自動運転技術を手掛ける米スタートアップ企業のVoyage(ボヤージュ)は2021年3月17日までに、公式ブログにおいて、GM子会社で同業のCruiseによって買収されることを明らかにした。
Cruiseは、エンジニアで起業家のKyle Vogt氏らが2013年に設立した企業で、2016年3月にGMに5億8,100万ドル(約640億円)で買収され、自動運転タクシーの商用サービスの開始に向けて現在取り組んでいる。
GMはVoyageを買収することで技術開発力をさらに高める考えとみられる。
■「高齢者コミュニティ」に特化してきたVoyage
Voyageは2017年にカリフォルニア州で設立された新興企業で、共同創業者としてはOliver Cameron(オリーバー・キャメロン)氏などが名を連ねている。Cameron氏は以前、フォーブスの「30アンダー30」に選出されたこともある人物だ。
Voyageは2019年、英高級車メーカー大手ジャガー・ランドローバーの技術投資部門「InMotion Ventures」などから総額3100万ドル(33億円)の資金調達を行っているが、ほかの自動運転開発企業に比べると資金調達額は少なめで、高齢者向けの自動運転移動サービスに特化して取り組みを進めてきた経緯がある。
具体的には、サンノゼやフロリダの高齢者向け住宅地の「私道」で実証実験に取り組んできた。「私道」に着目した背景としては、公道での自動運転タクシーの実現よりもサービスローンチのハードルが低いこともあるようだ。
一方で、公道での自動運転タクシーの実現に向けた技術開発も進めており、安全要員が乗った状況での公道実証の許可をカリフォルニア州から取得したことでも知られている。
報道などによると、Voyageには約60人の従業員がおり、その約半分が今回の買収によってCruiseにメンバーとして参加するようだ。
■買収が相次ぐ自動運転業界、進む業界再編
自動運転業界では昨年から今年にかけて買収が相次いでおり、業界再編が進んでいる。
最近では、自動運転開発企業の米AuroraがLiDAR企業OURS Technologyの買収を発表している。LiDAR企業の買収は2019年のBlackmoreに続くもので、2020年12月には米配車サービス大手Uberの自動運転開発ユニットも買収している。
【参考】関連記事としては「自動運転開発のAurora、止まらない買収攻勢!LiDAR企業をさらに1社吸収」も参照。
Mobileyeを過去に買収している米Intelも2020年5月、自動運転タクシーの事業展開を視野に入れた新たな買収を発表している。イスラエルのMaaS企業Moovitの買収だ。Mobileyeの自動運転技術とMoovitのMaaS技術を組み合わせ、自動運転タクシーを世界展開したい考えのようだ。
市場の有望性から自動運転関連企業が続々と設立されているが、自動運転技術や自動運転サービスはさまざまな要素技術などを必要とすることや、研究開発に多額の資金が必要となることを考慮すると、今後もこうした買収は続くものとみられる。
【参考】関連記事としては「自動運転領域、過去の巨額買収まとめ 終わらない技術獲得競争」も参照。