自動運転を実現する主要な要素は何だろうか?車両に搭載されるセンサー類やAI(人工知能)、GPSやQZSS(準天頂衛星システム)といった測位システム、ダイナミックマップ、路車間通信や車車間通信、5Gのような移動通信システムなどが挙げられ、それぞれの技術が協調しながら日進月歩で発展を遂げている。
これらの中で、最も実現に近づいている技術は何か?と問われれば答えに窮するが、実は有力候補が存在する。磁気マーカーを活用した路車間協調・誘導型の自動運転システムだ。完全に自律した自動運転はできないものの、一足早く自動運転を実現し、かつ普及するのは、この磁気マーカーを用いた自動運転システムとなる可能性がある。
以下、磁気マーカーシステムの仕組みや特徴、開発動向などについて説明していこう。
■磁気マーカーシステムの仕組み
磁気マーカーシステムは、車両底部に取付けた磁気センサーモジュール(MIセンサモジュール)により、走路に沿って敷設した磁気マーカーの微弱な磁力から自車位置を高精度に計測し、車両が磁気マーカー上を通過するように舵取り装置を制御する自動運転支援システムだ。
開発の歴史は古く、1980~90年代には米国や日本などで研究や実証が進められたが、敷設コストやセンサーモジュールの感度不足などを理由にプロジェクトは次々と中止された。
しかし、自動運転システムの向上と同様磁気システムも開発が進められ、MIセンサーの感度は従来品と比べ1万倍以上を達成するなど高品質化され、低コストで埋設・運用可能になったようだ。
LiDAR(ライダー)やAIなどによる完全自律型の自動運転システムに比べ自由度は損なわれるが、アナログ的要素が大きく、一定区域における自動運転技術として安定性・堅実性に長けているのがメリットだ。
【参考】自動運転の歴史については「米GM、80年前に自動運転構想 消えたケーブル敷設案」も参照。
■磁気マーカーシステムを活用した実証実験
現在では、国が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)をはじめ、経済産業省・国土交通省が進める道の駅などを拠点とした自動運転サービスの実証実験やラストマイル自動走行の実証実験、JR東日本を中心とする「モビリティ変革コンソーシアム」によるBRT(バス高速輸送システム)専用道における自動運転バスの実証実験など、各所で磁気マーカーシステムの実用化を含んだ検討や実証が進められている。
その中心にいるのが、トヨタグループの特殊鋼メーカーで、電磁品事業や磁石事業、MIセンサー事業などを手掛ける愛知製鋼と、自動運転技術開発ベンチャーの先進モビリティだ。愛知製鋼は超高感度磁気センサーを応用した自動運転ビジネスの拡大を図っており、先進モビリティなどと協働しながら各種実証実験に参加している。
具体的な実証実験としては、2018年10月に茨城県日立市でスタートした産業技術総合研究所などによる自動運転コミュニティーバスの実証実験「ラストマイル自動走行の実証評価」や、同年12月に岩手県陸前高田市でスタートしたモビリティ変革コンソーシアムによる自動運転バスの実証実験、2019年1月に羽田空港の制限区域内で実施された自動運転バスの実証実験、同年2月に東京都の多摩ニュータウンで実施された自動運転バスの実証実験など、近々だけでも挙げればきりがないほど各地の実証実験で活用されている。
不特定な道路を自由に走る自動運転タクシーには向かない技術だが、狭域において特定路線を走る自動運転バスに馴染みやすい技術で、バス停における正着制御にも活用されている。
一定の路線や自動車専用道路、空港の敷地内など、限定された領域においてドライバーを必要としない自動運転が可能となる自動運転レベル4への導入が期待される技術で、高精細な3Dマップや測位システムがなくとも実現可能だ。
ドライバーを要しないレベル4以上の自動運転において、まず普及するのはこういった協調・誘導型のシステムではないだろうか?
【参考】日立市での実証実験については「茨城県日立市で自動運転バスの実証実験スタート 産総研など、レベル4の技術搭載」も参照。陸前高田市での実証実験については「BRT路線で自動運転バスの実証実験 JR東日本やソフトバンクなど参加」も参照。羽田空港での実証実験については「走行ルートに磁気マーカー埋設!羽田空港で自動運転バス実証 レベル3搭載」も参照。多摩ニュータウンでの実証実験については「愛和製鋼、磁気マーカシステムで技術協力 多摩ニュータウンの自動運転バス実証実験」も参照。
■ただ自動運転の本流はやはり完全自律型?
磁気マーカーシステムを活用した自動運転の優位性に触れてきたが、本質部分を考慮すると、磁気マーカーシステムは測位システムとの補完性が強い。つまり、障害物が介在しない自動車専用道路以外においては、自動運転の「支援」が主目的となる技術だ。
米Waymo(ウェイモ)の自動運転タクシーのように、完全自律型の車両がすでに実走している例もある。やはりこちらが最前線の潮流だろうか。
いずれにしろ、センサー然り、AI然り、高精細3Dマップ然りで、さまざまな要素が組み合わさって自動運転システムの性能は向上する。磁気マーカーシステムも、自動運転を支える立派な技術の一つなのだ。
特に、路車間協調システムが優位性を発揮するレベル4における磁気マーカーシステムの存在感は強い。近年中に各地で実用化されるだろうレベル4。磁気マーカーシステムの採用率にも注目していきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転車とは? 定義や仕組み、必要な技術やセンサーをゼロからまとめて解説|自動運転ラボ」も参照。