保険大手の仏AXA(アクサ)が英国政府に対して、自動運転に関する法整備を急ぐよう要求している。英メディアが報じた。
報道によると、AXAは自動運転車に関する法整備を急がないと、保険会社にとって責任の所在な明確でない曖昧な領域を生み出すおそれがあるということを、英国政府に訴えているという。
■AXAの英国政府への要求とは?
AXA UKのCEO(最高経営責任者)であるClaudio Gienal氏は、イギリスの財務大臣に宛てて、自動運転技術を安全に展開し、適切に保険が掛けられるようにするため、できるだけ早く明確な法律を制定するよう求める文書を提出した。
英メディアによると、Gienal氏は「保険の観点からすると、責任の所在を判断してさまざまなレベルの自動運転技術に対するリスク評価を確立するための、明確な規制枠組みが必要だ」としている。
同氏はさらに、今国会中に法案を提出しなければ、英国が自動運転技術を導入するためのグローバルな競争力を失う危険性があることを付け加えている。
なおAXA Commercialでカスタマーリスクマネジメントのディレクターを務めるDougie Barnett氏は、ドライバーとっての明確性が最優先事項であると主張している。
■自動運転に関する法整備、各国の状況は?
各国における自動運転に関する法整備はどのような状況なのか。
米国では、自動車の技術基準など基礎的な要件を国(連邦法)が定める一方、道路交通ルールは各州(州法)に委ねられている。自動運転に関する国としての定めがないため、現段階では自動運転車の公道走行ルールも各州が独自に策定している。
中国も米国同様、政府の方針のもと省や直轄市などが開発企業に対し個別に走行ライセンスを付与する方式を採用しているものの、全国的な法整備は進んでいない。
ドイツは2017年にレベル3に対応した道路交通法の改正を世界に先駆けて行った。レベル4に対応した法案も2021年5月に連邦議会が可決している。このことから、世界の開発企業がドイツに集中する可能性があるとされている。
そして英国では、ボリス・ジョンソン政権下の2022年5月に自動運転車の規制が発表され、高速道路における自動運転車や自動運転トラックの走行を2023年中に可能にすることを計画していたようだが、政権交代に伴い延期されている。
■英国政府の対応に注目
イギリスの運輸省は法整備の遅れについてはコメントしていないものの、「新しい技術の可能性を探るため」に英国企業に今後3年間で1億ポンド(約172億円)を投資することを発表している。
果たして英国政府はAXAの訴えに対して、何かしらの方針を示すのか、今後の動向に注視していきたい。
【参考】関連記事としては「英国政府、2023年に自動運転普及を見据え法整備へ」も参照。