中国IT大手の百度(バイドゥ)は2022年6月15日までに、2022年末までに予約受け付けを開始する自動運転EV(電気自動車)のプロトタイプを公開した。
この車両はSUV(多目的スポーツ車)「ROBO-01」のプロトタイプで、「自動運転レベル4」の技術を搭載するという。高速道路のほか、街中での走行や駐車場でのレベル4作動も可能なようだ。価格は3万ドル(約400万円)相当で、2023年に納車を開始する予定だという。
自動運転レベル4の市販車は、まだ世界のどこの自動車メーカーからも発売されていない。このままいけば百度が「世界初」となりそうだ。
■百度とGeelyが設立したJidu
ROBO-01の開発と製造は、集度汽車(Jidu Auto)が担う。Jiduは、吉利汽車やボルボ・カーズを傘下に置く中国の浙江吉利控股集団(Geely)が百度と共に2021年に設立した自動車会社だ。IT企業と自動車メーカーが組むことで、大量生産と信頼性の高い自動運転車の製造を実現する。
ROBO-01は角ばったデザインで、ドアの前部は上向に、後部は後方に開く。運転席と助手席が一体的に設計され、3D対応の大画面に走行状態などが表示される。自動運転車のコアセンサーとして機能する「LiDAR」は起動するとボンネットから現れ、前方の道路を3Dで計測する。
自動運転レベル4では、稼働対応エリア内における完全自動運転を可能とするが、稼働対応エリア外では手動運転が必要だ。そのためROBO-01にはハンドルが搭載される予定だ。ちなみにハンドルは円形ではなくU字型になるようだ。
自動運転技術は、中国で数十の自動車メーカーが採用しているオープンプラットフォーム「Apollo」のカスタムバージョンになるようで、百度とパートナー企業らが開発している。百度のAI(人工知能)技術である音声コントロールも活用されるようだ。
■2015年に大規模な投資をスタート
百度は2013年から自動運転の研究開発を開始しているが、取り組みを本格化させたのは自動運転分野の研究開発へ大規模な投資をスタートさせた2015年だ。同年12月には北京の高速道路と都市道路において、自動運転車の実証実験を実施した。独ダイムラーと車載用ソフトウェアの開発で提携も交わしている。
2017年4月には、幅広い分野のパートナーと共同で技術開発を進めるオープン戦略として、「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」と呼ばれる新計画を発表した。同年9月には「アポロファンド」を設立した。このファンドは自動運転事業を対象に、3年間で総額100億人民元(約2,000億円)超を100以上のプロジェクトに投資していくものだ。
2019年7月には北京市から、取得が最も困難な自動運転免許の「T4ライセンス」を初めて付与されている。2020年4月には湖南省長沙市において、一般顧客を対象にした自動運転タクシーサービス「Apollo Go Robotaxi」を、セーフティードライバー同乗のもとで開始させた。その後、長沙市や北京市での無人走行ライセンス取得も発表している。
2021年8月には上海市内に、自動運転オープンプラットフォーム「Apollo (アポロ)」の実験・運用を行う「Apollo Park(アポロパーク)」を、北京市、広東省広州市につづく3カ所目として開設した。
■IT大手が牽引する中国の自動運転市場
中国の自動運転シーンをリードする百度。GeelyとのJidu設立により大量生産にも対応できるようになった。引き続き中国市場を牽引する同社の動きに注目していきたい。
【参考】関連記事としては「レベル4自動運転車、「量産」は中国の独壇場か 百度も大量製造へ」も参照。