自動運転エンジニアの年収・給与はいくら? 技術者の転職事例も紹介

シリコンバレーでは平均3300万円、日本は?



自動運転の開発競争とともに度々話題に上がるのが技術者の移籍だ。経営を左右するほどの大物幹部がライバル社に移籍すれば、それだけで大ニュースになる。高い技術力を持ったスタートアップ企業が高額で買収されるように、高い技術力を持った技術者も当然高い価値を見出されている。

■シリコンバレーなどでは平均3300万円、新卒で2000万円超も

Forbesが2017年3月に報じた記事によると、シリコンバレーなどを含むカリフォルニア州西海岸の「ベイエリア」におけるAI分野などの自動運転技術者の報酬の幅は、23万2000ドル(約2500万円)〜40万5000ドル(約4000万円)。平均では29万5000ドル(約3300万円)ほどに上るという。

これはカリフォルニア州における世帯年収の中央値である6万4500ドル(約700万円)の4倍以上で、全米平均の5倍以上の金額という。シリコンバレーでは、あまりのエンジニア不足に新卒に2000万円超の年収を出すこともあるそうだ。

特殊な事例だが、グーグル系ウェイモ社からライバルのウーバー社に移籍したエンジニアは、機密情報を流したとして後に訴えられることになるが、132億円以上の報酬を受け取ったとされている。

【参考】アメリカのEV大手テスラなども人材の流動性が高いことを懸念し、組織再編に乗り出している。詳しくは「米EV大手テスラが組織再編へ 有力幹部、グーグル系自動運転部門ウェイモへ移籍」を参照。

■日本では高くても2000万円相当? AIエンジニアの需要高く

日本に視線を戻すと、自動運転の分野ではないが、衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイが2018年4月に「7人の天才と50人の逸材求む」と表明し、AI(人工知能)や人間工学、行動経済学などの博士や研究員、ウェブデザイナーやITエンジニアらを対象に、最大7人の天才枠に報酬1000万~1億円、最大50人の逸材枠に同400万~1000万円とする求人情報を出し、話題をさらった。

自動運転関連分野では、さすがに1億円の値は見当たらないものの、自動運転無人タクシーや自動運転バスなどの開発を進めるDeNAは、AI研究開発エンジニアのキャリア採用に月給約29万円〜125万円を提示している。月給125万円だと、年収1500万~2000万円相当になると思われる。

また、部品メーカー大手のデンソーは自動運転の実現に向けたAIを活用したアルゴリズムの研究開発や自動運転用認識システム開発の募集モデルとして「45歳(大卒入社18年目)扶養家族2人 固定給年額1150万円」などと例示している。著しく高額とは言えないが一定水準以上であり、日本の平均所得と比べると言わずもがなである。

■自動運転業界への転職で年収はあがる? 事例を紹介

転職サイトに登録されている自動運転関連の求人はここ数年で数倍に膨らんだと言われており、増加傾向はまだまだ続く見込み。高いニーズを背景に、AIを中心としたエンジニアの待遇もまだまだ上昇しそうな勢いだ。

【参考】自動運転業界への転職関連情報などについては「運転業界への転職に役立つ求人サイト5選 掲載数ランキング付き|自動運転ラボ 」も参照。自動運転関連事業を手掛ける各社の採用ページについては「自動運転業界の技術者・エンジニア採用ページ12社分を総まとめ|自動運転ラボ 」も参照。

では実際にどのような転職の事例があるのか? 記事の最後に自動運転業界へ転職した人の事例を紹介したい。

■事例①44歳Aさん:社内SE→完成車メーカーに転職

商社で社内システムエンジニアとして働いていたAさん(44歳)は、国内の大手完成車メーカーに転職。自動運転システムの開発に携わるようになり、年収は前職の1.3倍に上がった。勤務体系に関する相談にも快く応じてくれたという。

■事例②29歳Bさん:中堅光学機器メーカー→車載向けセンサー開発企業に転職

また、新卒で中堅光学機器メーカーに就職したBさん(29歳)は、転職サイトのエージェントから「現場の雰囲気がとても良い」と言われたことを信じて、車載向けセンサーを開発する企業に転職。待遇面はまだ大きく変わっていないが「未来に向かっているようなムードがあり、将来に期待が持てる」と笑みをこぼす。

■事例③38歳Cさん:フリーSE→自動車メーカーに転職

フリーのシステムエンジニアとして生計を立てていたCさん(38歳)は、40歳を目前に控え不安定な収入に不安を感じていたが、よりどころであるプログラミングのスキルを武器に一念発起して半導体メーカーや自動車メーカーなど数社に応募し、自動車メーカーへの採用が決まった。最初は保守点検系の仕事を任されていたが、徐々に開発の分野に回されるようになったと言い、「人手不足のせいもあるが、チャンスがたくさん転がっている。年収は、前が低過ぎたこともあるが3倍を超えた」と満足げな表情を浮かべている。

■事例④33歳Dさん:電機メーカー→コネクテッドカー開発企業に転職

電機メーカー勤務でIoT関連の開発経験が長いDさん(33歳)は、転職サイトに登録したところすぐに企業側からオファーが来て驚いたという。面接日程の調整なども転職サイトが支援してくれたため、非常にスムーズに転職活動を終えた。現在はコネクテッドカーの開発に携わっており、年収は500万円から600万円に増加。さまざまな企業と関わりを持ちながら充実した日々を過ごしているという。

■技術者・エンジニアニーズや年収推移、引き続き高い水準続く見込み

自動運転業界の開発競争は今後さらに増すと考えられている。まだ自動運転業界は黎明期にあるとも言える。今後、完全自動運転社会の実現がより現実味を帯びていく中、エンジニアの人材需要は継続して引き続き高い状態が続き、転職市場も活況が続くと見られる。年収・給与相場が今後どう推移していくのか、注視していきたい。

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