ヤマトのトラック、自動運転化させ「ダブル連結」も視野

保安基準の明確化や標準化を要望

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出典:ヤマト運輸公式プレス向け素材

物流大手のヤマト運輸が、自動運転機能を搭載したダブル連結トラックの実用化を視野に入れていることが判明した。幹線における無人輸送能力を強化し、持続可能な物流事業を実現していく構えだ。

国内では現在高速道路におけるレベル4トラック実用化に向けた取り組みが進められているが、自動運転ダブル連結トラックはさらに先を見越した無人輸送ソリューションとなりそうだ。

ヤマト運輸の取り組みとともに、国内幹線輸送の動向について解説していく。

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■ヤマト運輸の取り組み

国の検討会で小菅会長が発表

ヤマト運輸の方針は、2025年7月に開催された「第3回 2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会」において、同社の小菅泰治取締役会長が示した資料から明らかとなった。

▼2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_tk_000001_00002.html
▼第3回 配付資料
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000278.html
▼小菅泰治会長のプレゼンテーション資料
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001900243.pdf

同検討会は、2026年度からの「総合物流施策大綱」に対し、物流施策の在り方について提言を行う目的で設置されたものだ。

資料によると、物流業界における人手不足への対応に向け、幹線領域における早期自動運転化が重要である一方、自動運転車両は現行車両より高価格が想定されるため、事業性担保の観点から台当たり輸送能力の強化が必要としている。

その解決策として同社が注目しているのが、自動運転におけるダブル連結トラックの活用と、トレーラー部への駆動装置搭載だ。

ダブル連結トラック・トレーラーを活用することで輸送能力を強化し、高額な自動運転車両の活用に対応していく。また、自動運転かつダブル連結の早期実現に向けては、トレーラーヘッドだけではなくトレーラー部への駆動能力搭載(EV化)も必要としている。トレーラー部へ必要馬力を分散することで、トレーラーヘッドの高馬力化を抑制するためだ。

出典:国土交通省公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

この自動運転ダブル連結トラック実現に向け、駆動装置を有するトレーラーに関する保安基準の明確化や、幹線自動運転領域におけるダブル連結および駆動装置搭載型トレーラーの標準化を要望している。

現在、高速道路におけるレベル4相当の自動運転トラック実現に向けた取り組みが官民協働のもと進められているが、ヤマト運輸はそこにダブル連結トラック化を推進することで事業継続性を確保していく考えだ。

自動運転×ダブル連結トラックにより、1台の自動運転車で2台分の輸送を実現できれば、自動運転車2台導入時に比べ間違いなくコストは低下する。20メートル超の連結モビリティを無人運行するにはさらに高度な技術が必要となるが、全体最適化を図る上での一つの解として今後注目を高めていくのかもしれない。

過去には走行実証も

出典:ダイナミックマッププラットフォーム社プレスリリース

ヤマト運輸は2025年2月、ダイナミックマッププラットフォーム、BIPROGY、NEXT Logistics Japanとともに、自動運転を支援するデータ連携システム開発に向け新東名高速道路駿河湾沼津SA~浜松SA間で走行実証を行っている。

過去には、ディー・エヌ・エーとともにラストマイル向けの自動運転トラック実証として「ロボネコヤマト」の開発に取り組んでいたが、それ以後、自動運転開発事業者とパートナーシップを組んだ取り組みはオープンにされていない。

今後、自動運転開発事業者と直接手を組む機会が必要になると思われるが、こうした動向にも注目したい。

【参考】ヤマト運輸の動向については「ヤマト運輸、「自動運転配送」に参入へ 日野トラック系とタッグ」も参照。

■国内幹線輸送の動向

ダブル連結トラックの規制が緩和

ダブル連結トラックは、10トンクラスの通常の大型トラックの後ろに荷台(トレーラー)を連結したものだ。1人のドライバーが2台分の荷物を輸送することができるため、ドライバー不足対策の一環として近年規制緩和が進められている。

一般道路においては、特段の許可なしで走行できるのは車両の長さ12メートルまでとされており、それを超えるものは特殊車両として通行許可を得なければならない。高速道路においては、長さの特例としてセミトレーラ連結車は16.5メートル、フルトレーラ連結車は18.0メートルを最高限度とし、これを超える車両は特殊車両通行許可申請が必要となる。

フルトレーラに関しては、以前は19メートルを上限に特殊車両として許可していたが、2010~2012年に特区制度を活用して実施した走行実証で特段の弊害が生じないことが確認され、2013年から最大21メートルに規制が緩和された。

出典:国土交通省公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

2016年からは最大25メートルのダブル連結トラックの通行許可に向けた実証が始まり、日本梱包運輸倉庫やヤマト運輸、福山通運、西濃運輸らが参加し、新東名高速道路を中心に実証を重ねた。

その結果、2019年に許可基準を緩和し、新東名高速道路を中心にダブル連結トラックの本格導入が開始された。対象路線はその後も順次拡充されており、2024年時点で総延長約6,330キロとなっている。

つまり、現在、走行可能な道路は限られるものの、25メートルまでのダブル連結トラックが特車許可のもと走行可能になっているのだ。

車両要件としては、衝突被害軽減ブレーキまたは自動車間距離制御装置、車両安定性制御システム、車線逸脱警報装置、後部視界を確保するための被けん引車後端のカメラシステム及びモニター、車両の長さなどの文言を表示するプレートなどを搭載・装着しなければならない。

後続車無人隊列走行技術の開発も

ダブル連結トラックと近いものに、自動運転技術を活用した後続車無人の隊列走行がある。先頭車両は有人運転だが、この先頭車両の挙動に後続車両が自動連動し、隊列を組んで走行する仕組みだ。物理的なけん引ではなく、自動運転技術を活用した通信システムによってけん引するため、電子けん引とも言われる。

効果としては、ダブル連結トラックに近い。一人のドライバーによって二台分の荷物を運ぶことができるためだ。違いは、後続車が単独でも走行可能かどうかだ。

ダブル連結トラックは二台目に相当するものが運転席のないトレーラーのため、単独では走行できない。一方、隊列走行の二台目は特別な自動運転機能を備えたトラックのため、手動運転も可能だ。

その意味では、柔軟な運用ができる後続車無人隊列走行はダブル連結トラックの上位互換となり得る存在だが、ヤマト運輸の小菅会長が示す通り、その分高額となる。

自動運転ダブル連結トラックと比較した場合は判断が難しい。自動運転ダブル連結トラックは、レベル4の自動運転トラックに物理的にトレーラーを結びつける形となる。レベル4自動運転トラックは後続車無人隊列走行技術を積んだトラック2台より高額となる可能性が考えられるが、先頭車両も無人化できるメリットが大きい。

完全無人で2台分の輸送を実現するか、1~2人のドライバーで柔軟な運行を可能とする後続車無人隊列走行を選択するか……など、将来的には共存・競合する技術・サービスとなっていくのかもしれない。

隊列走行技術は、官民ITS構想・ロードマップにおいて2017年度に実現目標が掲げられ、後続車有人隊列走行、そして後続車無人隊列走行の実証が積み重ねられた。

2021年2月、新東名高速道路の一部区間で後続車無人隊列による走行に成功したことが発表した。後続車の助手席に保安要員を乗せた状態で、3台の大型トラックが時速80キロ、車間距離約9メートルの車群を組んで走行することに成功したという。

ロードマップでは、高速道路におけるトラックの後続車無人隊列走行の商業化を2022年度以降に実現することを目指すとしているが、今のところ大きな動きはないようだ。

【参考】トラックの後続車無人隊列走行については「トラックの後続車無人隊列走行、新東名高速で実現!豊田通商が国の事業として実施」も参照。

トラックの後続車無人隊列走行、新東名高速で実現!豊田通商が国の事業として実施

官民協働でレベル4自動運転トラック実用化を加速中

後続車無人隊列走行に代わって登場したわけではないが、現在国が力を入れているのが高速道路におけるレベル4自動運転トラックの実用化だ。

デジタルライフライン全国総合整備計画において、早期に取り組むアーリーハーベストプロジェクトとして高速道路における自動運転車優先レーンの設定が盛り込まれた。

2024年度中に新東名高速道路の一部区間において総距離100キロ以上の自動運転車優先レーンを設定し、自動運転トラックの運行の実現を目指す考えだ。

新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間の第1通行帯を自動運転車優先レーンとして設定し、路側インフラからの情報提供やデータ連携基盤群の整備などを進める。走行実証含め2024年3月に各種実証が始まっており、自動運転トラックの安全・円滑な走行をはじめ、自動運転車を想定した複数社間の共同輸送の実現を目指す。

自動運転ダブル連結トラックの道を切り拓くには、この通常のレベル4トラックがまず実用化されなければならない。重量・ボディサイズの大きいトラックの自動運転化は容易ではないが、ダブル連結トラックはさらに重量も車長も2倍ほどになる。

一度本線に入ってしまえば通常レベル4と大差ないかもしれないが、PAなどから本線への合流は難易度が相当高い。特別な合流支援システム、あるいは仕組みが必要となりそうだ。

【参考】自動運転車優先レーンについては「高速道に「自動運転車優先レーン」!深夜時間帯に限定、新東名で」も参照。

高速道に「自動運転車優先レーン」!深夜時間帯に限定、新東名で

■レベル4自動運転トラックの開発動向

T2など4陣営が開発中

今のところ、日本国内で高速道路における自動運転トラック開発を表舞台で進めているのは3事業者+1事業者だ。

三井物産系のT2は、AI企業Preferred Networksの技術提供のもと2022年から開発を進めている。2025年6月、神奈川県綾瀬市から兵庫県神戸市までの高速道路区間約500キロを走破する実証に成功したと発表した。

レベル2+による走行だが、夜間から明け方という視認性が悪い条件のもと、該当区間における自動運転率は99%に達したという。ほぼ無介入で、自動運転に限りなく近い状態で長距離を走破したと言える。

2024年11月には、レベル4トラックによる幹線輸送サービス実現に向け、「自動運転トラック輸送実現会議 〜L4 Truck Operation Conference〜」を設立した。佐川急便やセイノーホールディングス、日本貨物鉄道、日本郵便、福山通運といった輸送事業者をはじめ、三井住友海上火災保険、三井倉庫ロジスティクス、三菱地所、 KDDIが参加している。

また、F-LINE系の味の素、ハウス食品グループ本社、カゴメ、日清製粉ウェルナ、日清オイリオグループをはじめ、パナソニックグループや大王製紙、日清食品、東邦ホールディングス、江崎グリコ、キユーピー、住友化学、住化ロジスティクス、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーなど、荷主サイドとの輸送実証にも着手している。

パートナーシップの輪は国内随一の規模に膨れ上がっており、実用化の際の商業展開を見据えた取り組みはさらに加速していきそうだ。

ティアフォーも参戦、E2Eモデルの開発に着手

国内自動運転開発スタートアップの代表格・ティアフォーもレベル4トラックの領域に参戦し、2024年度から新東名高速道路で実証に着手している。

独スタートアップdriveblocksの技術を活用し、高精度地図を必要としない認識技術のもと、長距離・広域の高速道路環境に対応できるシステム開発を進めている。

2025年3月には、同業のPlusとの提携を発表した。従来よりも広範な運行設計領域を可能とする次世代自動運転システムの開発に共同で取り組む。End-to-End(E2E) AIを活用した「自動運転2.0」を実現し、さまざまな車種・環境に対応可能な自動運転システムの構築を目指す方針だ。

先進モビリティやロボトラックも

後続車無人隊列走行技術の確立に寄与した先進モビリティも、レベル4トラック実現に向け動き出している。

同社と豊田通商、日本工営、みずほリサーチ&テクノロジーズの4社は2024年11月、商用車メーカー4社とともに新東名高速道路で自動運転技術を用いた大型トラックによる走行実証を開始したと発表した。

国が推進するRoAD to the L4の「高速道路における高性能トラックの実用化に向けた取り組み」のもと2021年度から開発を進めており、プロジェクトの最終年度となる2025年度は、サービスエリアにおける発車から本線の合流・車線変更、目的地点への駐車までをより実際の走行に近い形で検証するとしている。

このほか、レベル4トラック開発を進めていた中国系企業TuSimpleの共同創業者の一人Nan Wu 氏が2024年、同社の事業を引き継ぎ、日本国内で新会社ロボトラックを設立している。2025年3月、資金調達シードラウンドで東京大学協創プラットフォーム、PKSHAアルゴリズム2号ファンドなどから3億円を調達したと発表している。

2025年度に東京~名古屋間、2026年度に東京~大阪間におけるレベル4相当の実証を行い、2028年度に自社製品の上市を計画しているという。

【参考】自動運転トラック開発企業については「自動運転トラックの開発企業一覧【実用化時期・メリットも解説】」も参照。

自動運転トラックの開発企業一覧【実用化時期・メリットも解説】

■【まとめ】開発パートナーはどの事業者に?

独自路線を歩むヤマト運輸が今後どの自動運転開発事業者と手を組むか……が目下の注目ポイントとなりそうだ。国内勢ではなく、海外勢と手を組む可能性もゼロではない。

すでに水面下で交渉や実証を進めているのか。これから具体的に着手するのか。物流分野の代表格だけに、同社の動向から目が離せないところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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