の自動運転システムの開発に乗り出すという。
■【まとめ】「ソフトウェア」は非常に重要な要素
前述の通り、自動運転車両において「ソフトウェア」は非常に重要な要素だ。各自動車メーカーがソフトウェア技術者の採用やテック系企業との連携を強化しており、車の頭脳の開発競争は激しさを増している。
自動車メーカーBMWから技術系企業のエヌビディアとの共同開発に方向性を変えたダイムラー(メルセデス・ベンツ)に今後も注目だ。
【参考】関連記事としては「英断か悪手か…?BMWとDaimler、共同自動運転開発を一時停止」も参照。