自動運転向けのステレオカメラとは?「人間の目」の代わりに!国内開発企業は?

高性能化・低コスト化に向け競争激化



ステレオカメラRoboVision3=出典:ZMP社プレスリリース

自動運転に必要なセンサーの1つに「カメラ」があり、最近では対象物を複数の方向からとらえる「ステレオカメラ」が主流となってきている。このステレオカメラはどのような原理なのか。そして国内ではどのような企業が開発しているのだろうか。

■人間の目の代わりとなって周囲を把握

ステレオカメラは2つのレンズ部から構成されており、人間の目のようなカメラである。人が物を立体的に見る仕組みと同じく、対象物を複数の方向から撮影することによって立体的にとらえることができ、距離の把握に役立つ。


ステレオカメラでは左右のカメラの画素位置の差から対象物までの距離を算出しており、これをいかに正確に高速に行うかが鍵となっており、各社が技術を磨いている。

ステレオカメラは自動運転につながるADAS(先進運転支援システム)や高度運転支援システムなどにおいて、すでにセンサーとして衝突防止機能などで活用されている。

例えば、トヨタ自動車のレクサス「LS」の追従走行システム「レーダークルーズコントロール」でもステレオカメラが活躍しており、リコーインダストリアルソリューションズとデンソーが共同開発した製品が今から約2年前の2018年7月時点ですでに2万台出荷されている。

このようにADASなどを搭載する量産車でステレオカメラはすでに欠かせないセンシングデバイスとなっており、民間調査会社のテクノ・システム・リサーチ社によれば、車載ステレオカメラの市場規模はすでに500億円を超え、2020年には1000億円規模となるようだ。


■リコーインダストリアルソリューションズ:トヨタのレクサスにも搭載

車載ステレオカメラの開発企業としては、有力企業としてリコーインダストリアルソリューションズが挙げられる。デンソーと共同開発した製品はトヨタのレクサスにも搭載されているほか、ダイハツ工業の車両向けにも製品を生産している。

リコーのステレオカメラの強みは、小型のステレオカメラでも障害物との距離を高精度に測定可能なことや、高速で走行中も路面の凹凸まで検知できる画像認識技術だ。2019年の発表によれば、軽自動車向け国内台数シェアでは1位(自社調べ)となっているという。

今後のリコーのステレオカメラ関係の施策としては海外市場への展開拡大が挙げられ、欧州メーカーのプレミアムカーへの新製品の提案などに力を入れていくようだ。

【参考】関連記事としては「リコーとデンソー、カメラでの路面解析で新技術 AI自動運転に活用期待」も参照。


■日立オートモーティブ:コストを抑えたモデルを提供

⽇⽴オートモティブシステムズのステレオカメラは、自動車への搭載で実用化の事例も多い。SUBARUの「アイサイト」やスズキの先進運転支援システムなどにも搭載されていることで有名だ。

2019年12月には遠方と近距離の両方の検知に対応した次世代のステレオカメラの開発を発表している。このステレオカメラを装備すると、交差点での車両、自転車、歩行者などの検知にも対応ができるという。

遠方検知や広角化による近距離の検知精度を上げながら、大きさや質量は現在のカメラとほぼ同じで、コストも同水準となっている。このステレオカメラは以前からスズキの「ハスラー」などで採用されている製品をベースに開発された。

ちなみに同社のステレオカメラはいすゞの1トン積みピックアップトラック「D-MAX」にも採用が発表されている。

【参考】関連記事としては「日立が実は、真っ先に「自動運転」に張っていた!」も参照。

■ZMP:4眼カメラの「RoboVision3」などに注目

自動運転ベンチャーのZMPでは、コンパクトなサイズとUSB給電により手軽に使える「RoboVision2s」と、4つのレンズを備えてさらに高性能な計測が可能な「RoboVision3」という2タイプのステレオカメラを提供している。

RoboVision2sは、PC用のソフトウェア、ステレオ画像ビューワ、開発用SDKなどを備え、開発者が気軽に使えるステレオカメラとなっている。開発者が自らニーズに応じてアプリケーションやソフトを開発することもできる。

RoboVision3は、ステレオカメラを2つ組み合わせた4眼のカメラだ。ソニー製の高感度COMSイメージセンサであるIMX390を搭載しており、最大測定距離150メートル、水平視野角110度と高性能なセンシングができる。これにより、交差点での右左折における対向車検出、歩行者の検出など広範囲な検知が可能となっている。

■ITD Lab:ミナトと共同で小型高性能カメラの開発中

ITD Labは東京工業大学発のベンチャー企業として、独自の超高速3次元画像認識技術を用いたステレオカメラ「ISC(Intelligent Stereo Camera)」の開発を行っている。

高速物体認識機能、自動調整機能、自己位置認識機能などを備えており、処理の速さなども優位性として挙げられている。

2020年6月には電子機器製造のミナト・アドバンスト・テクノロジーズと新たな小型インテリジェント・ステレオカメラの開発について共同で行うと発表している。ITD Labの持つ高い技術を生かし、2020年度中の市場投入に向けて販売活動も共同で行う予定となっている。

■【まとめ】本格的な自動運転の実現を支えるステレオカメラ

自動運転技術の開発が本格化する時代において、車の目となるステレオカメラの重要性は増加している。今後はステレオカメラの高性能化と低コスト化の両立が課題だ。国内の開発企業各社の今後の発表に注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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