自動運転やAIを学べる講座&教材を一挙まとめ

学習方法多角化、社内教育に変革の兆しも





自動運転の実用化が本格的にスタートする見込みの2020年を迎え、開発競争が一段と熱を帯びている。まずはトップバッターとして業界のリードオフマンをめぐる競争が拍車を増し、続けてエースで4番をめぐる競争が過熱してくるのだろう。







こうした競争を支えるのが、AI(人工知能)技術をはじめとした高度なIT技術を持つエンジニアだ。最先端技術の宝庫と言える自動運転業界ではこうした人材の確保が一つの課題となっている。

一方、経済産業省は2020年における先端IT人材は5万人不足すると試算しており、不足したパイを奪い合う競争そのものが過熱しているのが現状と言えるだろう。

今回は、人材育成の観点から自動運転を学べる講座をオンライン・オフラインに分け、紹介していこう。

■オフライン系:研修
アイデミーとユーザーローカル「自動運転AIプログラミング研修」

AI教育研修ベンチャーのアイデミーとAI・ビッグデータ分析を手掛ける技術ベンチャーのユーザーローカルは2019年3月、自動運転のためのディープラーニング技術を学べるプログラミング研修「自動運転AIプログラミング研修」を開講すると発表した。

自動車関連メーカーやAIを使ったロボティクスの導入を検討している製造業向けに提供するもので、自動運転の基礎となるディープラーニング技術や画像認識プログラミング、センサーを使った機械制御を実際に試しながら学ぶことができる。

具体的には、10分の1サイズのRCカーやシミュレーターなどを活用しながら、画像認識による道路判定やディープラーニングによる自動ステアリング操作、信号機や標識などの物体認識AI、自動ブレーキ・システムの開発、自動追尾によるオートクルージングの実装などを習得することができる。

【参考】自動運転AIプログラミング研修については「AI学習のアイデミー、製造業エンジニア向けに自動運転AIプログラミング研修を提供」も参照。

自動運転システム構築塾(ティアフォーアカデミー)

自動運転OS「Autoware」の開発を手掛けるティアフォーと日経BP総研による4日間の短期講座だが、自動運転やAI、ロボットの専門家による座学「最前線&未来展望セミナー」をはじめ、自分の手で自動運転システムをつくる「ソフトウエア演習」、完全自動運転の世界を体感する「自動運転車実習」と非常に濃いメニューが組まれている。

ソフトウエア演習では、自動運転システムの研究開発プラットフォームとして広まりつつあるROSの演習や、オープンソースソフトウェア「Autoware」を使って、自動運転システム各機能の基礎を習得する。また、自動運転車の実習では自動車教習所に会場を移し、3次元地図を利用して交差点の右左折や信号認識による停止・発進などを体験する、Autowareと自動運転車を組み合わせた走行実習を行う。

演習で用いた各種プログラムや地図データなどは持ち帰ることが可能で、復習や独自の学習などにも活用できそうだ。

■オフライン系:大学におけるリカレント教育
各大学が社会人教育を強化

名古屋大学は、学外向け講座として産学連携のもと分野横断型の教育プログラム「先進モビリティ学」を2017年度に開始している。

春学期15回、秋学期15回の座学や実習により、車の基本的な仕組みから法制度、デジタルエンジニアリング、通信技術、画像認識、車両制御、モビリティサービスといった知識の習得から、10分の1サイズのモデルカーを用いた自動運転実習や、フォーミュラカーなどを用いたEV実習なども組み込まれている。

協力企業には、トヨタやケーヒン、ヤマハ発動機などが名を連ねているようだ。

NEDOは東大など拠点にAIデータフロンティアコース

一方、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)はAI分野の人材不足に対応するため、特別講座の一環として東京大学、大阪大学を拠点にAIデータフロンティアコースを開講している。

受講者は最短半年間でAI知識を体系的に習得でき、製造現場や顧客行動など実社会におけるさまざまなデータセットを用いた演習を通じて、データの構築方法や解析手法といったAI技術を身につけることができるほか、拠点を中心にシンポジウムやワークショップも開催しており、多方面の人材交流や関連技術を含めたAI分野の新たな技術シーズの発掘、技術の応用・発展に資する取り組みも行っている。

東京大学ではスマートファクトリーBコース、インテリジェントカーコース、スマート農林畜産コースを開講しているようだ。

九州・中国地方では大学連携で人生育成事業

同様に、九州・中国地方では、北九州市立大学、九州工業大学、広島市立大学、熊本大学、宮崎大学が連携し、「Society5.0に対応した高度技術人材育成」事業として社会人を対象にAIやロボット技術などを身に着ける実践的な教育プログラムを実施しており、期間によるがインテリジェントカーコースなども用意されている。

このほかにも、早稲田大学は情報技術の実務経験を有する社会人などを対象とした人材育成事業「スマートエスイー」を実施しており、AIやIoT、ビックデータの各技術などを習得するプログラムを開講している。

AIをはじめとした人材育成の必要性から国は社会人を対象としたリカレント教育にも力を入れており、国内各地域の大学が事業採択を受けAIに関するカリキュラムを展開しているようだ。

■オンライン系

AIに関するオンライン講座は国内外問わず増加傾向にあるが、自動運転に直接結びつけた講座は意外と少ないようだ。ここでは、ハイレベルな専門技術を習得できるCourseraとUdacityを紹介しよう。

Coursera:世界各国の大学が協力

米スタンフォード大学の教授らが2012年に設立したCourseraは、世界各国の大学の協力のもと質の高いオンライン講座を提供している。

ニューラルネットワークとディープラーニング、アルゴリズム、マシンラーニング、Python によるマシンラーニング、ロボティクス、ブロックチェーン技術などの各講座をはじめ、自動運転専門講座では以下の4コースが用意されている。

  • Introduction to Self-Driving Cars(自動運転入門)
  • State Estimation and Localization for Self-Driving Cars(自動運転車の状態推定とローカリゼーション)
  • Visual Perception for Self-Driving Cars(自動運転車の視覚・認識)
  • Motion Planning for Self-Driving Cars(自動運転車の行動計画)

週4時間ペースの場合約7カ月で修了でき、修了証明書も発行される。業界の経験者向けの上級レベルで、字幕言語は英語・スペイン語のようだ。

Udacity:世界の有力企業が協力

Udacityは、Google Xの創設者で数々の自動運転プロジェクトを率いた実績を持つSebastian Thrun氏らが2012年に立ち上げたオンライン講座で、初歩から応用に至るあらゆるプログラミング技術の講座を提供している。

自動運転関連のメニューとしては、以下などが豊富に用意されている。

  • Intro to Self-Driving Cars(自動運転入門/週10時間4カ月)
  • Self-Driving Car Engineer(自動運転車のエンジニア/週15時間6カ月)
  • Sensor Fusion Engineer(センサーフュージョンのエンジニア/週10時間4カ月)
  • Robotics Software Engineer(ロボットソフトウェアエンジニア/週10~15時間4カ月)
  • Flying Car and Autonomous Flight Engineer(空飛ぶクルマと自動飛行エンジニア/週15時間4カ月)
  • Data Structures and Algorithms(データ構造とアルゴリズム/週10時間4カ月)

「Self-Driving Car Engineer」では、独メルセデスベンツや米ウーバー、米エヌビディアなどがパートナーシップのもと協力するなど、世界有数の企業による協力が多いのが魅力だ。

■教材系

オンライン講座の弱点は、プログラミング関連以外の実習を伴わないことに尽きる。実際に車両がどのように制御されるのかなど、直接体験することも重要だ。

こうした体験を補うオンライン講座として、「教材ビジネス」が挙げられる。価格上、初歩技術を搭載したラジコンレベルに留まることが多いが、新入社員やAI初心者向けの導入教材としては最適とも言える。また、将来的にはシミュレーター技術やVR(仮想現実)技術などを応用することで大幅な進化を見せる可能性もありそうだ。

アフレル:AIロボットカーでディープラーニングを学習

ロボット技術を駆使した教育支援サービスを手掛けるアフレルは2020年1月、ロボットカーの自動走行システム作りを通してディープラーニング技術を学ぶ教材「ロボットではじめる深層学習 TensorFlow×教育版EV3自動走行」を開発したと発表した。

AIエンジニアに必要な深層学習に関して、カメラを搭載したロボットカーで画像データ収集を自動化し、機械学習に用いるためのオープンソースのフレームワーク「TensorFlow」を用いた深層学習で自動走行させていく実践的な教材となっている。

アールティ:AIミニ四駆の学習キットを製品化

ロボット開発を手掛けるアールティも、自立走行や遠隔操作が可能な「AIミニ四駆」を実現する制御ボードや、AIやマイコン、センシング技術を学べる小型移動ロボットなどの学習キットを製品化している。

ロボティクスや自動運転の基礎を手軽に体験し、イメージをつかむのにぴったりな商材だ。

■企業の動き
東芝やパスコがAI人材教育プログラムを開発

東芝は2019年11月、東京大学大学院情報理工学系研究科と共同でAI技術者育成プログラムを開発すると発表した。社内のAI技術者育成を強化するため「東芝版AI技術者教育プログラム」を開発し、2022年度までにグループ内のAI技術者を現在の3倍にあたる2000人体制に増強する構えだ。

AIの研究開発をいっそう進めるため、同年7月に東大と「東芝版AI技術者プログラム」を開発しており、これを社内教育に生かすことで、古典的な機械学習から最新のディープラーニングに至るAI手法をはじめ、グループが保有する現場のリアルなビックデータを分析する機会を提供することで、より実践的なAI技術の習得を可能とし、ビッグデータの利活用を推進できる優秀なAI人材を短期間で育成するとしている。

また、デジタル地図をはじめとした空間情報を手掛けるパスコは2020年3月、東京大学エドテック連携研究機構とAI人材の育成に特化した独自の教育プログラムを共同で開発し、2020年度から同社における空間情報技術者を対象に本格的な教育を開始すると発表している。

企業ぐるみの教育体制構築が盛んに

自己決断のもと個別にスキルアップを図る社員の存在は魅力的だが、自動車メーカーなどは自動運転に対応できない言わば「旧型スペック」のエンジニアを大量に抱えており、企業としてはこうした社員を総体的に変えていく必要があるため、企業として人材育成に取り組む動きは今後も加速するものと思われる。

マーケットとしても、個々のエンジニアが実費で受けるものよりも、企業が原資負担する教育マーケットの方が効率的かつ安定するため、確実な伸びを見せる可能性が高い。

国が推進するAI人材育成の観点からも、自動運転関連企業と教育系企業や大学との人材育成面における連携は今後ますます盛んになりそうだ。

■【まとめ】社員教育改革で全体最適化 人材育成の新たなマーケットに

すでに大量のエンジニアを抱えている大企業は、これら社員のスキルアップを図らぬ限り全体の底上げは達成できない。外から優秀な人材を新たに獲得しても、その技術や考えに付いていくことができる者がいなければチームを成し得ないからだ。

東芝やパスコの例のように、社員教育に新たなプログラムを開発・導入し、効率的に全体最適化を図る動きは今後増加する可能性が極めて高い。AIをはじめとしたエンジニア育成の新たなマーケットとして注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転技術を勉強するための10の方法」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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