課題は「ODD設定」や「事業採算性」——自動運転領域、第9回官民協議会の議事要旨から

どのような意見が交わされたのか





自動運転の社会実装に向け官民が連携して議論を進める「自動走行に係る官民協議会」が年3回ほどのペースで開かれている。近々では2019年11月に第10回目の協議会が開催されており、その中で9回目の議事要旨が公表された。







政府サイドをはじめ有識者や民間事業者が名を連ねる会議でどのような意見が交わされたのか。その中身に迫ってみよう。

▼自動走行に係る官民協議会(第9回)議事要旨
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/jidousoukou/dai10/sankou2.pdf

■路上駐車がODD設計の障壁に

実証実験の経過として、ODD(運行設計領域)に関する意見が多く出された。レベル3、レベル4の自動運転を活用した移動サービスの実現において、どのようなエリア内でどういった条件下で自動運転を可能とするかは、技術レベルと走行する交通環境に左右される。

今回の協議会で特に注視されたのは、駐車車両の存在のようだ。実証中、駐車車両を交わす際に手動操作介入が多かったという意見が相次ぎ、「路駐車両が多すぎてオーバーライド率が50%になった」「路上駐車を物理的に阻止するために、路肩にコーンを置いておけば100%ではなくても大分減らせる」「地域の協力で駐車車両を全部なくすのは困難」などの声があがった。

駐車車両を交わす際に対向車線にはみ出さなければならないケースもあり、レベル3運行においては、駐車車両を通過する際に一時的にODDから外すべきかどうか――といった葛藤を抱える開発企業も多いようだ。

このほか、2019年~2020年は主にサービス実証に取り組み、安全設計をメインにしたインシュアテックソリューションの立ち上げを考えており、主にODDの設計を自治体に提案していく――といった声もあった。

「インシュアテック」は保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語で、安全な自動運転サービス(実証)に対応した新たな保険商品の展開なども進みそうだ。

■事業性や採算性が大きな課題に MaaSにも注目集まる

自動運転移動サービスの実現においては、事業性・採算性に関する意見が多く出された。

「採算が成り立たない中では誰もメリットを感じなくなってしまう。ITなどを使った形でニーズを把握し、フレキシブルに運行ができるような形をしっかり取り組まないといけない」とする声をはじめ、「まだまだ課題がある中で、独立採算でやるというのは非常に難しい部分もある。移動サービスのニーズはあっても自動運転が必要とされるかについては、コストをいかに下げるかが重要」、「インフラ整備や車両の初期コストなどは国が持つとしたとしても、その後のランニングを本当に地域で担えるのか」「現状では車両価格や運営価格が割に合っていない」など、採算性の問題を指摘する声が挙がった。

また、「地方の実証実験などで話を聞くと、自動運転のサービスを入れたいというよりは、移動サービスをとにかく入れてほしいというニーズが非常にあると感じる」といった意見もあった。自動運転の有無よりも移動サービスそのものを望む声も多かったようで、「MaaSとの連携についてもどのようにに影響するのか今年度の実証の中で少し見ていければ」「末端交通だけの収支ではなく、MaaSのようにその先と一体の運営の可能性もある」など、MaaSの可能性に言及する意見も多く出された。

■地域のコミットが必要不可欠

自動運転移動サービスの事業化に際しては、地域の協力が不可欠とする意見も多く挙がった。

「地域で事業化に向けてコミットする体制が重要で、安全性確保に向けたODDをしっかり確保する運用体制に地域でコミットすべき」という声や、「地域がコミットするには財源が必要。先行して挑戦する自治体に対し、例えばデータ整備や車両導入の費用に対して補助金を用意する必要があるのではないか」、「北谷町などでは合同会社などを作る動きがあり、担い手の発掘という部分でこうした取り組みが出てくるような機運になってきた。どうすれば担い手の掘り起こしができるのか、担い手を支えていくことができるのかを長期実証を含めて検討していく必要がある」とする意見もあった。

自動運転移動サービスは、一事業者による単純なビジネスではなく、自治体の協力や地域住民の理解が不可欠となる。継続可能な運用体制の構築に向け、地域とどのような事業体を作っていくか。そういった面での実証やフォローが必要となりそうだ。

■自家用車へのレベル3 メリット体感と競争が重要に

自家用車に関しては、2020年以降に高速道路における自動運転レベル3システムを搭載する形で実用化を始める予定とする意見をはじめ、自動運転のメリットやコストの問題を指摘し、体感してもらうことでメリットを感じてもらうことや、競争状態を作ることで1台当たりのコストを下げていくことが重要――とする意見などが出されている。

2020年にレベル3搭載車両の販売が本格スタートする見込みで、国内でもホンダが夏をめどに「レジェンド」にレベル3技術を搭載し発売する見込みとなっている。

新技術搭載により車両価格も幾分か上昇すると思われるが、購買層を考慮すると、高級車種への搭載時においては比較的影響は少ないものと思われる。しかし、高級車種から広く一般車両へ搭載を拡大して普及を促進していくためには、自動運転のメリットを実際に感じてもらい需要を喚起することと、競争によるコスト低減が必要になるということだ。

【参考】ホンダのレベル3搭載車については「緊張保つ難しさ、どう解決?ホンダ、自動運転レベル3搭載車を来夏発売か」も参照。

■2020年に少なくとも数カ所で自動運転サービスを

実現目標に関し、事務局サイドは「恒常的に自動運転車が運行し、実際に利用サービスが提供される姿を2020年に少なくとも数箇所で実現したい。また、オリパラを通じて東京で自動運転の姿を見せ、かつ地方でも自動運転サービスが複数動いていることで、世界に我が国のsociety5.0の姿を発信していきたい」とした。

一方、開発に取り組む民間事業者からは「目標としては2024年ぐらいにオールドニュータウンや中山間地域といったところで自動運転を実現したい」「専用空間でのレベル3の実用化を目指し、2021年以降に実際のサービスをしたい。こうした実績を積み、信頼性・安全性などが検証できた段階でレベル4に取り組みたい」など、具体的な実現目標が示された。

■【まとめ】2020年自動運転サービスの現実解はレベル3?

各地で実証に取り組む開発企業の生の声が、自動運転実用化における諸課題を浮き彫りにしている。机上の計算通りに進めることの難しさを物語っているようだ。

こうした課題を地道に一つひとつ潰していくため、政府や業界がどのような対応をとっていくのか。現実解としては、レベル4相当の車両を試験導入しつつ、セーフティドライバー付きの実質レベル3で運行する形で実用化するケースが多くを占める可能性が高そうだが、これもレベル4につながる重要な進化の過程だ。

どのような形で実用化が始まり、どのような形で住民らに受け入れられるのか。2020年に大きく動き出し始めるだろう自動運転社会。注目の1年がまもなく訪れる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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