半導体分野で快進撃を続ける米NVIDIA。時価総額は3兆ドルを超え、アップルやマイクロソフトと世界トップを争う地位を確立した。伸びしろはまだまだ残っており、前人未到の4兆ドル突破も視野に入ってきた。
この伸びしろとなり得る分野の一つが自動運転だ。市場として開拓の余地が大きく、近い将来NVIDIAの事業の柱に成長することが期待される。
2024年6月に一度は時価総額で世界1位になったNVIDIA。同社の業績とともに、自動運転分野への関わりに触れていく。
【参考】関連記事としては「自動運転、米国株・日本株の関連銘柄一覧(2024年最新版)」も参照。
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■NVIDIAの業績
自動運転開発の波とマッチング
ゲーム機やパソコン向けのGPUを軸に業績を積み重ねてきたNVIDIA。2010年代以降はディープラーニングによるAI需要の高まりなどを背景に、同社の高性能SoCをはじめとしたソリューションが高評価され、さまざまな分野でシェアを拡大し始めた。
この最中、NVIDIAは2014年に高度GPU「Tegra K1」を発表し、自動車市場に本格参入した。従来のモバイル・プロセッサの10倍の処理能力を誇り、円滑なADASコンピューティングを実現するソリューションだ。
翌2015年には、自動運転開発を視野に収めた「NVIDIA DRIVE」を発表した。今につながるDRIVEシリーズの初代だ。ここから自動運転向けSoCの開発が大きく加速していく。
この年は、グーグルが世界初の自動運転車による公道走行を実現した年でもあり、ここから世界的な自動運転開発競争が本格化する。開発スタートアップが次々と立ち上がり、既存メーカーも開発に本腰を入れ始めた。この波とNVIDIAの取り組みが見事にマッチし、早い段階で大きな市場シェアを獲得した。
世界的なAI開発加速で業績急上昇
2019年1月期の売上高は117億ドルと100億ドルを突破し、その後も2020年1月期109億ドル、2021年1月期は167億ドル、2022年1月期269億ドル、2023年1月期269億ドル、2024年1月期609億ドル――と順調に業績は右肩上がりを続けている。
2025年1月期の第1四半期は260億ドル、第2四半期は300億ドルで、四半期として過去最高記録を更新している。通年でも前年を上回ることはほぼ確定の状況だ。
株価の伸びはテスラを上回る
その間の株価を見ていくと、2019年初値は150ドルほどだったが年末には230ドルを突破し、2020年末には500ドルを突破した。続く2021年も7月に800ドル台に達すると同社は1株を4株とする株式分割を行い、株価は200ドルほどに。その後も上昇を続け、2021年末には300ドルを突破した。
2022年はコロナ禍明けの経済対策の影響などで株価は低迷し、10月には一時110ドル台まで落ち込んだが、その後は上昇傾向が続いている。2023年初値は140ドルほどだったが同月中に200ドル台に回復し、5月に300ドル台、6月に400ドル台を突破した。
500ドル弱でスタートした2024年は、2月に800ドル台、3月に900ドル台、5月に1000ドル台、6月に1,200ドル台に達し、再び1株を10株とする株式分割を実施した。その後夏にかけ緩やかに下落したが再度上昇し始め、2024年10月21日時点で140ドル付近となっている。
2019年1月からの約5年間で株価は約40倍に跳ね上がっているのだ。参考までに、同期間に大きく数字を伸ばしたテスラ株は約11倍となっている。NVIDIAはテスラを大きく超える伸びを記録しているのだ。
この時点の時価総額は3兆4,638億8,000万ドルほどで、日本円で約520兆円となっている。時価総額トップのアップル3兆5,941億ドルに次ぐ僅差の2位だ。3位はマイクロソフトの3兆853億ドルで、3兆ドル企業はこの3社となっている。今のところ4兆ドルに達した企業は存在しない。
自動車セグメントはまだ小さいが……
セグメント別では、2024年1月期通年でデータセンターが売上高475億ドルで前年比217%増と大きな伸びを見せている。ゲームは同15%増の104億ドル、視覚化プラットフォームが同1%増の16億ドル、自動車が21%増の11億ドルとなっている。
恐らく、自動車セグメントには自動運転などの車載ソリューションが計上されており、自動車メーカーのクラウド向けの売り上げはデータセンターに計上されているものと思われる。同様に、製造過程のデジタルツイン向けは視覚化プラットフォームに計上されており、自動車産業全体で見れば相当な額に上るはずだ。
事実、2023年の発表では、2028年までの6年間におけるオートモーティブ事業の取引見込み額は110億ドルから140億ドルに増加するとしている。すでに自動車関連で100億ドルを突破しているのだ。
自動運転市場はまだ小さいが、今後その台数・規模が100倍、1,000倍……と大きく伸びていくことは間違いなく、車載ソリューションの需要は大きく伸びる。同時にデータセンターの需要も大きく伸びる。
また、自家用車においてもSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)化やコネクテッド化、そして自動運転化が進行し、NVIDIAソリューションの需要は膨大なものになっていくことが予想される。
自動車市場そのものが大きく伸びるかどうかは不透明だが、自動車の高度化・コンピュータ化が進行することでNVIDIAの需要が大きく高まっていくことは間違いなく、今後、NVIDIAの業績をさらに高める好材料となっていくはずだ。
自動運転分野におけるNVIDIAのシェアは非常に高く、このままライバル他社が伸び悩めば、自動運転市場の拡大とともにNVIDIA株は伸び続け、時価総額はさらなる高み、前人未到の「4兆ドル台」に到達するかもしれない。
【参考】NVIDIA株については「NVIDIA株、一段高へ期待感!車載半導体、自動運転向けで採用加速」も参照。
【参考】NVIDIAのデータセンター事業については「NVIDIAのデータセンター、自動運転開発の「全メーカーが採用」の衝撃」も参照。
■NVIDIAのソリューション
NVIDIA DRIVEが市場を席捲
自動運転分野におけるNVIDIA最大の武器はSoC(システムオンチップ)「NVIDIA DRIVE」シリーズだ。自動運転の頭脳を担うコンピュータの高速処理に欠かせない半導体ソリューションで、近年はBEVをはじめとした自家用車への採用例も増加している。
NVIDIA DRIVEは2015年に発表され、254TOPS( 1 秒当たり254 兆回の演算能力)を発揮する2019年発表のNVIDIA DRIVE Orin(オーリン)は現在自家用車や自動運転車などに広く搭載されている。
2022年発表のNVIDIA DRIVE Thor(トワー)は8ビット浮動小数点(FP8)をサポートし、システム全体のコストを削減しながら、1,000 INT8 TOPS/1,000 FP8 TFLOPS/500 FP16 TFLOPS のパフォーマンスを発揮するという。最大2,000TOPSの処理能力で、2025年販売のZeekrの量産車に初搭載される予定としている。
自動運転車に必要となるコンピュータアーキテクチャ、センサー セット、ソフトウェアをセットにしたNVIDIA DRIVE Hyperionも用意している。現行のHyperion は、DRIVE Orin ベースの AI コンピュータに12 台の車外カメラ、3 台の車内カメラ、9 台の車外レーダー、1 台の車内レーダー、12 台の超音波センサー、1 台の前面LiDAR、1 台のグラウンドトゥルースデータ収集LiDARで構成されている。
2027年に実用化予定のHyperion 9はDRIVE Thorをベースとし、レベル 3 の市街地走行やレベル 4 の高速道路走行を実現するという。
関連ソフトウェアも次々とソリューション化
ソフトウェア関連では、自動車用のオペレーティングシステム「NVIDIA DriveOS」やDriveOS 上で動作するミドルウェア「DriveWorks」、AI 支援による運転プラットフォーム「DRIVE Chauffeur」、搭乗者用のインテリジェントサービス・アシスタントソリューションの「DRIVE Concierge」などがある。
DriveOSは、自動車認証機関 TÜV SÜD認定の業界標準の安全性とセキュリティを誇り、高度な AI 推論や高性能コンピュータービジョン、高度なグラフィックス、ハイエンドオーディオ、複雑な安全性とセキュリティのユースケースなど、最先端の自動車製品の要件を満たすよう設計されているという。
DRIVE ChauffeurはNVIDIA DRIVE AV SDK を基盤とする AI 支援運転プラットフォームで、高速道路と市街地の両方において自律走行をサポートする。
このほか、仮想環境でセンサーの認識や関連する AI ソフトウェアの大規模シミュレーションを可能とする「NVIDIA Omniverse Cloud Sensor RTX」も2024年6月に発表している。
NVIDIA RTXレイトレーシングおよびニューラルレンダリングテクノロジーを搭載しており、ビデオ、カメラ、レーダー、LiDARからの現実世界のデータと合成データを組み合わせることで、シミュレートされた環境の作成を加速させることができ、自動運転をはじめヒューマノイドや産業用マニピュレーター、移動ロボットなどにも利用できるという。
【参考】DRIVE Conciergeなどについては「拡大を続けるNVIDIAの顧客網!自動車産業、物流・小売業も」も参照。
■NVIDIAの近年の動向
2025年1月期中の発表
BYD、XPENG、GAC(広州汽車)系AION Hyper、Nuro などが、次世代車両群に Blackwell GPU アーキテクチャを搭載したNVIDIA DRIVE Thorプラットフォームを採用したことを発表した。
また、LucidとIM Motorsが、欧州市場をターゲットにした車両モデルにNVIDIA DRIVE Orinプラットフォームを使用していることも明らかになったという。
生成AI関連では、CerenceやGeely、Li Auto、MediaTek、NIO、SoundHound、Tata Consultancy Services、Waabi、Wayveなど多数のパートナー企業が、 NVIDIA の生成 AI テクノロジーを使用して車内エクスペリエンスの変革に取り組んでいるという。
Cerenceは自動車専用の LLM「CaLLM」を基盤にAI アシスタントシステムの強化を図っている。Wayveは、NVIDIA 上で動作する自動運転開発用の生成世界モデル「GAIA-1」を発表している。Geelyは生成 AI とLLMテクノロジーにより、自然言語処理や対話システム、予測分析をインテリジェントナビゲーションと音声アシスタントに使用し、よりスマートでパーソナライズされた運転体験を提供するとしている。
自動運転向けAIを構築するWaabi は、自律走行トラックソリューションに NVIDIA DRIVE Thor が提供する生成 AI 機能を活用しているという。
BYD Electronics、Siemens、Teradyne Robotics、Alphabet傘下のIntrinsicが、自律型ロボットアームやヒューマノイド、移動ロボット向けにNVIDIA Isaac Roboticsプラットフォームを採用したと発表した。
Isaac プラットフォームには、ロボットメーカーが自社のテクノロジースタックに統合するため現在利用可能なNVIDIA アクセラレーションライブラリ、AI 基盤モデル、シミュレーションテクノロジーの各スイートが搭載されている。
2024年1月期中の発表
GWM(Great Wall Motors)、ZEEKR、Xiaomi が、インテリジェントな自動運転システム強化に向けDRIVE Orin を採用したほか、Li AutoがDRIVE Thorを集中型車載コンピューターとして採用したという。
台湾Foxconnとは、次世代 NVIDIA DRIVE Hyperionプラットフォームと NVIDIA DRIVE Thorシステムオンチップを使用し、世界市場向けの次世代EV開発に向けた協力関係をさらに強化した。
メルセデス・ベンツは、自動車の製造、生産施設の計画、設計、構築、運用を支援するため、NVIDIA Omniverse を使用してデジタルツインを作成していると発表した。
Xpengは、新型「G6 Coupe SUV 」にNVIDIA DRIVE Orinを搭載し、インテリジェントな先進運転支援システムを強化するという。
MediaTekはNVIDIAと提携し、AI とグラフィックス向けの新しいNVIDIA GPUチップレットIPを統合したOEM向けの車載システムオンチップを開発すると発表した。
BYDはNVIDIA DRIVE Orinの採用を拡大し、次世代の Dynasty および Ocean シリーズの複数モデルに導入するとしている。
2023年1月期中の発表
NIO、Li Auto、JIDU、Human Horizonsが DRIVE Orinコンピューティングプラットフォームを使用した新型車両の計画をそれぞれ発表したほか、Pony.aiが自動運転トラックとロボタクシーのライン全体で DRIVE Orin を使用することを発表した。
ボルボカーズがNVIDIA DRIVE Orin とXavier を搭載したEV「EX90」、Polestar がNVIDIA DRIVEプラットフォームで動作する新 SUV 「Polestar 3 」をそれぞれ発売した。
Hozon Auto(合衆新能源汽車)の Neta ブランドが、NVIDIA DRIVE Orinをベースに自動運転とインテリジェント機能を実現する次世代EVを製造すると発表した。
■【まとめ】自動運転がNVIDIAを4兆ドル企業に押し上げる
自動運転開発企業や新興EVメーカー、そして自動車メーカーの多くがNVIDIAソリューションを使用しており、車両設計からソフト開発、自動運転開発、車載向け……とその用途も拡大を続けている。
画像解析技術をはじめ自動運転技術は他の分野へ応用可能なものも多く、市場のポテンシャルは良い意味で未知数だ。
自動運転がNVIDIAを4兆ドル企業に押し上げる原動力となるか、要注目だ。
【参考】関連記事としては「アメリカの自動運転最新事情(2024年最新版)」も参照。