トヨタ決算発表は5/12!私が章男社長に質問したい7つのこと 自動運転、コロナ、五輪…

未来に希望を持てる明るい話題は出るのか

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トヨタ自動車の豊田章男社長=出典:トヨタ自動車ニュースリリース

トヨタは2020年3月期(2019年4月~2020年3月)の決算を5月12日に開示すると発表した。新型コロナウイルスの影響で数字面では耳をふさぎたくなる場面があるかもしれないが、メディア向けの説明会などで同社の最新の動向や戦略が語られる貴重な場でもある。時に豊田章男社長自らがスピーチし、ビッグニュースを放つことも珍しくない。

そこで今回は、自動運転をはじめとしたCASE関連で「豊田章男社長に質問したいこと」を7項目考えてみた。

ホンダ自動運転レベル3を年内に発売すると言っているが、トヨタはどうか?

国内ではホンダがいち早くレベル3戦線に身を投じる構えを見せており、トヨタをはじめとした他社の動向が気になるところだ。

トヨタはこれまで「Mobility Teammate Concept」のもと自動運転の開発を進め、自動車専用道路において入口ランプウェイから出口ランプウェイまで自動走行することを可能とする「Highway Teammate(ハイウェイ・チームメイト)」を2020年、一般道路での自動運転を実現する「Urban Teammate(アーバン・チームメイト)」を2020年代前半にも投入する目標を掲げている。

ハイウェイ・チームメイトは、車載システムが交通状況に応じて適切に認知・判断・操作することにより、自動車専用道路での合流やレーンチェンジ、車線・車間維持、分流などを実現する、レベル3相当と思われる技術だ。

同技術は、2015年に首都高速道路での合流や車線維持などを自動運転で行うデモ走行を行うなど早くから実用化に向けた開発が進められており、現在では限りなく完成域に達しているものと思われる。

ただし、高速道路の本線上に限らずランプウェイ間でレベル3を実現することにこだわっている場合、当然不確定要素も多くなるため、全国各地のランプウェイを網羅すべく時間をかけて精度を高めている可能性もありそうだ。

また、量産車へのレベル3搭載は基本的にフラッグシップモデルから始まると想定されるため、トヨタの場合レクサス車やセンチュリー、クラウンあたりが見込まれるが、LiDAR(ライダー)など複数のセンサーを搭載するため、デザインや構造に大きな変化が必要となり、フルモデルチェンジ、最低でもビッグマイナーチェンジを要する可能性が高い。こうしたタイミングも重要になりそうだ。

■新型コロナウイルスによってしばらく売上減は避けられないと思うが、自動運転を含む先進技術の開発の手を緩めないか?

第3四半期(2019年4〜12月期)まで好調に推移していた業績が、コロナウイルスの影響によって通年で下方修正を余儀なくされている。他社では、最終赤字に転落する見通しを報じられたところもあり、自動車業界は総じて苦境に立たされている。コロナウイルスの影響はいまだ尾を引いており、新年度の予算組みに影響を与えるのは必至の情勢だ。

過去、リーマンショック(2008年9月~)の際は、営業利益(連結)が2008年3月期の2兆2703億円から2009年3月期には4610億円の赤字に急落した。2010年3月期は1475億円と持ち直している。

その間の研究開発費は、2008年3月期に過去最高となる研究開発費9588億円が計上されたが、翌2009年3月期は9040億円、2010年3月期は7253億円と減少した。なお、2011年3月期は7303億円と持ち直し、再び右肩上がりの傾向を見せている。

営業利益こそ2010年にプラスに持ちなおしたものの、相当体力を削られたことに間違いはない。無い袖は振れないというわけではないが、研究開発費にも影響が出るのは必然と言えるだろう。

ただ、リーマン当時も、開発効率化により費用を低減しつつも環境・エネルギー・安全技術に関する先行・先端開発をいっそう推進する方針を打ち出しており、研究開発の手を緩めることはなかったようだ。

2021年3月期は、コロナウイルスという非常に予測しづらい要素を抱え、生産や販売への影響が避けられない年度となる。研究開発費も削減される可能性が高そうだが、集中と選択によって進めるべき開発にはしっかりとGOサインを出すものと思われる。

特に、実用化に向け重要な時期に差し掛かった自動運転分野の開発においては、決してその手を緩めることはないと期待したい。

■東京オリンピックが1年延期されたが、この1年でどのようなパワーアップを図るか?

東京2020オリンピック・パラリンピックが1年延期される見通しとなった。ワールドワイドパートナーを務めるトヨタは、大会専用開発車両を含む電動車やロボットなどを総動員し、選手や大会関係者、来場者の移動や競技のサポートを行う予定で、大会に導入する五輪仕様の自動運転EV(電気自動車)「e-Palette(イーパレット)」や各種ロボットなどをすでに発表している。

五輪におけるこうしたモビリティは、大会を支援するのみならず、最新技術を世界に広く発信する意味合いも強く、自動運転関連業界からの注目度も非常に高まっていた。

五輪の延期によりタイミングを逸した感はぬぐえないが、新たに1年の開発期間を得たと捉えれば、いっそう高度な技術やサービスを提供できる可能性が広がる。

2020年をめどに実用化が進められているレベル4技術なども、実用実証を経た形で五輪に絡めることができる。また、MaaSなども1年間で大幅な進化を遂げている可能性がありそうだ。

1年延期をチャンスと捉え、世界を驚かせるようなモビリティを披露してもらいたい――という期待から、2021年に向けどのようなパワーアップを図っていくのかをぜひお聞きしたいところだ。

【参考】五輪延期をチャンスに変える観点については「五輪延期、披露予定だった自動運転に「さらに進歩の余地」【自動運転ラボ・下山哲平】」も参照。

■イーパレットの社会導入を見据えた進捗は?

MaaS専用次世代EV「イーパレット(e-Palette)」がCES2018で披露されてから2年余りが経過した。2020年代前半に米国をはじめとしたさまざまな地域でのサービス実証を目指すこととし、DiDiやUber、アマゾン、マツダ、ピザハットが初期メンバーとしてアライアンスを組み、サービスや技術開発に向け実証事業をともに進めていく予定で、これらの進捗状況がそろそろ気になるところだ。

東京五輪での披露は延期となったが、2020年代前半はもう始まっており、実用化に向けた取り組みは水面下で進行しているものと思われる。

冗長性を持たせた自動運転システム・プラットフォームと、多目的に活用可能な車内空間を持つイーパレットは、自動運転を活用したモビリティサービスの象徴とも言える存在だ。

サービスが具体化されるギリギリまで情報を伏せている可能性もあるが、できれば現在における進捗状況を聞きたいところだ。

■自動運転配送ロボットなどの分野への進出は考えているか?

自動運転技術を生かしたサービスは、タクシーやバスなどのモビリティに留まらず、配送車両や宅配ロボット、警備ロボットなど応用分野は大きく広がっていが、こうした分野への進出意向を尋ねてみたい。

自動車用に自動運転技術の開発を重ねてきた企業であれば、これを応用するのはそれほど難しくないように思える。トヨタはロボット開発にも力を入れており、2019年にはサービスロボットの早期実現を目指し、AI開発を手掛けるPreferred Networksとトヨタの生活支援ロボットHuman Support Robotをプラットフォームとして共同研究開発を行うことを発表している。

また、社内有志が自由時間に開発したバスケットボールロボットCUE(キュー)などもあるようだ。開発の裾野は深く、技術レベルも非常に高度だ。

こうした自動運転技術とロボティクスの知見を生かし、配送ロボットなどの開発に着手しないのだろうか。世界各国の自動車メーカーも同様だが、道路を走行する車両タイプ以外の開発には消極的な印象が強い。

自動車メーカーとしてのプライドなのか、何かしら境界線があるのかわからないが、一度こうした分野への進出意向を聞いてみたいものだ。

【参考】配送ロボットについては「ラストワンマイル向けの物流・配送ロボット10選」も参照。

■スマートシティ構想に向けたパートナーシップやロードマップに関しての考えは?

2020年の年初めから大きな話題となったトヨタのスマートシティ構想。静岡県裾野市の工場跡地を活用し、コネクティッドシティ「Woven City」を構築する予定だ。この構想に関するパートナーシップやロードマップについて詳細を聞いてみたい。

Woven Cityは、自動運転やMaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、AI技術などを導入・検証できる実証都市として位置付けている。

スピードが速い車両専用の道と歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存する道、歩行者専用の道に3分類し、それらの道が網の目のように織り込まれたまちを形成し、e-Paletteが人の輸送やモノの配達に加え、移動用店舗などさまざまな役割・場所で活躍することなどを構想している。

2021年初頭に着工予定で、2020年3月には、スマートシティの実現を目指しNTTと業務資本提携を交わしたことが発表された。今後もさまざまな企業とパートナーシップを結び、実証都市としての性質を色濃くしていくものと思われるが、その際一社一社個別に対応するのか、あるいはコンソーシアムのような形で大々的に募集をかけるのかなど、どういった体制で構想を進めていくのだろうか。

また、2021年の着工後、どのようなロードマップを描いているのか。夢溢れる一大プロジェクトのため、関心は高まるばかりだ。

■UberやDiDi、Pony.aiらとの協業の先にどのような展開を見据えているか?

トヨタは2016年、Uberとライドシェア領域における協業を検討する旨の覚書締結を発表し、2018年には協業を拡大し、トヨタのガーディアンシステムを同社の自動運転キットと融合させたライドシェア専用車両を2021年にもライドシェアネットワークに導入するとしている。

また、2017年にはGrabと東南アジア地域における配車サービス領域で、2019年にはDiDiと中国におけるモビリティサービス領域の協業拡大に向けそれぞれ合意したことが発表されている。

2019年には中国で自動運転開発を手掛けるPony.aiとモビリティサービスの提供に向け提携を交わし、2020年2月には4億ドル(約440億円)を出資している。

トヨタは、こうしたモビリティサービスを手掛ける企業らとの協業の先に、どのような未来を見据えているのだろうか。コネクテッド技術を生かしたプラットフォームの展開が第一に挙げられるが、まだまだ奥深い戦略が見え隠れしている印象で、第二の矢、第三の矢もすでに構想しているのではないだろうか。

「自動車をつくる会社」から「モビリティカンパニー」へのモデルチェンジを図るトヨタの本質が、ここに秘められていそうだ。

■【まとめ】未来に希望を持てる明るい話題を!

このほかにも、MaaSアプリ「my route」やMONET Technologiesの動向といったMaaS戦略など、聞いてみたいことは山のようにある。

世界経済が不透明感を増しているが、当日はこういう時期だからこそ未来を照らすような明るい話題が出ますように。

【参考】関連記事としては「【保存版】トヨタ×自動運転の全てが分かる4万字解説」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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