
米EV大手Tesla(テスラ)のロボタクシー事業が、商用開始から1年を経てもなお稼働約20台にとどまっている。テキサス州オースティン全域への無人拡大という前進の一方で、規模は依然として小さい。
2025年6月に監視員付き10台規模で始まったサービスは、2026年1月に運転席無人での運行を開始し、6月にはオースティン都市圏の全域へと広がった。だが稼働台数は約20台どまりで、米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)が全米でおよそ3,000台を走らせ週50万回の有料運行をこなす規模とは、大きな開きがある。
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■テスラ ロボタクシー1周年でも稼働は20台
テスラのロボタクシー事業が、2026年6月で商用開始から1周年を迎えた。1年という節目にもかかわらず、実際に客を乗せて走る無人車両は約20台にとどまる。この数字こそが、テスラのロボタクシーの現在地を最も端的に物語っている。
サービスが始まったのは2025年6月。テキサス州オースティンで、運転席に安全監視員を乗せた状態でのスタートだった。立ち上げ当初の規模は10台ほど。そこから2026年1月に運転席無人での運行へと踏み込み、台数も少しずつ増やしてきた。しかし1年を経た現在も、無人で稼働する車両はおよそ20台。むしろ4月下旬に累計25台でピークを打った後は、減少に転じている。
商用サービスとして見れば、この規模感の乏しさは否めない。エリアの拡大ばかりが先行し、肝心の走る車の数が伴っていない。1周年という言葉の華やかさと、20台という現実。両者のギャップが、この事業の難しさを浮かび上がらせている。
1周年で稼働20台という数字は、技術発表の派手さと商用化の地味な現実の落差を映す。エリアを広げても車がなければ事業にはならない。テスラの真価が問われるのはこれからだ。
【参考】関連記事としては「テスラ「自動運転」を中国で諦めた?「支援運転」に改名へ 抱える2.3兆円の訴訟爆弾」も参照。
■オースティン全域へ無人拡大、それでも増えない台数
2026年6月3日、テスラはオースティン都市圏の全域で無人ロボタクシーサービスを開始したと発表した。テスラ公式のロボタクシーアカウントはXで「Unsupervised Robotaxi now in the entire Austin Metro area」と投稿し、全域への拡大を伝えた。運行区域は約245平方マイルに広がり、オースティン・バーグストロム空港への発着も対象に入った。
数字の上では大きな前進に見える。サービス開始時の運行区域は約20平方マイルだったから、1年で約12倍に膨らんだ計算になる。地図の上では、確かにテスラのロボタクシーはオースティンを覆い尽くした。
だが、その広大なエリアを走る車は約20台のまま。エリアは12倍に広がったのに、車の数はほとんど変わっていない。245平方マイルを20台で受け持つということは、利用者から見れば配車までの待ち時間が延び、そもそも車をつかまえられない場面が増えることを意味する。地図を大きく描いても、走る車がなければ、それは実用的なサービスとは言いがたい。
【参考】関連記事としては「G7サミット反対デモでテスラ車が炎上 金持ちへの怒りがテスラに向かう」も参照。
■ダラス・ヒューストンも横ばい、横展開の足踏み
台数が伸び悩んでいるのは、オースティンだけの話ではない。テスラは2026年4月にダラスとヒューストンでも無人ロボタクシーの運行を始めたが、こちらはさらに小規模だ。ダラスは3台、ヒューストンは6台。立ち上げ以来、いずれもほとんど増えていない。
テキサス3都市を合わせても、無人で稼働する車両は合計で約20台規模。本来であれば、オースティンで得た経験を他都市へ広げ、台数を積み上げていく段階にあるはずだ。だが現実には、新しい都市を増やしても各地で数台ずつが走るにとどまり、本格展開には至っていない。
多都市への横展開は、ロボタクシー事業を商業的に成り立たせるうえで避けて通れない。その入り口で足踏みしている現状は、テスラのロボタクシーがまだ実証段階の延長にあることを示している。
【参考】関連記事としては「【レビュー】テスラ・Waymo・日産の自動運転車に乗った人の感想 快適、怖い、それとも?」も参照。
■週50万回のWaymo、規模で開く差
テスラの20台という数字が際立つのは、先行する競合と並べたときだ。自動運転タクシー市場を切り開いてきた米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)は、全米でおよそ3,000台のロボタクシーを走らせ、週に50万回の有料運行をこなしている。2025年12月に米運輸当局へ提出された資料では、保有台数は3,067台と報告されている。
規模の差は、州当局の公式データでも裏づけられる。2026年5月にテキサス州が公表した認可事業者の登録では、無人配車を認められた車両はテスラが42台、Waymoが577台。同じ州の中だけで、10倍以上の開きがある。テスラが1周年を迎えた今も、その差は縮まるどころか広がっている。
ロボタクシー市場における競争は、地図の広さではなく、実際に走る車の数と運行回数で決まる。週50万回という数字は、Waymoのロボタクシーがすでに日常の移動手段として機能し始めていることを意味する。20台のテスラと3,000台のWaymo。この落差が、自動運転タクシー市場における両社の立ち位置を物語っている。
【参考】関連記事としては「テスラ自動運転FSD AIと会話しながらドライブできる夢の機能を年内実装へ」も参照。
■まとめ:FSD完成待ちのテスラ、20台の先にあるもの
では、なぜテスラは台数を増やさないのか。鍵を握るのが、完全自動運転ソフトFSDの次期バージョンだ。イーロン・マスク氏は、FSDの次バージョンであるv15が完成するまで、ロボタクシーの本格的な増台を見送る方針を示している。本格拡大の時期として挙げているのは、2026年末から2027年初頭にかけてだ。
現在ロボタクシーで動いているのはFSDのv14.3で、v15はそれを土台から作り直す大幅な改良と位置づけられている。マスク氏は、近く大きな改良が控えていると分かっているのに、現行のソフトのまま無人車両を大量に走らせるのは合理的でない、という立場だ。つまり20台という少なさは、技術的な制約というより、あえて規模を抑えている戦略的な保留という側面が強い。
もっとも、エリアだけを先に広げ、車の数を後回しにする今の進め方には、地図が実態を伴っていないという批判もつきまとう。20台の先に本当に数千台規模の展開が待っているのか。それはFSD v15がいつ、どれだけの完成度で届くかにかかっている。1周年の節目に20台という現実を抱えたテスラが、次の1年で地図にふさわしい数の車を走らせられるか。ロボタクシー市場の行方を占ううえで、その一点が問われている。













