“最適化都市”で社会課題を解決!「早稲田大学E-MaaS構想」の凄み

電力と交通の一体化がもたらす成果





電力・交通・人流データを統合的に活用してスマートシティの実現を目指す——。早稲田大学理工学術院の林泰弘教授のチームは2020年6月3日までに、こうしたことを掲げた「早稲田大学 Energy, Environment and Mobility as a Service(E-MaaS)構想」を発表した。

今まで個別に研究されてきた電力と交通のシミュレーションを一体化し最適化を行う「時空間マルチダイナミクス予測エンジン」を開発し、CO2(二酸化炭素)の削減と公共交通分担率の向上を両立させ、様々な社会課題を解決しようというものである。







■交通・エネルギー環境未来都市の実現を目指して

「E-MaaS」の「E」はEnergy(エネルギー)とEnvironment(環境)を指している。従来、交通分野とエネルギーや環境分野は個別に最適化が進められてきたが、交通には電力や石油が必須であり、排気ガスなどは環境汚染の大きな原因であることから両社の関係は深く、一体となって最適化を考えなくてはいけなくなってきた。

そこで、E-MaaS構想では、目指す社会として、以下の3つを通して「交通・エネルギー環境未来都市の実現」を掲げている。

  • Mobility as a Serviceによる地域公共交通の利便性向上
  • 再生可能エネルギー電源100%による公共交通・施設の脱炭素化
  • 都市の課題を解決するデジタルプラットフォームの構築と利活用
■E-MaaS構想が実現すると都市はどうなる?

E-MaaS構想が2050年に目指す世界は、「公共交通分担率3倍」「CO2削減100%」(数字は2015年比)といったチャレンジングなものだ。

出典:早稲田大学プレスリリース

交通セクターと電力(エネルギー)セクターを横断的に最適化することで、再生可能エネルギーでの発電を交通機関に利用し、効率的に蓄電することで自動車などのモビリティの電動化にも役立つ。

再生可能エネルギーでの発電は常に供給が不安定であることと、余剰電力の蓄電が課題となっていたが、それをモビリティの電力として使うことで、最適な電力需給サイクルが回る仕組みだ。

■「時空間マルチダイナミクス予測エンジン」が生み出す可能性

E-MaaS構想で交通とエネルギーが最適化されたスマートシティを実現するためには、電力、交通、人流のデータを一体的に分析し予測するためのシステムが必要となる。林教授のチームでは、そのための「時空間マルチダイナミクス予測エンジン」の開発に着手した。

電力セクターではスマートメーターの普及により30分ごとの発電・電力消費状況を取得できるようになった。交通セクターでも徐々にリアルタイムでの公共交通の運行情報などが取得できるようになったほか携帯GPSでの人流なども把握できるようになっている。

宇都宮市ではすでに電力の見える化と「宇都宮MaaS社会実験」が両方行われており、将来的に時空間マルチダイナミクス予測エンジンを利用して電力と交通を一体化した最適化を行うための準備段階といえるだろう。

これからは交通が単体ではなく社会システムの一部として役割を果たすことが多くなる。社会全体の課題を解決するための取り組みに今後も注目していきたい。

【参考】関連記事としては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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