自動運転車に「勝手に稼がせる」6つのアイデア

宣伝カーやタクシーとして無人走行させる



自動運転開発を手掛けるイスラエルMobileye中国自動車メーカーと手を組み、レベル4自家用車の開発に乗り出した。無人走行が可能な本格的な自動運転をマイカーで味わえる日は、意外と早くやって来るのかもしれない。


こうした自家用自動運転車は、自動運転タクシーなど特定用途に限定されないシステムとなり、自由度の高い設計に期待が寄せられるところだ。自家用に限らず、多目的自動運転車としてさまざまな用途に応用できるかもしれない。

私用のほかビジネス用途の展開も可能だ。無人総走行技術を活用し、自動運転車が勝手に稼ぐアイデアも出てくるだろう。

この記事では、オーナーの元を離れた自動運転車自らが稼ぐ方法について考察していく。なお、ビジネス上実際にはさまざまな規制が存在するが、ここでは考慮しないこととする。

■宣伝カーとして自律走行

都心を走行するアドトラックのように、ラッピング広告ビジネスは今も昔も一定の人気を誇っている。トラックのように全面を活用したものからワンポイントのものまでさまざまだ。ラッピング技術も進化しており、ボディの形状に合わせた印刷・施工技術なども確立されている。


こうしたラッピング技術を活用して自動運転車を宣伝カーとして走行させ、広告費を稼ぐことも可能になるかもしれない。カーオーディオなどを改造すれば、適度に音声を流すこともできそうだ。

また、自動運転専用車であれば、従来のウィンドウスペースなども有効活用できるため、広告スペースを確保しやすいのも魅力だ。

手動兼用の自動運転車も、将来技術としてウィンドウをディスプレイ化することなども考えられる。手動運転時は通常のウィンドウだが、自動運転時は内外向けのディスプレイに代わる新たなソリューションが誕生すれば、デジタルサイネージとして車外に広告を映し出すこともできる。

オーナーと広告主を結び付けるマッチングプラットフォームやコンテンツを作製するビジネスなども成長する可能性がありそうだ。


■自動運転タクシーとして自律走行

一定エリア内を自由に走行可能な自動運転技術があれば、自動運転タクシーとして活用することが可能になる。自家用自動運転車においては、ライドシェアサービスのイメージだ。

こうした構想は米テスラなどが打ち出している。同社のイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は2019年、自家用自動運転車の量産計画とともに、マイカーの待機時間を配車サービスに充てることでオーナー自ら運賃を稼ぐアイデアを披露した。

車両はリース契約で、配車プラットフォーム「テスラネットワーク」のもとサービス提供することで、オーナーにもテスラにも運賃収入が入る具体的な構想だ。

将来、自家用自動運転車によるタクシーサービスを可能にするソフトウェアやプラットフォームが登場し、新たなビジネスとして成長する可能性は十分考えられそうだ。同様に、C2Cサービスとして自動運転カーシェアの展開なども考えられる。

【参考】テスラのロボタクシー構想については「ロボットタクシーとは?自動運転技術で無人化、テスラなど参入」も参照。

■C2C向けの速達カーとして自律走行

C2C関連では、自家用自動運転車を「御用聞き」のように活用する道もありそうだ。例えば、個人間の荷物の受け渡し代行だ。マッチングプラットフォームを介して配達依頼を受け、荷主から届け先まで自律走行する。トランクスペースなどを宅配ロッカー仕様にし、デジタルキーなどで利用者が開閉する仕組みだ。

この仕組みを応用すれば、B2Cの買い物代行などにも活用できる。買い物代行プラットフォームのオプションとして自動運転配送を加えるイメージで、オーナーはあらかじめマイカーを配送に活用できる時間帯を登録しておく。

プラットフォーム利用者が注文時に自動運転配送を選択すれば、自動運転車が小売店舗を訪問し、あらかじめ商品をピックアップした店員が商品を積み込む仕組みだ。

御用聞きとしては、交通トラブル時の「お助けカー」としてロードサービスを提供することも可能かもしれない。バッテリー上がりなどの車両トラブル時、要請に応じてすぐに駆け付け、無人で可能なサービスを提供する。要請したドライバーによる作業が必要だが、バッテリー上がりのジャンピングスタートや、簡易なけん引などはできるかもしれない。

■「移動ホテル」として自律走行

普段から手動運転を行わず、自動運転でゆったりとした移動を楽しんでいるオーナーは、車内をくつろげる空間に改造するなど、より快適な移動を追い求めるべきだ。

くつろぎ仕様の車内は、自動運転タクシーとして乗客に上質感を与えることができるが、応用すれば移動ホテルにもなり得る。

就寝仕様は、ボルボ・カーズが過去に発表した自動運転コンセプトカーなどで具体化されており、決して眉唾なものではない。1時間単位の休憩用途をはじめ、待機状態が長く続くようなら1泊単位でホテルのように貸し出すこともできそうだ。

自動運転システムが長距離移動をカバーしていれば、移動を兼ねたホテルとして新たな需要を喚起することも考えられる。

【参考】ボルボ・カーズの取り組みについては「ボルボが完全自動運転コンセプトカー360cを発表 シートベルト代わりに「布団ベルト」」も参照。

■選挙カーとして自律走行

色々と突っ込みどころがありそうだが、宣伝カーの発想を応用すれば、選挙運動用自動車、いわゆる選挙カーとしての活用の道も開けてくる。

無人の選挙カーが候補者の名前を連呼し、選挙区内を効率的かつ効果的に走行するのだ。道路沿いの有権者からの声援を感知し、自動で「ありがとうございます!」と応答する機能も搭載可能だ。

昭和時代に制定されたアナログな選挙手法である選挙カーに対し、「税金の無駄」「うるさい」といった声も少なくないが、一定の集票効果を持つと結論づける実験結果があるのも事実だ。

このアナログな選挙運動に最先端技術を導入するのは一種のアンチテーゼにもなりそうだが、お金は稼げずとも票を稼ぐことはできるかもしれない…。

■自律走行で収集したデータを販売

宣伝カーや自動運転タクシーなどの用途でまちなかを流しつつ、走行時に収集した各種データを販売することも将来可能になるかもしれない。

搭載したカメラやLiDARなどのセンサーが取得するデータは、加工すれば高精度3次元地図の作製・更新に役立てることができる。また、渋滞や事故、落下物といった各種交通情報は、リアルタイムの道路状況を知る有効な手段となる。

さらに、道路沿いのガソリンスタンドや駐車場、小売・飲食店などの看板を読み取り、ガソリン価格や駐車場の空き情報、特売情報、開店情報などをデータ化することもできる。

■自動車の運転時間は平均1.3時間

こうしたお金稼ぎは、ビジネス専用の自動運転車のみならず、自家用自動運転車の実現で需要を増していく可能性がある。自家用車の待機時間を、自動運転技術で有効活用するのだ。

製品評価技術基盤機構が2017年に発表したレポートによると、自動車の運転時間は1日あたり加重平均で1.3時間、中央値0.9時間、最頻値に至っては0.4時間という結果になっている。自家用車を利用している時間はわずかで、大半の時間は待機状態となっているのだ。

従来の手動運転車においてこうした自家用車の待機時間を活用するには、C2Cのカーシェアサービスなど、他のドライバーの存在が欠かせない。

しかし、無人走行が可能な自動運転車であればこの前提が崩れ、さまざまな用途への道が開ける。こうした待機時間を有効活用し、ビジネス用途でお金を稼ぐ副業が将来スタンダードなものになっていく可能性もありそうだ。

【参考】自動車の運転時間については「運転時間の平均は1人80分、自動運転になったら代わりに何をする?」も参照。

■【まとめ】アイデア次第で高収益も!?自動運転ビジネスは身近な存在に

ビジネス用途で購入した自動運転車はもちろん、自家用自動運転車を遊ばせておくのはもったいない。自動運転技術で待機時間を有効活用し、少しでもお金を稼ぐことができれば、高額なイニシャルコストを補填することも可能になる。

法的規制やセキュリティ上の問題など課題が多いのも事実だが、アイデア次第でとてつもない収益を生み出す可能性もある。自動運転ビジネスは一部の業界のみならず、誰もが関わることができる身近な存在へと変わっていくのだ。

【参考】関連記事としては「自動運転とは?技術や開発企業、法律など徹底まとめ!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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