英ジャガー、障害負った退役軍人向けに自動運転体験会 レベル4技術搭載

「人とクルマ」の関係重視



英高級車メーカー大手のジャガー・ランドローバー(本社:コヴェントリー/最高経営責任者:ラルフ・スペッツ)は2018年10月7日までに、同社が主催する退役軍人のための「第4回インピクタス・ゲームズ」を前にして、負傷したり病気になったりして障害を抱える退役軍人を招き、自動運転の体験会を行った。


体験会では、参加した退役軍人たちが自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の技術を搭載したSUV(多目的スポーツ車)に試乗。ジャガー・ランドローバーがこの度用意した自動運転車は、環状交差点での信号の確認や車線変更などを時速50マイル(約時速80キロ)以下のスピードでの走行で見事にやってのけた。

参加者の1人で、実際にレベル4の自動運転車に試乗したマーク・パーキンス氏は「技術があまりに進歩したので、自分が時代遅れに感じる」とコメント。その上で「子どもたちが成長した頃には、人が体を使って車を運転していたことが不思議に感じることだろう」と語った。

さらに従軍中に視力障害を抱えた元イギリス海軍航空機エンジニアのジェイミー・ウェラー氏は「ジャガー・ランドローバーが開発中の新技術の体験は、素晴らしい機会だった」と好感触を得たとし、「視力障害者が使える車について意見を交わすのは楽しい。この自動運転技術には、障害のある誰にとっても明らかなメリットがたくさんあります」と述べたという。

■障害を抱えた人にとってこそ

参加者のコメントにも表れている通りに、自動運転車は障害を抱えた人にとって非常に有用な乗り物だ。どこか遠くの場所に移動するということは、障害を抱えた人にとっては時としてとても面倒で危険が伴う行為だからだ。


例えば、視覚障害を抱える人にフォーカスしてみよう。

特にここ数年、視覚障害を抱える人が電車を待つホームから線路に転落するという事故が相次いでいる。視覚障害を抱えた人が、どうして電車の駅に向かい、ホームに立たねばならないのか。それは当然、用事や目的のために「移動」をする必要があるからだ。

また視覚障害者だけではなく、聴覚障害者が車の接近に気づけずに、車にはねられるという事故も多い。目が見えない、耳が聞こえないということは、移動において大きなリスクとなるのだ。

それは、郊外であっても都心部であっても変わらない。特に大都会など、人と車が密集しているような地域では、障害を抱えている人が正確に交通状況を判断し、目的地までたどり着くことには困難が伴うと言える。


■運転する人間の目にもなり耳にもなる

自動運転車は運転する人間の目となり、耳となる。そして高性能なセンサーやLiDARのデータを解析するAI(人工知能)は、時として人間の判断力をも上回ることもあるはずだ。

どんなに遠くの場所であっても、道路が混み合っていたとしても、自動運転車は障害を抱えた人を目的地まで安全に運んでくれるといえるだろう。今回ジャガー・ランドローバーが開催した体験会は、自動運転車が障害を抱えた人をどれほど助けることができるかを見事に示したともいえる。

そんなジャガー・ランドローバーは、つい最近にも「人の気持ち」にフォーカスした取り組みを行っている。

ジャガー・ランドローバーは2018年9月、車両のフロント部分に「バーチャル・アイ」を2機搭載した自動運転車を発表した。歩道を歩いている歩行者との「アイコンタクト」を取ることを目的として作られたもので、こういった取り組みからもジャガー・ランドローバーのユニークさと親切さが伝わってくる。

この自動車は、英国政府が支援している「Autodrive」プロジェクトの一環として実験が進められている。プロトタイプはすでに完成しており、認知心理学者と協力して開発を進めていくようだ。

■自動運転技術の開発が日進月歩で前進

無人の自動運転を実現するという技術が日進月歩で進んでいる中、人とクルマとの関係性が改めて議論になっている。各社がどのような自動運転車を開発し、どのような利用シーンを念頭に入れているのか、今後も注目していきたい。

【参考】ジャガーが開発を進める「キモカワイイ」自動車についての詳細は、「イギリス・ジャガーランドローバーの自動運転車、歩行者と「アイコンタクト」 不安軽減へ導入実験|自動運転ラボ」も参照。

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