日産、EVと自動運転の融合推進 Easy Rideのチャレンジも継続

内田社長が決算発表会で語ったこと





出典:日産自動車公式YouTubeチャンネル

日産自動車(本社:神奈川県横浜市/社長:内田誠)は2020年5月28日、2019年度通期決算を発表した。市場の減退や新型コロナウイルスの影響により11年ぶりの赤字を計上し、「プロパイロット2.0」で国内市場をリードする自動運転関連技術の動向にも注目が集まる。

決算発表及び事業構造改革の取り組みに関する説明会の席で内田CEOは、今後の事業展開において技術面では電動化と自動運転技術の開発を促進し、ブランド力の向上とマーケットシェアの回復を図るとスピーチした。







2020年代に突入し、自動運転の社会実装が本格化する時代を迎えた日産は、どのような戦略で自動運転時代を生き残るのか。内田CEOのスピーチをもとに、日産の自動運転技術の今と将来に触れていこう。

▼スピーチ全文
https://www.nissan-global.com/JP/DOCUMENT/HTML/FINANCIAL/SPEECH/2019/2019Results_speech_071_j.html

▼決算発表中継動画(日産公式ページ)
https://www.youtube.com/watch?v=ceAIt79_0B0

■内田CEOのスピーチ内容
2019年度は6712億円の当期純損失を計上

2019年度通期のグローバル全体需要は、前年比6.9%減の8573万台となった。中国市場の減速や、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け第4四半期に各市場が低迷したことを主な悪化要因として挙げている。

こうした環境下、日産の販売台数は前年比10.6%減の493万台で、第4四半期の大幅な全体需要低迷に加え、第3四半期までの北米と欧州を中心とした販売減が響いたようだ。

2019年度通期の連結売上高は前年比約15%減の9兆8790億円で、営業損失が405億円、当期純損失が6712億円と赤字を計上した。

当期純損失には、将来の収益性改善に向けた構造改革実施に向けた6030億円の構造改革費用および減損損失が計上されており、これらを除くと当期純損失は682億円となる。

2020年度のグローバル全体需要は新型コロナウイルスの影響で前年比15~20%の減少になると予想しており、同社の2020年度業績見通しに関しては、影響について合理的な算定が可能となった時点で開示する予定とした。

選択と集中進める事業構造改革計画

将来の台数見通しに基づくと現在の生産能力は余剰となっており、日産は2年前から拡大路線からの転換を図ってきた。決算発表の席では改めて事業構造改革計画を発表し、選択と集中のもと、コアマーケットやコアセグメントに持続的にリソースを投入していくこととした。

計画のポイントとして①過度な販売台数の拡大は狙わず、収益を確保した着実な成長を果たすこと②自社の強みに集中し、事業の質、財務基盤を強化すること③新しい時代の中で「日産らしさ」を取り戻すこと――を挙げ、2023年度末までにその先の10年を戦う体制を再構築し、新たなステージに移行させる「Nissan Next」を掲げた。

注力する重点分野として「事業規模の最適化」と「選択と集中」を挙げ、門構えを720万台規模から20%削減し、世界各地の工場を集約して通常シフトで年間540万台体制とすることや、各工場の生産車種をセグメントやプラットフォームごとに集約し、ルノー・三菱自動車とのアライアンスのアセットを活用しながら効率改善を図ることとしている。

商品ラインアップにおいては、地域専用となっているモデルやロシアにおけるダットサンなどを打ち切り、2018年度比で車種数を69モデルから20%削減し、競争力の高い55モデル以下のラインアップに切り替えていく。

選択と集中では、マーケット、商品、技術の3つの領域を重視し、技術面では電動化と自動運転技術を基軸に据え、ブランドの向上とマーケットシェアの回復を目指すこととした。

EVと自動運転の融合で自由な移動を

今後18か月の間に新型車を少なくとも12種投入する予定で、7月に発表するクロスオーバーEVの新型「アリア」には、先進運転支援技術「プロパイロット2.0」や最新のパワートレーンをはじめとする数々の先進技術を搭載し、電動化と将来の自動運転に繋がる先進運転支援技術の融合を図る。

また、横浜で3年間実証を続けてきたEasy Rideにも触れ、自動運転を使った新しいモビリティへのチャレンジと位置付け、EVと自動運転を融合することで誰でも自由に移動できる社会の実現を目指すこととしている。

なお、電動化において、2023年度までに8車種を超えるEVを市場に投入する計画は順調に推移しており、「e-POWER」をグローバル市場のB、Cセグメントに拡大し、電動化率を2023年度までに日本60%、中国23%、欧州50%へ向上して年間100万台以上の電動化技術搭載車の販売を目指すこととしている。

先進運転支援技術の拡大においては、20の市場で20超の商品にプロパイロットを採用する計画は順調に推移しており、2023年度末までにプロパイロット搭載車の年間販売台数150万台超を目指すこととしている。

■日産の自動運転関連技術
日産ADASの代名詞「プロパイロット」

プロパイロットは、高速道路などの自動車専用道路で運転を支援するADASとして、2016年に実装が始まった。高度な画像処理技術によって道路や交通状況を把握し、アクセルやブレーキ、ステアリングをシステムが制御支援してドライバーの負担を軽減する。

車速を維持するクルーズコントロールや、先行車との距離を一定に保つインテリジェントクルーズコントロール、車線中央付近を走行するようにステアリングを制御するハンドル支援を備えている。

また、スイッチ操作だけで駐車時に必要となる操作をシステムが自動で制御し、駐車を支援するプロパイロットパーキングも実用化されており、4つの高解像度カメラを用いた高度なリアルタイム画像処理技術と車両周囲に配置した12個のソナー情報を組み合わせ、車両周辺の状況を検知して後向き駐車、前向き駐車、縦列駐車を支援する。

ハンズオフ運転を可能とした「プロパイロット2.0」

高速道路で同一車線内ハンズオフを可能とする高度な自動運転レベル2を国内で初めて実現したのがプロパイロット2.0だ。2019年9月発売の新型スカイラインで実装が始まった。

カーナビで目的地を設定し、高速道路の本線に合流するとナビに連動する形でルート走行が可能になる。気象条件や交通規制区間などに左右されるが、追い越しや分岐も含めシステムがルート上にある高速道路の出口までの走行を支援し、ドライバーが直ちにハンドルを操作できる状態にある限りにおいて同一車線内のハンズオフ運転を可能にしている。

7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーで白線や標識、周辺車両を360度検知するほか、ダイナミックマップ基盤が開発した高精度3次元地図を量産車両として初めて活用し、センチメートルレベルの地図データと自動運転関連技術を組み合わせた技術を実用化している。

【参考】プロパイロット2.0については「日産スカイラインの自動運転技術を徹底解説」も参照。

開発を進める将来技術

日産は将来技術として、「Invisible-to-Visible(I2V)」や「シームレスオートノマスモビリティ(SAM)」、「Brain-to-Vehicle」、「次世代e-POWER知能化技術」など数々の研究開発を進めている。

I2Vは、リアル(現実)とバーチャル(仮想)の世界を融合した3Dインターフェースを通じてドライバーに見えないものを可視化し、究極のコネクテッドカー体験を実現する技術で、車内外のセンサーが収集した情報とクラウド上のデータを統合し、建物の裏側やカーブの先など通常みることのできない場所の状況をドライバーの視野に投影する。

SAMは、無人運転車両が事故や路上の障害など不測の事態に直面した際に、人が介入して遠隔コントロールするとともに、クラウドに情報を集め全てのクルマをつなぐことでクルマを安全に誘導し、無人運転車両の効率的な移動を可能にする技術。NASAと共同開発を進めている。

Brain-to-Vehicleは、脳波測定技術を活用することで、ドライバーの次の運転操作のタイミングやドライバーが持つ違和感を把握する技術だ。ドライバーによる手動運転を自然にサポートして操縦感覚を高めることや、自動運転の最適なカスタマイズなどに役立つとされている。

次世代e-POWER知能化技術は、道路交通情報や路面情報を活用し、実用燃費と静粛性を考慮して発電用エンジンの始動タイミングを徹底的に最適化する技術で、将来的には機械学習・深層学習を導入し、各ドライバーの運転特性に合わせて進化し、さらなる燃費の向上を図るとしている。

【参考】Invisible-to-Visibleについては「日産、”ビルを透明化する”将来技術発表 自動運転車に搭載へ」も参照。

Easy Ride(イージーライド)で自動運転移動サービス実現へ

自動運転技術を活用したモビリティサービスにおいては、無人運転車両を活用した新しい交通サービス「Easy Ride」の研究開発をDeNAと共同で進めている。

日産のSAMの技術を活用し、車両に搭載したカメラなどがセンシングした車両周囲の状況や車内の様子を遠隔でモニタリングするとともに、車両配備スケジュールや運行などをDeNAのシステムとつなげ、遠隔管制センターで管理する仕組みだ。

2018年3月から実証実験を本格化しており、2020年代早期に本格サービスの提供開始を目指す方針だ。

【参考】Easy Rideについては「日産とDeNA、今年も自動運転サービス「Easy Ride」実験を開始」も参照。

■【まとめ】プロパイロット2.0の展開とレベル3実装に注目

日産にとって2019年度はカルロス・ゴーン元会長に起因する経営問題に振り回された年でもあり、アライアンスの在り方や自社の経営方針を含め、改革とともに再出発を図る意味合いも大きかった。

まずはプロパイロット2.0搭載車種の拡大などが目下の目標となりそうで、自動運転レベル3に言及する場面はなかったが、今後18カ月の間に投入予定の12の新型車の中で、レベル3実装が始まる可能性は高い。

2021~22年のフルモデルチェンジが噂されるスカイラインをはじめ、国外で展開するインフィニティブランドなど、それぞれの動向から目が離せないところだ。

また、Easy Rideの取り組みも進展することが予想されており、国内自動車メーカーが直接手掛ける自動運転サービスの社会実装にも期待が寄せられる。

選択と集中を進め、自動車メーカーとして今後の自動運転社会にどのように対応していくのか。2020年度の日産の取り組みに注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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