自動運転技術を勉強するための10の方法

深層学習を学ぶロボットカー教材も登場



自動運転技術の社会実装が年々高まり、少しずつではあるが自動運転が身近な存在となってきた。過熱し続ける開発現場では専門知識・技術を有するエンジニア不足が常態化し、人材育成が一つの社会課題となっている。







また、MaaS(Mobility as a Service)に代表されるように異業種との結びつきも強まっており、「自分とは関係ない技術だ」と高をくくっていると後々後悔する可能性もありそうだ。

今回は、自動運転技術に関心を持つ人におすすめしたい自動運転技術や業界の勉強方法を紹介していこう。

■本を読んで学ぶ(初~中級者向け)

初心者にうってつけなのが、自動運転技術などを解説・紹介した書籍だ。多くは入門レベルの情報を主体に読みやすい構成をとっているが、中には専門知識を中心に扱うものもある。

例えば、日経BP社の「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解自動運転/林哲史氏」や、日刊工業新聞社の「トコトンやさしい自動運転の本/トロンナムチャイ・クライソン氏」などは初心者にもわかりやすく自動運転の仕組みを解説している。

また、日経BP社の「MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ/日高洋祐氏ほか」や、日本経済新聞出版社の「CASE革命 2030年の自動車産業/中西孝樹氏」などのように業界の動向を学ぶ書籍や、リックテレコムの「Autoware:自動運転ソフトウェア入門/安積卓也氏ほか」のように特定のソフトウェアに特化した解説本なども発行されている。

日刊工業新聞社の「自動運転のためのセンサシステム入門/伊東敏夫氏」や、森北出版の「自動運転(第2版)システム構成と要素技術/保坂明夫氏など」などは、専門知識を豊富に盛り込んだ解説本となっている。

日進月歩で進化する自動運転業界は日々情報が更新されているため、新刊も続々と発売されている。定期的にチェックし、自分に合った一冊を見つけてもらいたい。

【参考】自動運転関連書籍については「自動運転やMaaSやCASE関連のおすすめ解説本10選」も参照。

■セミナーを受講する(初~中級者向け)

自動運転に関連したセミナーやシンポジウムもここ数年で爆増しており、耳目に触れる機会も多い。研究開発やビジネスの最前線に立つ有識者の生の声を聞ける貴重な機会だ。

無料セミナーも多く、企業の新規参入や新たな取り組みの喚起や社会受容性の向上などを目的に自治体が主催するケースも増加傾向にあるようだ。

また、セミナーをはじめ演習メニューなどを組み込んだ自動運転構築塾「ティアフォーアカデミー」なども開催されている。ティアフォーと日経BP総研の主催で、IT・エレクトロニクス企業やモビリティー関連企業、中小・ベンチャー企業などの社員を主な対象に、自動運転技術から新たなビジネスチャンスを創出する場として定期開催している。

15回目となる開催は名古屋で2020年2月25~27日、3月2日の4日間の日程で開催される。自動運転技術のインプットから実際に自動運転システムを作る演習、自動運転車体験などが盛り込まれており、先端研究者との人脈も作ることができるようだ。

【参考】自動運転ラボ発行人の下山哲平(株式会社ストロボ・代表取締役)による講演も。直近では、2020年2月21日(金)に愛知県名古屋市で開催される「次世代自動運転・コネクテッドカー・カンファレンス2020」(無料・事前登録制)、2020年3月3日(木)に東京都内で開催される「2020年に向けたMaaS市場の拡大とDeNA SOMPO Mobility/Carlifeの取り組み」(有料)、2020年3月12日(木)に東京ビッグサイトで開催される「第18回国際オートアフターマーケットEXPO2020」におけるブロードリーフグループのブース内セミナー(無料)に登壇する予定。講演・登壇情報については「こちら」から。

■技術者ブログを読んで学ぶ(初級者向け)

自動運転関連企業や技術者がブログ・SNSで発信する情報も有用だ。専門分野における取り組みや考察をはじめ、技術者の人柄や職場の雰囲気なども垣間見れる。

例えば、自動運転開発を手掛けるティアフォーのブログでは、更新数が少ないもののAutowareにおけるObject Trackingアルゴリズムや遠隔監視・操縦システム、Autoware対応自動運転シミュレーターであるLGSVL Simulatorの活用事例、開発に用いている車両などが紹介されており、その中で認識技術などの役割について時にわかりやすく、時に専門的な見地から解説している。

また、同社CTO(最高技術責任者)の加藤真平氏のTwitterでは、講演や実証実験の様子をはじめ、開発中の技術や自動運転に関するトピックなどが発信されている。

SNSなどは解説を目的としないケースが多いため、学ぶという意味では断片的な情報が大半となるが、読み続けることで自動運転が自分の中で日常化し、身近に感じられることも多い。自分の視点とは異なる各研究者の考察から得られる気づきも多いだろう。

このほか、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」の活用も面白い。専門家が多く参加しており、国内外の経済ニュースなどに専門的な見地からコメントを発している。自動運転関連のトピックが持ち上がることも多く、どのようなニュースが発信され、どのような意見が出されているのかを拝見することができる。もちろん、自身もPicker(ユーザー)としてコメントすることが可能だ。

■ニュースを通じて学ぶ(初~上級者向け)

日々飛び交う自動運転に関するニュースに目を通すのも立派な勉強であり、学びの基本中の基本となる。業界の動向を把握し、どのような企業がどのような技術を開発しているかを知ることで、初級者は自身が目指すビジョンが定まり、中級者以上は最新技術の動向や可能性を模索することができる。

自動運転ラボのように自動運転に特化しつつも幅広いトピックを提供するサイトや専門知識を扱うサイト、企業動向を扱うサイトなどさまざまなメディアが存在する。

気になる企業のニュースを直接チェックするのも有用だ。多くの企業はプレスリリースも公開しているため、各社のホームページを一度見回ってもらいたい。

■オンラインサロンを活用する(初~中級者向け)

インターネットを介して有識者と交流可能なWEB上のコミュニティ「オンラインサロン」。拡大を続けるオンラインサロン市場は、自動運転分野も網羅している。

「技術革新を利用し、AIが台頭する時代を設計し続けること」を目的に、Windows95を設計した日本人として知られるプログラマーの中島聡氏や「iモード」の開発を手掛けた夏野剛氏らが2018年に立ち上げた一般社団法人シンギュラリティ・ソサエティは、6つの取り組みテーマの一つに「自動運転車と街」を据えている。

対象は、大企業の中でイノベーションを起こそうとしている人やベンチャー企業を立ち上げようとしている人、AIの進化に危機感とワクワク感を同時に感じている人など、未来を創造していく意志を持つ人。

発起人の中島氏や夏野氏らメンターから投げかけられる「自動運転社会はどうあるべきか?」などの課題について議論するほか、分科会活動やプロジェクト・インキュベーション、オフ会、発表会、起業支援、ビジネス・インキュベーションなどを実施しているようだ。

自動運転ラボもオンラインサロンをFacebook上に開設している。記事作成の参考としている各種資料の紹介やイベント情報などの発信が主体となっており、自動運転をこれから学びたい・知りたいという方はぜひ活用してみてほしい。

【参考】自動運転ラボのオンラインサロンへの参加は「こちら」から。

■教材で学ぶ(初~中級者向け)

古くからある学びの手法だが、教材を活用して先端技術を学ぶサービスもある。教育支援サービスを手掛けるアフレルは、ロボットカーの自動走行システムを作ることでディープラーニング技術を体験的に学ぶことができる教材「ロボットではじめる深層学習 TensorFlow×教育版EV3自動走行」を開発・販売している。

カメラを搭載したロボットカーで自動的に画像データを収集して教師データをつくり、TensorFlowを用いた深層学習でロボットカーを自動走行させる実践的な教材となっているようだ。

テキスト系の座学タイプはオンライン化が進んでいるが、こうした教材は大人も子供も馴染みやすいため、今後さまざまなタイプの教材が登場しそうだ。

■オンライン講座で学ぶ(初~上級者向け)

自動運転の中核をなすAI技術を中心にオンライン講座を展開するサービスも増加傾向にあるようだ。

Google Xの創設者で数々の自動運転プロジェクトを率いた実績を持つSebastian Thrun氏らが立ち上げたUdacityは、初歩から応用に至るまでさまざまなプログラミング技術の講座を提供している。

自動運転関連のメニューも豊富で、「Artificial Intelligence(人工知能)」「Deep Learning(深層学習)」「Flying Car and Autonomous Flight Engineer(空飛ぶクルマと自動飛行エンジニア)」「Intro to Self-Driving Cars(自動運転入門)」「Machine Learning Engineer(機械学習エンジニア)」「Robotics Software Engineer(ロボットソフトウェアエンジニア)」「Self-Driving Car Engineer(自動運転車のエンジニア)」といった講座が用意されているようだ。

講座では、NVIDIAをはじめとしたGPUベンダーや自動運転プラットフォーム「Autoware」のオープン化されている認知系技術のプログラムなども教材として利用されており、実用的な知識を習得できそうだ。

一方、米スタンフォード大学の教授らが設立したCourseraは、コンピュータサイエンスから社会科学、経済学など幅広いコースを提供しており、自動運転車専門講座として「Introduction to Self-Driving Cars(自動運転入門)」「State Estimation and Localization for Self-Driving Cars(自動運転車の状態推定とローカリゼーション)」「Visual Perception for Self-Driving Cars(自動運転車の視覚・認識)」「Motion Planning for Self-Driving Cars(自動運転車の行動計画)」の4コースが用意されている。

国内では、東京大学発スタートアップのアイデミーがAIプログラミング学習サービスに力を入れており、ティアフォー創業者の加藤真平氏もサービス監修に加わっている。

自動運転の開発に欠かせない深層強化学習発展コースなどの提供をはじめ、2019年には、ビッグデータ分析やAI開発を手掛けるユーザーローカルと協力し、製造業向けに自動運転ソフトウェアの開発やディープラーニング技術の実装スキルを学ぶことができる「自動運転AIプログラミング研修」も用意した。

エンジニア養成の観点からもAI分野の講座は需要が高まっており、codexaはPythonライブラリ「Numpy」の基本的な操作から線形代数、線形回帰、実践的な機械学習手法といった入門編から応用編までの各種カリキュラムを用意している。

【参考】アイデミーやユーザーローカルについては「AI学習のアイデミー、製造業エンジニア向けに自動運転AIプログラミング研修を提供」も参照。

また、Preferred Networksも、自社開発したオープンソースの深層学習フレームワーク「Chainer」のチュートリアルサイトを設けており、ディープラーニング入門としてプログラミング言語Pythonの基礎から機械学習やディープラーニング理論の基礎とコーディングまでを幅広く解説・公開している。

こうしたオンライン講座には、一定程度無料で受講できるサービスも用意されていることが多い。また、マイクロソフトの「Azure」やアマゾンの「AWS」といったAIを活用できるクラウドプラットフォームでも利用方法や解説サイトの類が散見される。これらのサイトから基礎知識を学ぶのも一つの手だろう。

■大会への参加を通じて学ぶ(中~上級者向け)

多くのエンジニアが腕を競うAIや自動運転関連の大会出場も、モチベーションの高揚や見識を高めるのに大いに有効となる。

アマゾンはAWSを活用し、強化学習によって走行する完全自走型の1/18スケールのレースカーと3Dレーシングシミュレーター、グローバルレーシングリーグを備えた「AWS DeepRacer」を主宰しており、開発者が強化学習を利用して自動運転システムを楽しみながら構築する機会を提供している。AWS DeepRacerはAmazon.comで399ドル(2020年1月時点)で販売されており、意外とお手ごろだ。

レースには若手エンジニアらが数多く参加しており、有志チーム「Deep4Drive」はクラウドファンディングで参加や開発に伴う資金を集めて参戦し、企業とスポンサー契約締結に至った例もある。また、大日本印刷のように、社内のAI人材育成を目的にAWS DeepRacerを活用する例もあるようだ。

国内では、経済産業省らがAIエッジコンピューティングの実現に向け人材育成や優秀なアイデア発掘を目的に「AIエッジコンテスト」を開催している。

自動運転の実現に欠かせない画像認識を課題に据え、画像中の物体検出処理をFPGAに実装することによってそのアルゴリズムの処理速度を競う内容で、現在第2回コンテストが開催中だ(2019年11月18日~2020年3月31日)

また、自動車技術会はAIエッジコンテスト上位入賞チームを対象に「自動運転AIチャレンジ」を開催している。AIエッジコンテストの上位8チームが自ら開発したアルゴリズムを自動運転プログラムに実装し、カート車両によって実走行する内容となっている。

こうした機会への参加を意欲に変えることで、自身の知識や経験も大幅に向上するだろう。

【参考】AIエッジコンテストについては「AIエッジコンテスト再び!自動運転向け画像認識で処理速度競う」も参照。自動運転AIチャレンジについては「自動運転AIチャレンジ、2020年6月に第2回大会!AI技術者などの発掘・育成が目的」も参照。

■大学へ行って学ぶ(初~上級者向け)

大学は高校を卒業した若者のみが通う場ではない。意欲ある社会人にも門戸を開いている。埼玉工業大学がAI専攻を新設したようにAIに関する研究に力を入れる大学は増加傾向にあり、埼玉工業大学をはじめ名古屋大学や群馬大学、金沢大学のように自動運転に熱を入れる大学も増えている。

重要なのは、座学による専門知識だけでなく、生きた知識としてしっかりと演習を行うカリキュラムが組まれているかどうかだ。前述した大学のように自治体や企業と手を組んで積極的に実証を行う取り組みは大きな糧となるため、大学を選考する際にはこうした点もしっかりとチェックしておきたい。

■自動運転関連企業で働く(中~上級者向け)

自動運転を学ぶうえで最高の環境は、自動運転開発を仕事にすることだ。求人数は右肩上がりだが、高度な技術や知識が必要なため意欲だけではなかなか採用に至らない。まずは自分が目指す技術分野を見定め、しっかりと基礎知識を習得した後に就職活動に勤しんでもらいたい。

自動運転を構成する要素・スキルには、認知系技術や判断系技術、制御系技術、HMI技術、安全技術、セキュリティ技術、組み込みソフトウェア技術、データ解析技術、マッピング技術、モビリティサービス企画力などさまざまな技術があるほか、モビリティを作るうえでのエネルギー関連技術や基礎知識なども必要となる。

すべてを網羅するのは容易ではなく、まずは自身の専門分野を明確にすることが肝要だ。

■【まとめ】裾野広がる自動運転業界 自動運転知識を一般教養に

一から自動運転業界や技術について学びたい人は、まずはニュースや各種メディア、本などを活用して基本的な情報を把握することから始めることをお勧めしたい。セミナーへの参加も刺激になるだろう。

そのうえでビジネスにつなげる意欲を持っている人は、オンライン講座や大学などで専門知識を習得し、就職や転職、起業への道を拓いていくことになる。AI関連は自動運転業界に留まらずさまざまな分野へ応用可能な技術のため、学びの場も多く用意されている。

MaaSのように自動運転に関する技術・知識とは異なる分野もあるため一概には言えないが、裾野が広がり続け異業種を巻き込みつつある現在においては、自動運転に関する基本的な知識は一般教養として身につけておいた方が得策だ。

自動運転ラボも、新たに自動運転業界を目指す人の一助となれば幸いだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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