MaaS推進に積極的な自治体まとめ ソフトバンク最強説

次世代モビリティサービスで公共交通の課題解決へ

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研究開発や実証実験が加速するMaaS(Mobility as a Service/移動のサービス化)。民間では新規参入も相次ぎ、市場規模が急拡大の様相を呈している。

しかし、MaaSに力を入れるのは民間だけではない。公共交通に課題を抱える自治体も熱を入れ始めており、官民連携のもとさまざまな実証などに着手する例が増加してきた。

今回は、MaaS推進に積極的な自治体をピックアップし、その取り組みについて調べてみた。

(※本記事で紹介している事例以外で自治体との実証実験に取り組んでいる事業者様がいらっしゃいましたら、編集部までご連絡下さい)

■愛知県豊田市(&モネ・テクノロジーズ)

豊田市とモネ・テクノロジーズは2019年3月、自動運転社会を見据えた次世代モビリティサービスに関する業務連携協定を締結した。

自動運転社会に向け、次世代モビリティサービスに関する先進的な技術開発や実証実験を通して誰もが安全・快適に移動できるまちづくりを推進することを目的としており、次世代モビリティサービスの実装に向けた実証実験の実施、地域の発展に貢献する次世代モビリティサービスの高度化の検討などに取り組むこととしている。

これに先立ち、同年2月末からモネのプラットフォームを活用したオンデマンドバス「おばら桜バス」の運行実証実験を開始している。同バスはこれまで電話のみで予約を受け付けていたが、モネのプラットフォームを導入することで、スマートフォンの専用アプリから手軽に予約することができるようになる。

また、バス車内にはタブレットを設置し、予約状況に応じた最適な運行ルートをドライバーに提示するほか、バスの運行管理者は、専用の管理者画面から運行状況を確認することが可能という。

今後、押すだけでオペレーターから利用者へ電話がかかり、そのまま予約ができる予約専用のボタン型デバイスや、クラウドベースの音声サービスである「Amazon Alexa」搭載デバイスから音声で予約手続きを行う仕組みなどを検証する予定だ。

【参考】豊田市とモネの連携については「MONET Technologies、豊田市と業務連携協定 トヨタとソフトバンクの共同出資会社」も参照。

■広島県福山市(&モネ・テクノロジーズ)

福山市とモネ・テクノロジーズは2019年3月、自動運転社会を見据えた次世代運行サービスに関する業務連携協定を締結した。

IoTやAI(人工知能)など先端技術を活用した次世代運行サービスを通じて地域課題を解決し、新たなまちづくりや地域活性化のための取り組みなどを連携して行うことで、住民サービスの向上に寄与することを目的としている。

具体的には、スマートシティの実現に向けた次世代運行サービスの実証実験に関すること、先端技術を活用した次世代運行サービスによる地域活性化に向けた取り組みに関すること、自動運転社会を見据えた新たなサービス施策の検討に関することなどに取り組むこととしている。

両者は本協定に基づき、同市服部学区を対象に「服部学区 乗合タクシー」を運行する実証実験を2019年3月から5月まで実施している。この実証実験では、通院や買い物などの移動に乗合タクシーを活用し、効率的な運行方法や利便性などを検証する。

【参考】福山市とモネの連携については「ソフトバンク・トヨタ共同出資のMONET、広島県福山市と連携協定」も参照。

■滋賀県大津市(&ソフトバンク)

大津市とソフトバンクは2019年4月、スマートシティの推進などの分野において連携・協力し、地域社会の発展に寄与することを目的とした協定を締結した。

次世代モビリティサービスに向けた「MaaS」の推進をはじめ、スマートシティの推進、その他両者が協議により必要と認める事項に関し協力体制を構築していく。

同市は2019年2月にも、ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社MONET Technologies(モネテクノロジーズ)と次世代オンデマンドモビリティサービスの提供に関し連携することを発表しており、同市の越直美市長は会見で「ソフトバンクが加わるモネ・テクノロジーと自動運転やMaaSを進めており、今後、より広い意味でスマートシティを作っていければと思う。連携によって、大津市で新しい時代のまちづくりを目指す」と述べている。

このほかにも、遊休スペースを活用した駐車場シェアリングサービスを手掛けるakippaとの連携協定締結や、自動運転バスの実用化に向けた京阪バスとの協定、道の駅「妹子の郷」を活用した自動運転サービスの実証実験などさまざまな取り組みを推進しており、新たな技術やサービスを活用した地域課題の解決に積極的な姿勢をうかがわせている。

■岐阜県岐阜市(&ソフトバンク)

岐阜市とソフトバンクは2019年2月、未来に向けて持続可能で成長する都市づくりを目指し、地域活性化と市民サービスの向上に寄与することを目的とした包括連携協定を締結した。両者は以前からプログラミング教育の推進や人材育成などの分野で相互交流・協力を行っており、本協定の締結により、相互の連携を一層強めることとしている。

具体的には、教育や子育て支援や観光振興・観光情報の発信、防災・減災および発災時の対応など幅広い分野で協力体制を構築することとしており、この中にMaaSも含んでいる。

また、同市はモネ・テクノロジーズとも次世代オンデマンドモビリティサービスの提供に向けた連携を行っている。

【参考】岐阜市とソフトバンクの取り組みについては「岐阜市とソフトバンク、キャッシュレスやMaaS事業で包括連携協定」も参照。

■神奈川県横浜市(&DeNAやソフトバンクなど)

横浜市とソフトバンクは2019年1月に包括連携協定を締結し、ICTを活用した地域における移動手段の充実に関する取り組みについて協議を進めていた。この流れで、同年2月にモネ・テクノロジーズとの連携を開始しており、自動運転社会の実現を見据えた次世代のオンデマンドモビリティサービスの提供に向け関係を深めている。

同年3月には、モネの配車プラットフォームを活用したオンデマンドバスの実証実験を行っており、地域住民をモニターにスマートフォンアプリから予約してエリア内を巡回できるオンデマンドバスを活用し、運用方法や利便性を検証した。

モネはこの実証実験の結果を踏まえ、オンデマンドバスの実証エリアや時間帯の拡大など、より便利なモビリティサービスの実現に向け各所と連携して取り組んでいく方針だ。

同市はこのほか、2017年4月に株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)との包括連携協定などに基づき、地域交通課題の解決を目指した「自動運転プロジェクト」を立ち上げているほか、一般社団法人次世代モビリティ協会らが推進するパーソナルモビリティツアー実証実験推進協議会にも参加し、セグウェイを活用した新たな移動手段の実証などにも取り組んでいる。

【参考】関連記事としては「MONET Technologies、横浜でオンデマンドバスの実証実験」も参照。

■神奈川県鎌倉市(&ソフトバンク)

鎌倉市とソフトバンクは2019年3月、次世代モビリティーサービスに向けたMaaSの推進やスマートシティの実現に向けた検討など、複数の分野にわたる連携と協力に関する包括協定を締結し、ICTを利活用した官民連携による社会的課題の解決に向けた取り組みを幅広く検討していくこととしている。

具体的には、次世代モビリティーサービスに向けたMaaSの推進や、スマートシティの実現に向けた施策の検討、テレワーク・ライフスタイルの推進、ICTを活用した教育の振興、5G活用を見据えたモバイルのエリア整備推進などに取り組む。

【参考】関連記事としては「ソフトバンク、鎌倉市とMaaS推進やスマートシティ実現で協定」も参照。

■長野県伊那市(&モネ・テクノロジーズ)

道の駅「南アルプスむら長谷」で自動運転サービスの実証実験などを行っている伊那市は、MaaS分野にも力を入れているようだ。

2019年2月に次世代のオンデマンドモビリティサービスの提供に向けモネ・テクノロジーズと連携を開始したほか、2019年3月には、株式会社オリエンタルコンサルタンツとAI 最適運行・自動配車サービス(ドアツードア乗合タクシー)の導入に向けた実証実験に着手している。

株式会社未来シェアが開発した、リアルタイムに需要に即した乗合い車両の最適な配車決定を完全自動で行うシステム「SAVS(サブス)」を活用。乗客の乗降希望位置や車両の運行状況をもとに、最も効率的な配車をAIが判断し、タ クシー車内のタブレット端末を通じて自動でドライバーに送迎の指示をする。2019年には基礎調査を進め、2021年の本格運行を目指す方針だ。

このほか、同市は自転車の活用推進を目指し自転車活用に係る推進計画の策定を進めており、これに先立つ形で、民間レベルで組織する「伊那市自転車計画策定準備委員会」の主催によるオープン勉強会「自転車とMaaS」なども開催されている。官民協働でMaaSを推進しているようだ。

■静岡県(&JRグループなど)

都道府県単位では、静岡県がMaaS分野に積極的だ。2018年4月に、全国のJRグループ6社と地方自治体・観光事業者などが一体となって取り組む国内最大規模の観光キャンペーン「静岡デスティネーションキャンペーン」を開始し、観光型MaaSの実証実験に着手している。

また、県内では、静岡市の後援のもと「居住者を対象としたMaaS実証実験」が2019年2月に実施されている。公立はこだて未来大学、産業技術総合研究所、名古屋大学、静岡鉄道株式会社が実施主体で、経路検索サービス「駅すぱあと」を提供する株式会社ヴァル研究所や株式会社未来シェアの参画のもと、相乗りタクシーと鉄道・路線バスの複合経路検索サービスを活用してMaaSシステムの体験利用や相乗りタクシーの無料体験乗車などを行った。

■【まとめ】交通課題解決に向け連携加速 ソフトバンクらIT系がカギを握る

自治体におけるMaaSの取り組みにおいては、パートナーとしてソフトバンク(モネ・テクノロジーズを含む)が大活躍しているようだ。MaaSの実現にはプラットフォーム系IT企業の存在が必要不可欠であり、ヴァル研究所や未来シェアといったモビリティ分野に力を入れた企業の活躍も目立つが、圧倒的なICT総合力を誇るソフトバンクはMaaSを幅広い分野に応用可能であり、自治体が抱えるさまざまな社会課題の解決に対応できるポテンシャルを持っている。

年々深刻化する地方の公共交通問題。課題解決に積極的に取り組む自治体と受け身の自治体格差は今後拡大していくものと思われる。ソフトバンクらの存在はますます重要性を増し、今後、自治体との連携が加速していく可能性が高そうだ。

【参考】モネ・テクノロジーズについては「やっぱりトヨタとソフトバンクの組み合わせが最強な件 MaaS系会社で最有力」も参照。

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