自動車メーカーや有識者なども参加する国の「自動走行ビジネス検討会」は2020年5月12日、無人自動運転サービスの実現と普及に向けた新たなロードマップを公表し、2025年度を目途に高速道路や生活道路などの少なくとも40カ所以上で、レベル4(高度運転自動化)の自動運転サービスを普及させる計画を明らかにした。
ロードマップは「『自動走行の実現に向けた取組報告と方針』報告書概要 Version4.0」の中で示されており、走行環境を「閉鎖空間」「限定空間」「自動車専用空間」「交通環境整備空間」「混在空間」に分類し、自動運転サービスの実現時期の見込みなどを示している。
走行環境によって、「遠隔監視のみ」「車内乗務員のみ」、「低速」「中速」「高速」などという具合に、サービス提供の条件・内容などは異なるが、日本のさまざまな場所・道路で自動運転サービス導入を強力に推し進めようという方針が伝わってくる内容だ。
ロードマップは以下の通りとなっている(※クリックすると拡大できます)。この報告書概要は「https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jido_soko/pdf/20200512_02.pdf」から閲覧することが可能だ。
記事の目次
■閉鎖空間(工場・空港・港湾などの敷地内など)
工場や空港などの敷地内では、自動運転技術を活用した低速・中速の移動サービスや輸送サービスの展開を目指す。2020年度以降、まず数カ所で遠隔監視のみの自動運転サービスを開始し、2025年ごろには10カ所以上で普及させることを目指す。
■限定空間(廃線跡・BRT専用区間など)
廃線跡・BRT専用区間では、小型モビリティを使った低速の自動運転サービスと中速のシャトルバスサービスの展開を想定している。
このうち小型モビリティを使った移動サービスでは、まずは監視がある状態で遠隔操作によるサービス提供を進め、その後、遠隔監視のみの体制に切り替えていく形だ。2025年度を目途に10カ所以上でのサービス普及を目標としている。シャトルサービスは、遠隔監視のみまたは車内乗務員のみで、10カ所以上での普及を目指すという。
■自動車専用空間(高速道路・自動車専用道など)
高速道路などの自動車専用空間では、後続車両を無人走行させるトラックの隊列走行の商業化などを推進させる計画だ。路車間通信などのインフラ整備も進め、有人の隊列走行を含めて2025年度以降に商業化させるという目標を打ち出した。
■交通環境整備空間(幹線道路など)
幹線道路などにおいては、自動運転技術を活用した都市部でのタクシーサービスやバスサービスなどの展開を推進していく。2020年度以降にセーフティドライバーありの形態でサービス提供をスタートさせ、2025年度を目途に、遠隔監視のみまたは車内乗務員のみでサービスを数カ所で開始することを目指す。
■混在空間(生活道路など)
生活道路などの歩行者と自動車などが混在する空間においては、低速の小型モビリティ移動サービスと中速のラストワンマイル向けタクシーサービスを展開していく計画となっている。
小型モビリティ移動サービスは、2023年度に数カ所で、2025年度に10カ所以上で遠隔監視のみでの普及を目指す。ラストワンマイル向けタクシーサービスについては、遠隔監視のみまたは車内乗務員のみで、2026年度以降にサービスを開始する想定だという。
【参考】関連記事としては「自動運転「国内でも戦いの火蓋」 下山哲平・緊急インタビュー 新ロードマップ公表」も参照。
自動運転レベル4「国内でも戦いの火蓋」 下山哲平・緊急インタビュー 新ロードマップ公表 https://t.co/ZmU57WYy3Q @jidountenlab #自動運転 #ロードマップ #インタビュー
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) May 13, 2020
■【まとめ】2025年度以降、有償の自動運転サービスがどんどん誕生
今回のロードマップは実際に実証実験に取り組む事業者に対するヒアリングなどを基に作成され、策定された目標は極めて現実的なものであると言える。またこのロードマップにおける「サービス開始」は、収入を得て事業として継続的にサービス展開されるもののことを指す。
いまは運賃を「無料」とする形で取り組まれる実証実験がほとんどだが、ロードマップ通りにいけば、2025年度を節目にマネタイズを視野に入れた有償の自動運転サービスがどんどん誕生していくことになりそうだ。
▼「自動走行の実現に向けた取組報告と方針」報告書概要 Version4.0
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jido_soko/pdf/20200512_02.pdf