国の自動運転関連事業&落札企業まとめ

三菱総研やドコモ、東京大学など産学揃い踏み



出典:SIP自動運転 研究開発計画説明会資料(https://www.nedo.go.jp/content/100882242.pdf)

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期における自動運転関連の事業が着々と進んでいるようだ。SIP第2期では、自動運転に必要となる協調領域の技術を2023年までに確立し、実証実験などで有効性を確認するとともに複数の実用化例を創出することで社会実装に目途をつけることとしている。

事業期間は2018年度から2022年度までを予定しており、2019年度は28億3900万円の予算が付けられている。


今回は、プログラムを推進する管理法人「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」が自動運転領域において公募し、2019年度(2019年4月~)に採択結果が出された18件について、落札企業と事業内容を紹介する。

記事の目次

■自動運転システムのための通信技術に関する調査

三菱総合研究所が落札。2018年度に行われた「自動運転システムにおけるV2X技術等を含む新たな通信技術の活用に関する調査」をさらに進め、無線通信システムについての詳細な分析と通信に関する国際的な議論について調査を深め、SIP第2期において自動運転に関する通信についての議論を行うための基礎資料を作成することを目的とする。

事業期間は2019年度までとなっている。


詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100184.html

■社会的受容性の醸成に向けた戦略策定と評価に関する調査

①社会的受容性の醸成に関する総合的な戦略の策定②自動運転に関する情報発信に関する企画及び実施③情報発信に関する印刷物④解説動画等の作成⑤東京臨海部実証実験等の場を活用したイベントの企画及び管理――を電通名鉄コミュニケーションズと住商アビーム自動車総合研究所、⑥社会的受容性の醸成に向けた取組に関する評価――を第一生命経済研究所がそれぞれ落札した。

自動運転に対する社会的受容性の醸成に向け、市民らへ自動運転の正しい理解を促す情報コンテンツや効果的な情報伝達方法、効果測定手法などについて検討し、情報発信を含む社会的受容性の醸成に関して、2022年度までを見据えた総合的な戦略を策定の上、特に東京臨海部実証実験の場を活用した今後2年間は、より具体化した広報活動計画を立案・実践していく。

事業期間は2022年度までとなっている。


詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100182.html

■高精度3次元地図における位置参照点(CRP)のあり方に関する調査検討

三菱総合研究所が落札。高精度3次元地図に関し、位置参照点の定義や維持管理のあり方、位置参照点を用いた車線などの地物を表現する方法、リンク地図や道路区間IDなど既存の仕組みと整合させる方法について、必要な基礎資料の収集・分析を行い、国際標準化推進団体へ提案するための案を策定する。

事業期間は2022年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100180.html

■自動運転移動サービスの実用化並びに横展開に向けた環境整備

道路新産業開発機構、エヌシーイ―、オリエンタルコンサルタンツ日本工営、復建調査設計が落札。自動運転移動サービスの実用化に向け、社会実装初期において必要な事項のデータ収集・検証を行うとともに、これまでの各種実証実験において共通課題とされてきた走行空間の確保方策などについて解決方策を確立する

また、得られた成果をもとに自動運転移動サービスの社会実装のためのマニュアルを取りまとめ、自動運転移動サービスの2020年の実現や、その後の全国への横展開に貢献する。

事業期間は2020年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100178.html

■自動運転・運転支援に係るアーキテクチャの設計及び構築のための調査研究

①ダイナミックな交通環境情報を含む地理系データの流通促進のためのポータルサイトの構築及び運営②SIP 自動運転(システムとサービスの拡張)の「東京臨海部実証実験」地域における交通環境情報等の地理系データの整備・構築に向けた調査・研究③移動・物流サービスの連携等のための都市部における交通環境情報等の地理系データの整備・構築に向けた調査・研究――をエヌ・ティ・ティ・データ、④SIP自動運転(システムとサービスの拡張)の「地方部における自動運転サービス」地域における運行管理等システム構築に必要な要件定義等に向けた調査・研究――を日本工営、パシフィックコンサルタンツ、道路新産業開発機構がそれぞれ落札した。

自動運転に必要なデータベースとなるダイナミックマップに関し、データ提供者とデータ活用者の双方にとって魅力のある情報交換の場を作り、その結果として企業の中に埋もれている様々なデータを、他の企業が積極的に活用できるデータ流通促進のためのしくみの構築を目指す。

事業期間は2019年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100167.html

■狭域・中域情報の収集・統合・配信に係る研究開発

NTTドコモ、沖電気工業、住友電気工業、パナソニックが落札。高度自動運転の実現に向け、情報源である多数の路側インフラなどから得られる車両や歩行者などの動的情報の効率的な収集と、それら情報の統合などの処理による動的情報の効率的な生成、処理後の動的情報の効率的な配信を行うための要素技術の研究開発を行い、自動運転車両の課題解決に向けた取り組みを促進し、実用化と普及の加速を図る。

事業期間は2020年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100173.html

■交通環境情報に係る国際協調に向けた海外動向等の調査

三菱総合研究所が落札。国内外の標準化動向を調査するとともに、国内関係者との情報共有及び国際標準化戦略の検討を支援する。

事業期間は2020年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100170.html

■自動運転の高度化に則したHMI及び安全教育方法に関する調査研究

学校法人慶應義塾、産業技術総合研究所、筑波大学、東京都ビジネスサービスが落札。自動運転車と周囲の交通参加者間の安全を確保し、互いの意図が明確に分かる円滑なコミュニケーション方法の提案を行う。

運転者が存在する自動運転レベル3~4相当の車両で、走行環境条件を外れた場合や自動運転システムが機能低下した際における運転引継などを適切に行うためのHMI案を開発する。

また、レベル3~4相当の自動運転車や普及が進むレベル2相当の高度運転支援システムに関し、運転者や歩行者らが習得すべき知識とその効果的な教育方法を開発する。

事業期間は2021年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100169.html

■新たなサイバー攻撃手法と対策技術に関する調査

PwCコンサルティング合同会社が落札。車両に対するサイバーセキュリティに関し、新たなサイバー攻撃手法がBlackHatをはじめとする国際会議などで報告されており、また、車両販売後の新たなサイバー攻撃手法への対策として、悪意ある第三者からの車両へのサイバー攻撃に対する侵入検知システム(IDS)が注目されている。

これらを踏まえ、新たなサイバー攻撃手法の動向と対策技術の調査を行い、車両セキュリティ標準検討組織などと連携し、新たなサイバー攻撃手法に対応するための技術標準案を策定する。

事業期間は2019年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100168.html

■プローブ情報を活用した車線レベル道路交通情報の生成及び提供の仕組み作り等に向けた企画・検討会運営

三菱総合研究所が落札。車両プローブ情報を活用した自動運転及び安全運転支援に資する車線レベル道路交通情報提供の仕組み作りに向け、官民ステークホルダーによる検討会を通じて、車両プローブ情報に係わる現状調査を行うとともに目指すべき方向性の検討を行う。

事業期間は2020年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100164.html

■混在交通下における交通安全の確保等に向けたV2X情報の活用方策に係る調査

パシフィックコンサルタンツと一般社団法人UTMS協会が落札。2018年度に実施した同調査の検討結果を踏まえ、東京臨海部実証実験において収集されるデータの活用を見据えたシミュレーションの作成検証、及び交通流の分析などを行い、交通安全に係る施策立案や交通管制業務などへの活用を検討する。

事業期間は2019年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100163.html

■観光都市における交通環境情報基盤の構築と活用に向けた調査

三菱総合研究所が落札。各種公共交通情報や人流・物流情報などの交通環境情報を統括的かつ効率的に活用可能な情報連携基盤の構築を前提に、その活用による既存サービスの利便性向上や新たなサービスの実現に向けた調査を行う。

交通環境情報の連携・流通を実現するための基盤としては、2018年度に開発されたダイナミックマッププラットフォームの活用を想定し、交通環境情報のサステナブルな流通が可能となるよう流通可能な情報および流通条件の調査、サービスの開発・評価スキームの検討などを行う。

事業期間は2019年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100152.html

■自動運転の実現に向けた信号情報提供技術等の高度化に係る研究開発

UTMS協会と住友電気工業が落札。2018年度に実施した、路側インフラからの信号情報提供に係る国内外の調査及び自動運転車両に特化した信号情報提供に係る路側インフラの高度化方策の検討結果を踏まえ、路側インフラの更なる機能・技術要件の詳細化、試作機の作成・検証などを踏まえた仕様書の見直しに係る検討を行う。

事業期間は2020年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100159.html

■ITS無線路側機等の路車間通信以外の手法による信号情報の提供に係る研究開発

UTMS協会、日本信号、パナソニックシステムソリューションズジャパン、オムロンソーシアルソリューションズが落札。2018年度に実施した調査結果を踏まえ、適用可能性の高い手法について機能・技術要件の詳細化を行うとともに、2020年度に予定しているモデルシステム整備に向けた仕様案の検討・作成を行う。

事業期間は2019年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100160.html

■自動運転技術に対する社会的受容性の醸成に向けた調査

住商アビーム自動車総合研究所が落札。自動運転技術の社会実装に伴い生じ得るリスクなどに関する調査を行い、自動運転技術を活用した物流・移動サービスの事業化に向けた課題を明らかにしていく。また、一般市民が参加するダイアログ形式のミーティングに加え、自動運転を利用する人だけでなく、すべての人々の社会的受容性の醸成を更に促進するため、社会への情報発信を含む双方向のコミュニケーション手法を確立することを目指す。

事業期間は2019年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD2_100182.html

■自動運転に係る海外研究機関との共同研究の推進に向けた連携体制の構築

東京大学が落札。自動運転に係る重要な技術分野において中心的であり、連携のメリットが期待できる研究機関との共同研究を見据え、連携テーマの探索や連携スキームの協議を促進する環境を整備する。

また、海外の産学官が連携した研究組織等とも対峙し、日本固有の課題にも対処できるような組織の確立に向け、自動車産業の国際競争力の強化に資する組織を立案し、準備委員会設立に向けた調整を行う。

事業期間は2022年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100161.html

■東京臨海部実証実験の実施

三菱電機、アイサンテクノロジー、インクリメント・ピー、住友電気工業、トヨタマップマスター、日本工営、パシフィックコンサルタンツ、パスコが落札。交通インフラから提供される信号情報やETCゲート通過・本線合流支援情報などを活用したインフラ協調型の技術によって自動運転を実現可能とする走行環境を構築し、実証実験を行い、技術や制度、社会的受容性に係る課題解決に向けた取り組みを促進し、実用化と普及の加速を図る。

臨海副都心地域における実証実験、羽田空港と臨海副都心などを結ぶ首都高速道路(一般道含む)における実証実験、羽田空港地域における実証実験を実施するほか、実証実験全体の運営・管理を行う。

事業期間は2020年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100148.html

■自動運転の実現に向けた情報発信力の強化に係る調査

コングレが落札。自動運転の開発、導入における情報発信力の強化の重要性に着目し、ウェブサイトなどを活用した情報発信やワークショップの開催など、自動運転において取り組む研究開発内容の適切な情報発信計画を提案・検証し、今後の研究開発の推進や方向性検討などに資するフィードバックと分析結果を得る。

事業期間は2020年度までとなっている。

詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100147.html

■【まとめ】自動運転実現に向け技術開発や調査は着実に進展

同期間中ではこのほか、「自動運転及び運転支援による交通事故削減効果の見える化」の公募が9月27日に締め切らており、採択結果待ちの状況となっている。

今回の案件の中で、特に注目すべきなのが東京臨海部実証実験だ。上記案件は三菱電機ら8社がV2I関連の実証を行う内容だが、東京臨海部実証実験そのものには国内外の自動車メーカーや自動車部品メーカー、大学など計28機関が参加しており、100台規模の車両で実証を進めることとしている。

自治体や民間主導による実証実験と合わせ、着実に自動運転実現に向けた技術革新や調査、社会受容性は高まってきている。今後公募される事業についても引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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