五輪延期、披露予定だった自動運転に「さらに進歩の余地」【自動運転ラボ・下山哲平】

投資を活発化させた企業が勝ち組に



自動運転ラボ発行人の下山哲平=撮影:自動運転ラボ

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピックが延期された。オリンピックでは最高位スポンサーがトヨタ自動車だったこともあり、競技会場や選手村では自動運転技術を活用したさまざまな車両やロボットが活躍する予定だった。

オリンピックの延期で日本の自動運転技術を世界に披露する直近の機会が流れた形だが、自動運転ラボ発行人の下山哲平は「あと1年、『さらに進歩する余地』が与えられた」とし、決して自動車業界にとってマイナスではないと強調する。







その上で、「2021年のオリンピックで活躍する自動運転車は、おそらく我々が2020年の五輪で想像できていたようなレベルを大幅に超えてくるはず」と語り、さらに高度になった技術を来年世界に向けてアピールできる結果になると予想する。

果たして東京オリンピック延期は日本の自動車業界にとってはプラスなのか、マイナスなのか。自動運転業界の最前線で企業動向や技術開発の状況を分析してきた下山の見方とは?

■1年延期は「さらに進歩する余地」
Q 東京オリンピックが延期となり、五輪に合わせて自動運転技術を披露する機会が先延ばしになった。これは日本の自動車業界にとってプラスなのかマイナスなのか。

下山 2020年はオリンピック開催で日本が注目を浴びるタイミングになる予定だったことから、トヨタに限らず自動運転関連でビジネスを張っている企業はこの夏に大規模実証実験の実施やサービスのプレローンチなどを目指し、自動運転領域へ投資してきました。

また、まだ世の中が「自動運転って未来の話でしょ?」となっている中でリアリティある自動運転車両やtoC向け(消費者向け)の自動運転タクシーなどを披露すれば、自動運転の認知や期待感が一般の間でも広がります。そうすればより企業側の投資意欲も増し、自動運転領域への投資と研究開発が一気に加速する「ポジティブスパイラル」が期待されていました。

そうした中での延期決定ですが、このことは決して自動車業界や自動運転業界にとってマイナスだとは言えません。2020年は日本で自動運転レベル3が解禁され、夏には実証実験とはいえ自動運転タクシーが都心を走行します。つまり2020年は自動運転の技術の進歩が加速する1年となり、2021年には今よりさらに進化した自動運転技術を世界に向けてアピールできるのです。

また1年後のオリンピックは新型コロナウイルスに打ち勝ったというムードで、2020年開催よりもさらに世界から注目を集めるかもしれません。

■いま投資を活発化する会社が将来の勝ち組に
Q 新型コロナウイルスの感染拡大が経済に大打撃を与えている中、業界各社は自動運転への投資についてどう考えるべきか。

下山 新型コロナウイルスの問題などで経済情勢が大きく変動しているものの、自動運転領域は未来のビックマネーを掴むための「先行投資」領域であることは間違いありません。だからこそ、足元の景況感に振れることなく今こそ未来に向けた自動運転領域への投資を活発化する会社が、将来の自動運転ビジネスにおける勝ち組になると考えています。

オリンピック延期により、自動運転業界がさらに技術開発やサービス開発に積極的に投資をするきっかけになることを願っていますし、そうなるために自動運転ラボとしても、より積極的に「モビリティの未来」「自動運転を活用したビジネス」が明るいと自信を持って言えるようなニュースを提供いきたいと考えています。

■終息後に各社の「とっておき」の発信の場を
Q ただ、このまま各社が準備をしてきた現時点での技術が披露されないのは寂しい気も。来年のオリンピックを前に業界として何かできることはないのか。

下山 今年のオリンピックに向けて準備してきた車両やサービスがお披露目される場がなくなったのは残念です。2020年の夏段階で日本の自動運転技術はここまで進化しているんだ、と発信できる場が何かしらの形で実現すればいいと考えています。

日本の自動車メーカーや自動運転技術を開発する企業の中には、本来であれば去年の「東京モーターショー」や今年1月にアメリカで開催された「CES 2020」などでお披露目できる技術を、今年のオリンピックの「とっておき」として残しておいた企業もあるはずです。

新型コロナウイルスの終息時期次第ではありますが、終息ののちには「自動運転業界」に従事する様々なレイヤーの企業が集まり、「2020年夏の自動運転」を発信できる場が作れると良いと思います。自動運転ラボとしてもそのような業界への働きかけを積極的にしていくつもりです。

■インタビューを終えて

自動運転技術は、事故を限りなく減らし、人々の生活を便利にし、そして感染症や災害時などでも役に立つ。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、自動運転車や自律走行ロボットが医薬品の運搬や消毒液の散布に活躍しており、自動運転技術の有用性に対する注目度は一層高まっている。

そう考えれば来年2021年のオリンピックでは、世の中の目はより自動運転技術にむくことが考えられる。オリンピックの延期は自動運転業界にとって決してマイナスな面ばかりではないのだ。

下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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