【資料解説】自動走行ビジネス検討会「報告書案version 6.0」を読み解く

レベル4移動サービスなど実現へ取り組み加速

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自動走行ビジネス検討会は2022年3月25日、2021年度の取り組みや今後の方針をまとめた「報告書案version 6.0」の抜粋版を公表した。

自動運転技術の実用化・ビジネス化を推進する同会は今後どのような取り組みを行っていくのか。2021年度の進捗状況とともに、今後の方針に迫っていく。

▼自動走行ビジネス検討会報告書案version 6.0(抜粋版)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jido_soko/pdf/013_s01_00.pdf

■自動走行ビジネス検討会の概要

自動走行ビジネス検討会は、産学官オールジャパン体制で自動運転のビジネス化を推進する目的で2015年2月に設置された。2015年度に取り組み方針をまとめ、2016年度にレベル2~4の一般車両における自動運転の将来像の明確化や協調領域の特定、2017年度に安全性の評価方法の在り方、2019年度に安全性の評価方法の在り方や人材育成・確保に係る検討、2020年度に無人自動運転サービスの実現・普及に向けたロードマップの策定(発表)など進めてきた。

2021年度は、これまでの実証プロジェクトの目標達成に向けた取り組みと並行し、以下などについて検討を行った。

2021年度から2025年度までの5年間に取り組む次期プロジェクトでは、以下の4つの取り組みをテーマに検討を進めてきた。

■将来のモビリティ社会像と自動走行の果たす役割

CASE革命の進展や車のソフトウェア化、GX(グリーントランスフォーメーション)・DX(デジタルトランスフォーメーション)による自動車の使い方・作り方が大きく変革していく中、将来のモビリティ社会像も踏まえ、自動運転技術が貢献できる社会課題を整理していくことが重要としている。

自動運転技術によって解決が期待される社会課題としては、人口減少・高齢化社会における移動手段の確保や人手不足対策、事故や渋滞の解消、カーボンニュートラルへの貢献などを挙げたほか、またMaaSなどとの連携や技術の進展によって新しいビジネスや価値が創出される可能性にも言及している。

これらの社会課題の解決に貢献するため、「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」において必要な施策の具体化を図るとともに、協調領域の深化を行っていく。

具体的には、以下を中心に具体化を図っていく方針だ。

以下、それぞれの取り組み内容を解説する。

■無人自動運転移動サービスの実現に向けた取り組み

自動運転技術を活用した無人移動サービスは、2025年度を目処に40カ所での実現を目指す。その過程で技術開発や環境整備、社会受容性の課題解決に資するようなノウハウ・成果を創出し、事業化に向けたコストダウンを図りながら2030年度ごろの本格的な普及を目指す方針だ。

重点的に取り組むべき課題には、事業化加速に向けたコスト面やインフラ・法律などの環境整備、技術開発、社会受容性の向上を挙げている。

出典:経済産業省(※クリックorタップすると拡大できます)

コスト面では、自動運転サービスによって得られるメリットとイニシャルコスト・ランニングコストを整理した上で、先行導入者に対する支援策を検討するほか、MaaSと自動運転を組み合わせることで効率的な運行や新たな移動ニーズを喚起し、持続的な移動サービスを目指す。

環境整備面では、バス・タクシー事業者のシステム・人材への対応をはじめ、遠隔監視者や車内保安要員といった自動運転に必要な人材確保や教育の在り方を検討するほか、車両単体では走行困難な環境・混在空間におけるインフラと車両の役割を整理していく。

技術開発面では、レベル4に向けたソフトウェアやセンサーなど自動運転の要素技術の開発をはじめ、より多くの車両を効率的に同時監視できる遠隔監視システムやスキームの構築、自動運転システムの安全性の評価手法の構築と国際標準化など、技術の高度化・標準化を図っていく。

社会受容性の向上に関しては、地域の関係者・関係機関の理解と協力のもと、円滑かつ安全に自動運転サービスを実施するためセーフティアセスメントやセーフティレポートなどのひな型を整理する。また、関係者に求められる役割と責任分解点、保険スキームなど円滑な事業環境の構築に必要な役割についても整理を進めていく。

「RoAD to the L4」プロジェクトでは、2022年度に自動運転サービス導入に向けた支援策の検討・整理や、レベル4移動サービスの運用に向けた地域合意に関するプロセスなどの整理に着手する。

2025年度を目処に40カ所で実現へ

レベル4移動サービスに向けた取り組みはすでに各地で進められている。福井県永平寺町では、廃線跡を活用した遠隔型自動運転システムによるレベル3の無人移動サービスが2021年3月にスタートしており、2022年度には車両を高度化してレベル4を目指す方針だ。

茨城県日立市では、ひたちBRTの専用道区間約7キロで中型自動運転バスのレベル2実証を行っている。永平寺町での取り組みなどを応用し、交差点や他の交通参加者を踏まえたODD設定のもと、2023~2024年度ごろを目途にレベル4のサービス実証に着手していくようだ。

限定空間ではこのほか、羽田イノベーションシティで自動運転バス(NAVYA ARMA)によるレベル2相当での移動サービスや、宮城県登米市でJR東日本などが取り組むBRT大型自動運転バスの実証などが進められている。

こうした先行事例をブラッシュアップ・応用展開し、2025年度を目処に40カ所で無人自動運転移動サービスを実現する構えだ。

出典:経済産業省(※クリックorタップすると拡大できます)
■高度幹線物流システムの構築

物流関連では、2025年度以降の実現を目指す高速道路におけるレベル4自動運転トラックなどに向け、事業モデルの検討などに着手する。

物流分野が抱える慢性的な人手不足などの社会課題や環境課題の解決に向け、これまではトラックの隊列走行技術の確立に向けた事業を主体に取り組んできた。

また、幹線輸送・結節点・支線配送を通じたデータ連携や機能自動化などを通じ、その解決や付加価値向上を目指す観点から「物流MaaS」実現に向けた事業や、「RoAD to the L4」などにも着手している。

物流MaaSにおいても自動運転を代表的なユースケースに据えてデータ連携の検討を進めるとともに、高性能トラックの社会実装に向け、具体的なユースケースや社会像を念頭に性能要件の具体化などを進めていく方針だ。

自動運転技術を活用した新しい基幹物流システムの構築に向けては、2025年度以降の高速道路におけるレベル4自動運転トラックの実現、及び2026年度以降の自動運転技術を用いた幹線輸送の実用化・社会実装を目標とし、RoAD to the L4の枠組みの中で大型車メーカー各社や物流事業者をはじめとする関係者が一堂に会し、以下をそれぞれ2021年度に開始した。

2022年度からは、複雑な事業モデルを運用可能とする共同運行事業形態に求められる要件の整理や、レベル4トラック運行管理システムの要件検討と評価などを進め、2025年度にかけて大型車OEM各社の車両やレベル4トラック運行管理システムを用いた路車連携などを含むODDの評価に拡大していく方針だ。

出典:経済産業省(※クリックorタップすると拡大できます)

【参考】物流MaaSについては「【資料解説】「物流MaaS勉強会」取りまとめ、その概要は?」も参照。

■オーナーカーのAD・ADAS市場の拡大

複雑な交通環境下で使用されるオーナーカーは、当面の間レベル2~3未満の開発・市場化が進むことが見込まれ、AD(自動運転)やADAS(先進運転支援システム)の普及によって事故や渋滞といった課題解決が期待される。

また、サービス向けのレベル4車両の社会実装に向けても、量産効果が大きいオーナーカー(レベル2~3)の普及を促進することで、レベル4車両との共通基盤技術のコストダウンや協調型インフラ整備の後押し、半導体を含めたAD・ADAS関連技術への民間投資促進につながる可能性があるとしている。

普及に向けては、CASEやソフトウェアの進展など国内外の動向も踏まえながら、特に交通システム全体としての安全性・利便性向上や省エネルギー化に資する「高度な安全運転支援技術(AD・ADAS)の開発・普及や環境整備」を進めていく。

出典:経済産業省(※クリックorタップすると拡大できます)

具体的には、レベル4に対応可能なソフトウェアやセンサーなどの基盤となる技術開発や、通信の協調・標準化に向けた議論、コネクテッド化に付随するサイバーセキュリティへの安全対策などの取り組みを進め、市場拡大にもつなげていく。

高度なADASの普及に向けては、高精度地図などの位置特定技術やOTAによるソフトウェアアップデート機能、路車・車車間通信機能などを持つ車両の普及を支援していくことが必要としている。
ハンズオフを実現する高度なレベル2以上の車両において高精度地図を採用するケースやOTA機能を搭載するケースは増加傾向にある。

路車・車車間通信に関しては、ETCを除く狭域通信はまだ十分に普及しておらず、通信方式・周波数帯についても各国で検討中としている。

■【まとめ】レベル4実用化に向けた取り組みがいっそう加速

今後、法律の改正とともにレベル4実用化に向けた取り組みが大きく加速していくことが予想されるが、それを裏付けるような内容となっている。

Version6.0の正式な報告書は、2022年度に入ってから改めて発表される見通しだ。自動運転実用化に向けた「今」と「これから」の取り組みが網羅されているため、関係者はもとより興味のある方はぜひ参照してほしい。

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説」でまとめて発信しています。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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