JTBが進めるMaaS領域における取り組みまとめ

自動運転タクシーとの連携やモビリティシェアなど





国内旅行業大手の株式会社JTB(本社:東京都品川区/代表取締役社長:髙橋広行)が近年、MaaS(Mobility as a Service)領域に力を入れている。







旅行には、必ずと言えるほど移動が伴う。さまざまな移動手段をパッケージ化し、多種多様な旅行サービスを提供する同社にとって、MaaSは事業の柱を担う根幹となり得る概念だ。

今回は、MaaSに関連する同社の取り組みを調査し、MaaS領域において将来どのような展望を持っているのか、探ってみた。

■NTTらと共同で移動情報や決済情報に関わる実証実験実施

JTBは2016年1月、NTTと株式会社JCB、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)とともに、訪日外国人旅行者に対しスマートフォンアプリを活用した移動情報や決済情報に関わる実証実験を、東京都新宿エリアと北海道札幌エリアで開始することを発表した。

訪日外国人旅行者の満足度を高め、観光回遊促進とショッピングを含めた日本滞在中の消費喚起に向けた取り組みで、アプリをダウンロードした利用者へ言語別、スポット別のショッピングや優待店、観光情報などさまざまな情報を配信するほか、カード型商品券「JCB プレモカード」を配布し連動させることで、年齢や性別などの利用者属性情報やアプリのログ情報、位置情報とJCBプレモカードの決済情報を統合・解析し、マーケティングに利活用した場合の有効性を検証することとしている。

移動サービスに直接関わる取り組みではないが、MaaSプラットフォームにこうした情報を付加することで利用者の満足度向上につながり、特に観光型MaaSには必須となる取り組みだ。

なお、同様の取り組みは同年10月から九州エリアでも実施している。

■沖縄でバスルート案内サービス提供

沖縄セルラーアグリ&マルシェ、KDDI、ナビタイムジャパン、JTB沖縄、ワイヤ・アンド・ワイヤレスの5社は2017年11月から12月にかけ、観光客に対するバスルート案内サービスと移動支援などの情報提供サービスに関する実証実験を沖縄県豊見城市の道の駅豊崎で行った。

公共交通機関であるバスを活用したルート案内により、観光客にバス路線の利便性向上をアピールするとともに、沖縄県内の交通渋滞緩和を目指す取り組みで、バス専用ナビゲーションアプリ「バス NAVITIME」の有料機能であるルート案内サービスを期間限定で無料開放し、GPS情報を用いて人気観光地へのルート案内などを提供した。

将来的には、各種公共交通機関および主要観光地の混雑状況や発着時間を集約・統合し、目的地までの最適な交通手段と交通需要管理を実現するサービスの提供を目指すこととしている。

■広島県で訪日外国人対象に交通機関らがサービス実証

一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会は、JTB中国四国、公益社団法人広島県バス協会、広島電鉄株式会社、日本電気株式会社とともに、訪日外国人へのICTを活用したおもてなしサービスの実証実験を2018年1月から約1カ月間広島地域で実施した。

広島周遊観光プランをベースに訪日外国人の利便性・回遊性を高めて広島地域の魅力度向上を図る目的で、周遊乗車券を購入した訪日外国人が自ら登録するパーソナルデータと交通系 IC カード「PASPY」を連携させ、バスやタクシー、旅行などのサービス事業者が「IoT おもてなしクラウド」から情報提供される訪日外国人のパーソナルデータに基づき、各自に適したサービスを提供する仕組みを検証した。

この中で、広島県バス協会と広島電鉄はバスからタクシーへのスムーズな乗り継ぎなど交通機関連携を図ったほか、JTBは周遊観光プランづくりと事務局を担った。

■会津若松でAI運行バス活用したモビリティ・シェア実証

JTBと会津電力株式会社、株式会社NTTドコモの3社は2018年3月、AI(人工知能)運行バスを活用した「モビリティ・シェア事業」を会津若松駅周辺で行うことに合意した。

観光スポットと人口密集地が重なる同市内において、「観光客と生活者の双方が利用できるシェアリング交通」をコンセプトに、AI運行バスという交通の仕組みを活用して移動利便性の向上と観光客の回遊行動の促進可能性について調査する。

実証では、移動手段としてAI運行バスを無償で提供し、専用スマートフォンアプリによる配車要求によってエリア内に設けた複数の乗降地点を移動可能にした。

■「JAPAN TripNavigator」機能拡充 ツアーやアクティビティの予約も可能に

JTBとナビタイムジャパン、日本マイクロソフトは2018年9月 、訪日外国人旅行者向けのスマートフォンアプリ「JAPAN TripNavigator」の機能を拡充すると発表した。
アプリは、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を基盤として活用し、JTBの豊富な観光情報とナビタイムジャパンのアプリ開発技術、移動経路情報を生かした各種機能などが搭載されたもので、2018年2月にリリースされた。

今回の機能拡充では、ホテルに加えてツアーやアクティビティの予約も行えるほか、自治体との連携によるより多彩な情報発信を可能にしている。

観光型MaaSへの付加情報として有用なもので、各移動サービスの予約や決済機能などと連携すれば、非常に利便性の高いプラットフォームとなりそうだ。

■未来シェアと資本業務提携 SAVS活用でMaaS推進

JTBは2019年3月、オンデマンド・リアルタイム配車サービス「SAVS(Smart Access Vehicle Service)」を提供する株式会社未来シェアと資本業務提携を締結したことを発表した。未来シェアの持つ SAVS 技術を生かした「観光型 MaaS」の本格普及を目指す構えだ。

未来シェアは、独自の高度な運行管理のプラットフォーム「SAVS」を開発し、AIを活用したデマンド型の乗合いタクシーによる交通課題の解決に向けた実証をJTBとともに外国船が寄港する港や観光地で行っている。

今後は、これまでの実証実験のノウハウを生かし、①外国船が寄港する港における「クルーズ型MaaS」の推進②MICEや大型イベントなどの短期間で一時的な交通課題に対応することが可能な「イベント型MaaS」の推進③他のMaaSプラットフォーマーと「観光型MaaS」領域の連携を図る④観光客の2次・3次交通のオンデマンド提供により集積されるビッグデータを活用した観光地のマーケティング――に取り組んでいくこととしている。

2019年度中には、政府方針により相乗りタクシーが解禁される見通しで、SAVSが観光型MaaSを進める上で重要性を増すとしており、短期間における特定エリアで、宿泊予約と同時にアクセスも自由に選べるようなパッケージ化や、利用期間や区間に合わせた周遊パスの導入、交通以外の観光情報の予約決済などもつなぎ合わせることで、周遊促進を図っていく。

【参考】未来シェアとの資本業務提携については「未来シェアとJTBが資本業務提携 観光型MaaS普及で地域活性化」も参照。

■2019年11月に空港バスと自動運転タクシー結ぶMaaS実証実験を実施

東京空港交通株式会社、東京シティ・エアターミナル株式会社、日本交通株式会社、日の丸交通株式会社、三菱地所株式会社、株式会社ZMP、及びJTBの7社は2019年7月、MaaSを活用し空港リムジンバスと自動運転タクシーを連携させた都市交通インフラの実証実験を行うことを発表した。

東京都の事業「自動運転技術を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクト」に基づいたもので、日の丸交通とZMPらが2018年度に丸の内エリアで実施した自動運転タクシーの営業サービス実証実験を発展させ、成田・羽田両空港と東京シティ・エアターミナルを結ぶ空港リムジンバスと自動運転タクシーを連携させることで、空港から都心部である丸の内エリアへのスムーズな移動を目指すこととしている。

ZMPが開発した自動運転タクシーの走行区間は、東京シティ・エアターミナルと丸の内パークビルディングを結ぶ約3キロを予定しており、日本交通と日の丸交通がタクシーサービスを提供する。空港リムジンバスと自動運転タクシーを組み合わせたサービスの提供を通じて、JTBがMaaSに適応した新たな旅行サービスの商品化に関する検証を行う。

実施時期は2019年11月中の2週間で、9月ごろにウェブサイトで利用者を募集する予定。

■新モビリティサービス推進事業で山陰エリアと沖縄エリアでMaaS実証進める

国土交通省は2019年6月、MaaSをはじめとした新たなモビリティサービスの実証実験を支援する「新モビリティサービス推進事業」における先行モデルとして19事業を選定したが、この内2事業においてJTBが構成メンバー入りしている。

一つ目は、山陰エリア(鳥取県、島根県)における観光型MaaS実証事業(山陰地域観光MaaSコンソーシアム)で、関係自治体のほか、JTBや日建設計総合研究所、中国地域創造研究センター、未来シェア、日本ユニシス、名古屋大学、日本交通バス、日の丸自動車、一畑グループ、鳥取県バス協会などが名を連ねる。

両県において、外国人観光客向けに1つのアプリ上で鉄道やバス、遊覧船、超小型モビリティ、レンタサイクルなど20の交通手段に関する情報や、エリア内の観光スポット情報や飲食店・小売店情報提供観光情報、観光施設入場パスなどを提供する予定。AI乗合タクシーの提供も計画している。実施期間は2019年10月から2020年3月中旬までを予定している。

二つ目は、沖縄県八重山地区(石垣市・竹富町)における八重山MaaS化事業。自治体と八重山ビジターズビューロー、沖縄セルラーアグリ&マルシェ、琉球銀行、TISとともに、JTB沖縄が複数交通モードの情報・オペレーション・交通サービスの連携性・利便性向上のためMaaSサイト・アプリとシステムを構築し、実証を行う。

具体的には、MaaSレベル3実証のため、定額制サービスや事業者をまたいだパック商品を作り、利用者検索内容などに応じて推奨・提供するほか、事前の予約・販売およびデジタルチケット機能を提供するなどし、公共交通分担率の向上と商業・観光施設などへの送客を目指した観光地型MaaSを実現し、他型のMaaSへの将来展開が可能な基盤として有用性を検証することとしている。

【参考】新モビリティサービス推進事業については「いざMaaS元年へ!決定した19の先行モデル事業の詳細 自動運転やライドシェアの導入も」も参照。

■【まとめ】観光型MaaSに大きなアドバンテージ MaaSの満足度を高める存在に

旅行業を生業とするJTBの取り組みは、各地域における観光情報のプラットフォーム化に始まり、そのデータが徐々に交通プラットフォームなどと結びついていく様子が時系列からもうかがえる。

特に観光型MaaSにおいては大きなアドバンテージを持っており、MaaSの効用を最大限高める観光情報や各交通手段をまたいだ周遊情報など、長年培ってきた情報やノウハウが大きな武器となっている。

MaaSは、各移動サービスの統合が目下の目標となっているが、宿泊や観光サービスといったさまざまなサービスが結びつくことでいっそう利便性や満足度の高いサービスに昇華し、より地域の活性化に貢献する統合サービスとなる。

こうしたMaaSの応用分野を担う代表の一つが旅行業であり、JTBなのだ。今後、観光地におけるMaaSの取り組みで同社がどのような存在感を発揮するか、要注目だ。







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