テスラのロボタクシー運行範囲、もうGoogleの2.7倍に

米オースティンでガチンコ勝負



テキサス州オースティンでロボタクシーサービスを展開するテスラが、その走行エリアを大幅拡大したようだ。オースティンにおけるサービスエリアの規模はWaymoの2.7倍規模に達するなど、局所的ながらWaymoを超え始めた。


もちろん、総合的にはまだまだWaymoに及ばないが、自動運転分野で覇権を狙うテスラの下克上はすでに始まっているようだ。

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■Waymo、テスラの最新動向

テスラがオースティンのサービスエリアを大幅拡大

出典:Tesla公式サイト

テスラは2025年10月、ロボタクシーのサービス提供エリアを拡大した。6月にサービス開始して以来、実に4回目の拡張だ。

6月時点でテスラは18平方マイル(約47平方キロメートル)だった。これに対し、Waymoは37平方マイル(96平方キロメートル)をカバーしていた。

7月にテスラが1回目のエリア拡大を図った数日後、Waymoは90平方マイル(233平方キロメートル)への拡大を発表した。


その後もテスラは拡大を続け、9月時点で173平方マイル(約450平方キロメートル)、そして10月には243平方マイル (629平方キロメートル)に達した。Waymoは90平方マイルから動いていないようだ。

対象エリア拡大競争の様相を呈するかと思われたが、ここはテスラに軍配が上がったようだ。オースティンはテスラが本社を構える本拠地だけに、おそらくまだまだ拡大を図っていくものと思われる。

ただ、Waymoもオースティンでサービスインしたのは2025年に入ってからだ。同市におけるフリート数は100台超と言われている。一方、テスラは多少増車したものの、30~40台規模と思われる。

また、Waymoはドライバーレスを実現しているのに対し、テスラは助手席にオペレーターを同乗させる形で運行している。中身としてはまだまだWaymoが上だ。


Waymoにとってテスラは脅威?

Google系Waymoが展開している自動運転タクシー=出典:Waymo公式ブログ

現状、Waymoにとってテスラのロボタクシーは脅威とは言えないが、Cruise以来のライバルの出現であり、近い将来大きな脅威となるポテンシャルを有する存在だ。

テスラは6月にロボタクシー事業に着手したばかりで、対象エリアはオースティンのみでフリートは30台規模だ。セーフティドライバーとなるオペレーターも助手席ながら同乗している。

このテスラの水準は、Waymoにとっては2018年末のサービスイン時のレベルだ。Waymoは現在ドライバーレスサービスをアリゾナ州フェニックスなど5都市で展開済みで、5都市のサービス提供エリアは計665平方マイル(1720平方キロメートル)に及ぶ。

2024年末までにドライバーレス走行だけで5,000万マイル(8,000万キロ)走行しており、フリートは計2,000台規模に達している。文字通り事業規模は桁違いで、数字だけ見ればテスラはWaymoの敵ではないのは明らかだ。

しかし、テスラにはイノベーションに真っ向から立ち向かう企業風土と飽くなき野心、独自の技術開発力がある。良い意味でも悪い意味でも常識破りな面があり、一般的な物差しで測ることが難しい企業だ。ひとたびブレイクスルーが起きれば、一気にWaymoに追い付き、追い越すポテンシャルを有している。

次項以降で、Waymoとテスラの現在地や技術開発力を解説していく。

■Waymoとテスラの事業概要

Waymoは北米5都市でサービス実現、海外展開も

グーグルは、自動車メーカー以外でいち早く自動運転開発に本格着手したテクノロジー企業であり、現在の自動運転開発競争の仕掛け人とも言える存在だ。

開発プロジェクトは2009年に立ち上がったとされており、2015年に自社オリジナルの自動運転車「Firefly」で初の自動運転公道走行を実現した。なお、その地は奇しくもオースティンだった。

2016年に開発部門を分社化してWaymoを設立し、自動運転サービス実現に向けた取り組みを本格化させる。2018年末にアリゾナ州フェニックスで自動運転タクシーの商用化を開始し、約一年後にはドライバーレス車両の導入も開始した。

以後、カリフォルニア州サンフランシスコ、ロサンゼルスにもサービスを拡大し、2025年にはオースティンとジョージア州アトランタでもサービスインした。オースティン、アトランタではUber Technologiesの配車アプリからサービスを利用できる。

近くフロリダ州マイアミとワシントンD.C.でもサービスを開始する計画で、さらにネバダ州ラスベガス、カリフォルニア州サンディエゴ、テキサス州ダラス、ワシントン州、コロラド州デンバーなどへも拡大していく方針を発表している。

海外展開にも着手しており、日本では日本交通と配車サービス大手GOとパートナーシップを結び、2025年に実証を開始している。英ロンドンでも2026年にサービスを開始する計画を発表している。

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テスラは年内無人化、2026年全米展開に意欲燃やす

テスラは、「FSD(Full Self-Driving)」と称する自動運転技術の進化により、自動運転レベル5の実現を目指している。FSDは現状レベル2+相当に留まっているが、市街地などを含む広範囲でハンズオフを可能にする水準に達している。

ロボタクシー事業は、前述のとおり2025年6月にオースティンで開始したばかりだが、サンフランシスコなどで有人運転による配車サービスにも着手している。自動運転ではなく、おそらくレベル2+相当のハイヤーサービスだ。

イーロン・マスク氏は、2025年内に無人走行を実現する目標を掲げ、2026年にはサービスを北米に広く展開する計画を発表している。

すでに、ニューヨーク州ブルックリンやテキサス州ヒューストン、アリゾナ州テンピなど、各都市で安全オペレーターの求人を出していることが判明しており、野心的に取り組んでいることは間違いない。

ロボタクシーは、今のところ特別バージョンのFSDを搭載したModel Yでサービスを提供しているが、2024年にはハンドルなどの手動制御装置非搭載の「Cybercab(サイバーキャブ)」を発表している。

2026年第2四半期を目途に生産を開始する計画とされているが、コンシューマー向けの車両としては保安上の規制にさらされるため、どのような道筋をたどるかは不透明な状況だ。

ただ、サイバーキャブは工場内などで走行する姿が目撃されており、2025年10月には、カリフォルニア州ロスアルトスの同社エンジニアリング本部近くの公道を走行する様子も目撃された。運転席に人間のドライバーが乗っていたという。

自動運転分野における覇権をWaymoから奪い取るべく、テスラによる下克上は今後ますます加速していくことになりそうだ。

■Waymoとテスラの自動運転システム

Waymoはルールベース、テスラはE2Eモデル

Waymoとテスラの一番の相違点は、自動運転システムに対するアプローチだ。Waymoはルールベース、テスラはエンドツーエンドモデルの開発を進めている。

ルールベースに基づくWaymoの自動運転システムは、LiDARやカメラなどの各種センサーを車両に搭載し、事前に作製した高精度3次元地図を活用しながら一定エリア内における自律走行の精度を高めている。

語弊が生じそうだが、ルールベースは膨大な取扱説明書のもとAI(コンピュータ)が自律走行するイメージだ。走行するルートにおけるさまざまなシナリオ・シチュエーションを可能な限り網羅し、「〇×の場面では〇△の制御を行う」といった無数のルールをコンピュータに学習させ、安全な走行を実現する。

一昔前の携帯電話やパソコンなどは軽く100ページを超す取扱説明書が添付されていたが、こうした取説をコンピュータが熟読・マスターし、その内容に従って行動するのだ。プリンターなどの連携製品にもそれぞれ取説が用意されており、すべてにしっかりと目を通した上でコンピュータが状況に応じた判断・車両制御を行う。

人間であれば、取説の隅々まで目を配るというのは苦行に他ならないが、コンピュータはそれほど苦にせず、内容をすべて理解することができる。むしろ、この膨大なマニュアルを作成する作業が大変で、課題が見つかればその都度追加していく作業も必須となる。

人間の作業によるところが大きいが、その分コンピュータは確実に対象製品を取り扱うことができるようになる。

E2Eは応用力に強み

一方、テスラが採用するエンドツーエンドモデルは、AIが自らの経験をもとに試行錯誤し、安全走行に向けた最適解を導き出す仕組みとなる。

パソコンなどを例にすると、A3用紙1枚の簡易マニュアルをもとに最低限の知識を養い、あとは対象製品をいじり倒して操作方法を身に着けていくようなイメージだ。

試行錯誤が必要なため、基本動作などを一通り理解するには相当な時間を要することになる。AIと言えど、見ず知らずのモノの操作やルールを覚えるには時間を要するのだ。

しかし、自らの経験値を糧に思考しているため、さまざまなシーンに柔軟に対応できる点がポイントとなる。未知の事象に遭遇しても、過去の経験から類似したモノを導き出し、回答を示すのだ。回答が正しければ良し、間違っていれば新たな経験をもとに修正を加えていく。

つまり、エンドツーエンドモデルは自ら応用を利かせる能力を持っているため、経験を積み重ねていけば、そのうち初めて走行する道路も自律走行できるようになるのだ。

ルールベースはあらかじめマニュアルが用意された範囲、つまり事前に設定したルートや走行エリア内でしか自動運転できないが、その範囲内においては非常に精度の高い自律走行を実現する。

一方のエンドツーエンドモデルは、特段のマニュアルが用意されていないため基本操作を覚えるのに時間を要するが、学習内容がある程度の水準に達すれば、自ら応用を利かせ走行範囲に縛られない自動運転を実現することができる。

つまり、テスラが開発を進めている自動運転システムは、技術が一定水準に達すれば、オースティンなど特定のエリアに関わらず高精度な自律走行が可能となるポテンシャルを有しているのだ。

このポテンシャル×マスク氏の野心的計画は、先行するWaymoにとってとてつもない脅威となる。

今後はE2E開発競争が激化?

大きなポテンシャルを有するエンドツーエンドモデルだが、Waymoをはじめとする自動運転先行勢は軒並みルールベースを採用している。

その理由は、現行のAI技術ではエンドツーエンドモデルの実現は困難と考えられてきたためだ。ディープラーニングの登場などでAI開発熱は高まったものの、多くの専門家がエンドツーエンドモデルに難色を示していた。

しかし、生成AIの登場で状況は一変した。早くから同モデルの開発を続けてきたテスラなどの企業が台頭し始め、Waymoら先行勢もエンドツーエンドモデルの開発に本格着手したのだ。

ルールベースで先行していたWaymoらを、エンドツーエンドのテスラが追い上げ始めたのが現在地で、今後は、徐々にエンドツーエンドの技術力を競うフェーズに移行していくものと思われる。

エンドツーエンドで先行するテスラも、現実的にはオースティン市内にジオフェンスを設定し、一定エリア内の走行に限っているのが現状だ。まだ技術は成熟していないと言える。

自動運転モデル「ルールベース」「E2Eモデル」とは?

■【まとめ】両社のエンドツーエンドモデルの開発進捗に注目

局所的ながら自動運転事業を加速させるテスラ。現状、Waymoの圧倒的優位は揺るがないが、Zooxなどの他社と比べ、虎視眈々と、かつ野心的に事業展開を進めるテスラは、その目に驚異として映っているのではないだろうか。

ルールベースで絶対的優位を誇るWaymoも、この流れで行けばテスラに追い付かれ、追い抜かされる時が来るかもしれない。今後は、Waymo、テスラ両社のエンドツーエンドモデルの開発進捗状況に焦点があてられそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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