移動と運送のダブル用途!未来の自動運転車は24時間走り続ける メンテ時間を除き昼夜活躍

「運行管理」に関する新ビジネスも誕生か



地方を中心に依然高い保有率を誇る自家用車。通勤や買い物、趣味など用途はさまざまだが、その利用時間は思いのほか短く、1日の大半は車庫や駐車場で眠っているのが実態だ。







独立行政法人「製品評価技術基盤機構」による生活・行動パターン情報の調査結果(調査年度:2014年度)によると、平均運転時間は平日が1.6時間、休日が1.7時間という結果になっている。

もし、こうしたクルマが自動運転車になった場合、どのような活用方法が考えられるのか。ドライバー不在で走行可能な自動運転車を眠らせておくのは宝の持ち腐れに他ならない。必要なメンテナンス時以外、有効活用を模索するのは必然と言える。

自家用車を含めさまざまなクルマが自動運転化された将来、どのような活用方法が実現し、新たなビジネスやサービスが誕生するかを考察してみよう。

■自家用車が自動運転タクシーに変身

米EV大手テスラのイーロン・マスクCEOが2019年、投資家を対象にした技術説明会の中で非常に興味深いアイデアを披露した。自家用車を活用した「Robotaxi(ロボタクシー)」構想だ。

自社開発を進めている完全自動運転向けのAIチップを活用した完全自動運転車を量産・市販し、リース契約したオーナーが配車サービスのプラットフォーム「TESLA NETWORK(テスラネットワーク)」に登録することで、マイカーを使用していない時間を自動運転配車サービスに充てることができるという内容だ。配車サービスによる運賃は、テスラへの手数料を除けばオーナー自身の利益となる。

同社の試算によると、オーナーは1マイル(1.6キロメートル)あたり0.65ドル(約71円)得ることができ、9万マイル(約14万5000キロメートル)走行すれば3万ドル(約330万円)に達するという。

自家用車において9万マイルは相当な走行距離となり、日常的なメンテナンスが非常に重要となるが、駐車場で眠った状態の自家用車を有効活用するアイデアとしては秀逸だ。なお、事故の際の責任はテスラが負い、リース契約終了後は車両をテスラに返却する必要がある。

【参考】テスラのロボタクシー構想については「ロボットタクシーとは?自動運転技術で無人化、テスラなど参入」も参照。

■自動運転タクシーの有望性
タクシーによる移動コストは自動運転化で13分の1に

米調査会社ARK Investment(アーク・インベストメント)が発表した自動運転タクシーに関する調査結果も非常に興味深い。同社が2019年に発表した資料「BIG IDEAS 2019」によると、タクシーにおいて消費者が支払う1マイル当たりの移動コストは、従来のタクシーが3.5ドル必要であるのに対し、自動運転タクシーは0.26ドルまで低下するという。自動運転化により、約13分の1までコストが低下するのだ。

なお、自家用車所有における運転コストは、1934年のT型フォードの発売開始時から長らく変わっておらず、1マイル当たり0.7ドルと換算している。算出根拠は資料で公表されていないが、自動運転技術の導入が移動コストに与えるインパクトは相当なものであることはよく分かる。

また、同社は自動運転タクシーの投資機会の規模は現在すでに2兆ドル(約220兆円)に達しており、2028年には7兆ドル(約770兆円)まで伸びると予想しているほか、2035年には自動運転タクシーの売上が8兆ドル(約880兆円)に達する可能性があると指摘している。

自動運転タクシーにより、個人のPoint-to-Point型(出発点から目的地まで)の移動市場が拡大する見込みで、特に都市部では手動運転されていた移動距離分が自動運転に変わり、総走行距離は伸びると考えているようだ。

【参考】関連記事としては「自動運転技術が東京〜大阪間「1万円タクシー」を実現する」も参照。

■運行管理サービスが新たなビジネスに
自家用車向け自動運転タクシープラットフォームサービスが誕生?

ここまで、自動運転タクシーの有望性と自家用車への適応の可能性などに触れた。現状では自家用車のタクシー化は道路運送法の規定に触れるなど法的問題が生じるところだが、あくまで将来の話として目をつぶっておく。

例えば、主に通勤用に自家用車を使用している場合、通勤後の会社近辺で自動運転タクシーや無人運送車両として活用し、帰宅後は自宅付近で同様に活用することが考えられる。

買い物など日常的な足として利用している場合なども、利用時間をスケジューリングすることで十分活用することができそうだ。

こうした有効活用を行うには、前述した「テスラネットワーク」のようなプラットフォームサービスが必要になる。自動運転自家用車のオーナーと利用したい人を結び付けるプラットフォームだ。

個人間カーシェアとタクシー配車プラットフォームを合わせたようなイメージだろうか。オーナーは利用可能な時間やエリアを登録し、利用者の条件とマッチすれば配車されるような仕組みだ。現在、少ない台数でも導入可能なカーシェアプラットフォームの提供などさまざまなプラットフォームサービスが誕生しているが、将来自家用車向けのタクシープラットフォームが登場する可能性も考えられそうだ。

物流を担うことも可能に

荷室の広さに限界はあるものの、夜間などのまとまった時間も含め物流分野で活用することもできるかもしれない。昼は空いている時間を活用してラストマイルとなる宅配を担い、夜は中長距離の中間配送を担うこともできそうだ。また、ウーバーイーツなどの飲食物宅配にも転用することも可能だろう。

こうした物流プラットフォームサービスにも注目すべき日が訪れる可能性は決して低くないはずだ。

メンテナンス管理も重要に

24時間運行することを考慮すると、当然メンテナンスに対する不安が強くなる。タクシー事業者のように高い頻度でメンテナンスすることは自家用車オーナーにはハードルが高く、しかも自動運転車特有のシステマチックな問題には対処できそうもない。

こうした不安をカバーするビジネスの誕生も想定される。プラットフォームによる運行管理に加え、自動運転車が備えるセルフメンテナンス機能や各種センサーから取得した情報を駆使し、適切なタイミングでメンテナンス拠点に回送するサービスだ。

既存の自家用車においても、コネクテッドサービスとして各種診断や相談サービスなどが充実し始めているが、この自動運転車バージョンとも言える。システムがエラーを発した場合のみ対応するケースや走行距離に応じて実車率の低い時間帯を選択して柔軟に対応するケースなどいろいろなパターンが想定されるが、オーナー不在で対応可能なため、オーナーは適宜メンテナンス記録を確認すれば良いだけになる。

自家用車のサービス利用には、こうしたメンテナンスも含めた運行管理システムが重宝されることになりそうだ。AIによる効率的なルーティングで配車効率を高めるとともに、時間別の実車率や配車エリアなどをビッグデータ化し、メンテナンスなどのタイミングも効率的に組み込む制度も求められそうだ。

余談となるが、将来は車検なども自動運転車が自動で対応する日が訪れるかもしれない。また、自動車修理・整備事業においても、従来の物理的な修理の機会が減少し、代わって自動運転に関する各種ソフトウェアの更新・管理やセキュリティ対策などが新たな事業の柱に成長するかもしれない。

無人で走行することが可能な自動運転車ならではのサービスやビジネスは点検整備にも及ぶのだ。

タクシーや物流以外にも多様な活用が見込まれる

自家用車が自動運転化されれば、オーナーは日々の運転から解放され、車内における移動時間を有効活用することができる。乗り心地重視でゆったりくつろげる空間や、映画鑑賞やゲームなど趣味を楽しめる空間にするなど、さまざまな設えが想定される。

こうした独自機能を備えた自家用自動運転車は、自動運転タクシーなどとは別のサービスを提供することも可能になる。移動映画館や移動仮眠室、移動カラオケルーム……といったさまざまな活用方法が見込めるのだ。時代に逆行するかもしれないが、路上喫煙防止地域では移動喫煙室などもビジネスになるかもしれない。

■【まとめ】プラットフォームや運行管理システムが自動運転のメリットを引き出す

自動運転化された自家用車を中心に論を立てたが、業務用の自動運転タクシーなども当然24時間稼働が可能で、昼はタクシー、夜は物流といった使い分けもできる。可能性は無限大だ。

また、自動運転のメリットを最大限引き出すためには、自動で各種サービスを提供するプラットフォームや運行管理システムが非常に重要となる。自動運転システムで活用されるAIは、こうした分野でもさらに真価を発揮することになりそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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