Googleの自動運転車、実はトヨタを「開発初期」は採用 巨額売上のチャンス逃す

米国初の自動運転ライセンス、プリウスで取得



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

自動運転開発を手掛ける米グーグル系のWaymoが、第6世代となるWaymo Driverの概要とともに、フリートに追加する新車両のティザー画像を公開した。

そこに映し出されているのは、中国Geely系Zeekrの新モデルだ。クライスラー(FCA)のPacifica、ジャガー・ランドローバーのI-PACEに次ぎWaymoの自動運転タクシーに正式採用されるのは、トヨタではなくZeekrとなった。


なぜここでトヨタが出てくるの?――と思う方も少なくないだろうが、グーグルはもともとトヨタの車両を用いて研究開発していた経緯がある。グーグル・Waymoにとってトヨタ車は慣れ親しんだモデルであり、本来であれば本採用してもおかしくないはずだ。

もし、早い段階でトヨタがアプローチしていれば……というタラレバ論とともに、グーグルとトヨタの関係を見ていこう。

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■グーグル(Waymo)の自動運転開発

試験車両にプリウス採用

グーグルの自動運転開発プロジェクトが始動したのは2009年だ。米国防高等研究計画局(DARPA)主催の自動運転レースに参加していた優秀なエンジニアを次々と引き抜き、次世代技術の研究開発を行う「Google X」の事業として「Self-Driving Car」プロジェクトを立ち上げたのが振り出しだ。


プロジェクトには、Aurora InnovationNuroの創業者ら後に独立して活躍するエンジニアが多く関わっていた。

グーグルは、試験車両にトヨタ・プリウスを採用し、自動運転改造したプリウスで100 マイルのルートを 10 回以上自動運転する挑戦に着手した。なお、韓国メディアによると、プリウスのほかアウディTTやレクサスRX540hなども改造していたようだ。台数はプリウスが最多という。

米国初の公道走行ライセンス付与もプリウスだった

開発と並行し、自動運転車が公道で走行できるようロビー活動にも力を入れ、ネバダ州で法改正のもと2012年に走行が可能になった。同年、米国初となる自動運転車の公道走行ライセンスが改造プリウスに発行された。米国初、もしかしたら世界初の自動運転車の公道走行ライセンスは、プリウスに付与されていたのだ。


その後グーグルはオリジナル車両の開発を進め、小型2シーターの「Firefly」を開発し、2015年にテキサス州オースティンの公道で自動運転を実現する。

WaymoはFCAをパートナーに……

ここまでの技術・知見をもとにプロジェクトを分社化したのがWaymoだ。Waymoはその後、FCA(フィアット クライスラー アメリカ)とパートナーシップを結び、「Pacifica(パシフィカ)」ミニバンを最初の量産自動運転タクシーに採用した。

FCAによると、2016年にまず100台、2017年に追加で500台を納入し、2018年には最大6万2000台のパシフィカを納入する契約を交わしたとしている。

2018 年には、ジャガー・ランドローバーとのパートナーシップのもと、BEV「Jaguar I-PACE」を採用することが発表された。ジャガー・ランドローバーは、2 年間で最大 2万台をWaymo向けに製造するとしている。

【参考】DARPAの自動運転レースについては「自動運転、「レース」が技術革新の火種に 日本でも大会が定着」も参照。

自動運転、「レース」が技術革新の火種に 日本でも大会が定着

3代目はGeely系ブランドのZeekr

そして3代目には、Zeekrが内定している。WaymoとZeekrは2021年、自動運転配車サービス向けに特別設計した新型BEVモデルにWaymo Driverを統合するコラボレーションを発表しており、おそらく第6世代のWaymo Driverとともにフリートに追加されるものと思われる。

ティザー画像に映っているのは、Zeekrの新型BEV「Zeekr MIX」と思われる。乗用車から物流向けの商用車、ロボタクシーに至るまで幅広いモビリティ製品をサポートする戦略車で、リビングルームのような車室、回転式フロントシートなどを備えるという。

2021年当時の発表では、ハンドルやペダルを備えない自動運転車専用設計となることが公表されていた。最終的にどのようなカスタマイズが加えられるのか、要注目だ。

【参考】Waymo×Zeekrについては「Google、「中国企業」に自動運転車の製造委託 相手はGeely」も参照。

Google、「中国企業」に自動運転車の製造委託 相手はGeely

■グーグル×トヨタのタラレバ論

試験車両採用はアドバンテージ

プリウスに話を戻そう。前述したように、初期の開発段階ではプリウスに自動運転システムを搭載し、実証を重ねていたのだ。つまり、プリウスにもWaymo Driverは統合されていたことになる。

もちろん現在のものとは仕様が異なるが、Waymoがプリウスを知り尽くしていることは間違いなく、新たなプラットフォームとしてプリウスを選択してWaymo Driverを統合することは、まったくの新モデルに統合するより容易なはずだ。

試験車両に導入された実績は、いわばアドバンテージとなるはずだ。しかし、プリウスが選ばれることはなかった。

交渉はあったのか?トヨタはアプローチしなかったのか?

Waymoが自動運転タクシー車両を選定する際、おそらく各OEMに何らかの交渉を持ち掛けるものと思われる。その逆も然りだ。

Waymoは、水面下でトヨタにも交渉を持ち掛けていたのだろうか。1代目に選定されたパシフィカを基準にすると、車内空間の広さ以外プリウスが勝ると言っても過言ではない。広さが必要であれば、北米モデルのシエナもある。

仮に、トヨタにその気があれば、アドバンテージを生かしてWaymoを口説き落とすことができたのではないか。2016年当時、トヨタはWaymoではなく米配車サービス大手Uber Technologiesに戦略的投資を行っている。Uberとは2018年に協業を拡大し、自動運転技術を活用したライドシェアサービスの開発促進・市場投入に向け追加出資を行っている。

Waymoと当時のUberを天秤にかけることはナンセンスだが、早い段階でWaymoにツバをつけておけば、面白い展開が待っていたかもしれない。

■【まとめ】商用BEVで自動運転分野を開拓

Waymoは現在、BEVを前提に車種選定を進めており、現在のトヨタは蚊帳の外状態の可能性がある。チャンスをつかみ損ねたのだ。

トヨタのBEV戦略は今後加速していくことが予想されるが、今からでもBEVと相性の良い商用車部門に力を入れ、自動運転タクシー向けのモデルを開発するのもアリではないだろうか。

Aurora InnovationやPony.ai、Momentaなど有力な顧客もいる。5年、10年後にフリートが爆増することを見越し、改めて世界戦略を練ってみてはどうだろうか。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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