米ライドシェア最大手のUber Technologiesや準大手のLyft(リフト)は、これまで「稼ぎたい人にうってつけ」とアピールし、多くのアメリカ人にドライバーとしての就業機会を提供してきた。
しかし、ライドシェアの自動運転化の流れが徐々に加速していることを受け、ライドシェアで生計を立ててきたドライバーたちは失業への不安を募らせている。
■マイアミ、Lyftで自動運転車を選べるように
フロリダ州マイアミの地元紙Miami Heraldはこのほど、ライドシェアのドライバーとして働く地元住民の声を記事にして紹介した。あるドライバーは「自動運転車が新たに1台道路を走るということは、(ドライバーの)誰かひとりが職を失うということ」と語っているという。
彼らの不安をあおるのは、自動運転タクシーの実用化に向けた各企業の積極的な取り組みだ。
米Fordと自動運転スタートアップの米Argo AIは2021年7月、Lyftのライドシェアサービス上で自動運転車を投入する計画を明らかにした。まずマイアミなどで自動運転車を投入し、ユーザーが車両を配車する際、自動運転車か人が運転する車両かを選べるようになるようだ。
こうした発表を受け、マイナミでは先ほどのドライバーのように不安を口にする人が増えているというわけだ。ちなみにFordとArgo AIは5年間かけて展開車両を数百台規模まで増やしていく計画のようだ。
▼Argo AI And Ford To Launch Self-Driving Vehicles On Lyft Network By End Of 2021
https://media.ford.com/content/fordmedia/fna/us/en/news/2021/07/21/argo-ai-ford-lyft-network.html
■多くのライドシェア企業が、自動運転化に積極的
人が運転するライドシェアを自動運転化し、自動運転タクシーとして展開する流れは、Lyftだけに起きているわけではない。中国最大のライドシェア企業DiDi Chuxing(滴滴出行)も、2030年までに100万台もの自動運転タクシーを導入することを発表している。
東南アジアのライドシェア大手のGrab(グラブ)もまた、シンガポールの自動運転ソフト開発企業nuTonomy社と提携し、2022年までに東南アジア圏で自動運転タクシーを展開する計画だ。
米調査会社PitchBookのアサド・フセイン氏は「UberやLyftの自動運転タクシーは、2030年にはより一般的になる」と予測。その上で、多くのライドシェア企業が躍起になって自動運転化を推し進めるのは「人件費削減という大きな付加価値が生まれるから」と指摘する。
そのほか、自動運転化されることで、ドライバーによる乗客へのセクハラや暴力など、ライドシェア企業の悩みの種も無くすことができる。ライドシェア企業にとって無人化はメリットが多い。
【参考】関連記事としては「ライドシェア無人化の衝撃!中国DiDi「自動運転車100万台」宣言」も参照。
ライドシェア無人化の衝撃!中国DiDi「自動運転車100万台」宣言 https://t.co/CzjnFXzXm5 @jidountenlab #自動運転 #ライドシェア #DiDi
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) June 30, 2020
■「自動運転化により生まれる雇用もあるはず」
一方でフセイン氏は、「ドライバーたちの身に何が起こるのかが大きな問題だ」とも指摘し、失業者が増えることを懸念する。
コロナ禍が起きる以前のUberの発表によると、同社のドライバー数はフロリダ州だけでおよそ10万人にも及ぶ。Lyftは自社のドライバー数を公表していないが、相当数いると思われる。自動運転化の流れはこうしたドライバーの暮らしに大きな影響を与えることになる。
ただし自動運転業界からは「自動運転化により生まれる雇用もあるはず」という声も聞こえてくる。
例えば、自動運転車を遠隔地から監視する人は必要となるし、車両が自動運転化されても車両の日常点検を担当する人も不可欠だ。そして、自動運転タクシーの実用化に向けたテストドライバーの需要はすでに高まっている。
いずれにしても、ライドシェア運転手の失業問題は、今後いずれかのタイミングで大きな社会問題となる可能性が高そうだ。
【参考】関連記事としては「ライドシェアとは?2020年代に日本でも?現在の規制と特区制度まとめ」も参照。