米ゼネラル・モーターズ(GM)が自動運転車開発部門Cruise Automation(クルーズオートメーション)の上場を検討していることがわかった。米総合情報サービスのブルームバーグが報じている。クルーズをめぐっては、2018年5月にソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が22億5000万ドル(約2400億円)を出資する計画を明らかにしており、上場が実現すれば、SVFに大きな投資収益がもたらされそうだ。
ブルームバーグによると、クルーズの株式の公募・売り出しや別のトラッキングストック(事業部門株)の上場、クルーズ部門の分離・独立といった可能性をGMが検討していることを複数の関係者が明らかにしたという。その上で、GMはクルーズを重要な存在に位置付けており、開発面で一段と前進するまで決定を下さず、今後2年程度は何もしない可能性があるとも報じている。なお、GMは公式でのコメントを控えている。
■自動運転レベル4〜5開発のクルーズ
クルーズは2013年に米カリフォルニア州サンフランシスコで設立された。完全無人の自動運転レベル4(高度運転自動化)~レベル5(完全運転自動化)の自動運転車の開発を進め、2016年3月にGMに約10億ドル(1100億円)で買収された。
【参考】自動運転レベルの定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説|自動運転ラボ 」も参照。
GMはクルーズを自動運転開発の柱に据え、2017年には新しい研究開発施設に1100人以上社員を増やし、1400万ドル(約15億円)を投資すると発表した。2018年3月には自動運転車の量産準備が整ったことを発表し、ステアリングホイールやペダル類のない自動運転車「クルーズAV」を2019年から生産することとしている。
この流れでSVFがクルーズへの出資を決めたほか、GMも11億ドル(約1200億円)の出資を予定しており、早期生産・商用化を強力に支援する形となった。一部のアナリストは、この出資がクルーズへの「信任投票」と位置付けられ、他の戦略的投資家を呼び込むことが可能となり「新規株式公開に向けた道筋が開けた」と分析している。GMの株価は、SVFの出資が発表された5月31日に前日比13%増の動きを見せており、投資家の関心の高さをうかがわせている。
■ソフトバンクのライドシェア事業と連携も
また、ロイターによると、GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)はクルーズAVを商用ライドシェア向けに来年から展開する計画は軌道に乗っていると説明したうえで、GM独自の配車・配送サービス事業計画を維持しながら、ソフトバンクが出資している米Uber(ウーバー・テクノロジーズ)や中国の滴滴出行(Didi Chuxing:ディディチューシン)、インドのOla(オラ)、シンガポールのGrab(グラブ)などとの連携も探る可能性を示したという。
【参考】ソフトバンクのライドシェア事業については「【速報】ライドシェア乗車数、1日3500万回 ソフトバンク傘下Uberなど4社|自動運転ラボ 」も参照。
孫社長が決算発表後に明らかにしています 【速報】ライドシェア乗車数、1日3500万回 ソフトバンク傘下Uberなど4社 https://t.co/gA7ekvbfnt @jidountenlabさんから
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) May 9, 2018
予定通りクルーズAVが商品化され、クルーズの株式上場やソフトバンクが出資する各社との提携などが実現すれば、SVFが手にする投資収益は計り知れない額になりそうだ。
自動運転分野においてライドシェア企業を中心に出資しているSVFの狙いも、実はここまでの流れを見越してのものなのかもしれない。