車以外の8業種は「自動運転」「MaaS」にこう切り込もう!

観光MaaSや医療MaaS、不動産MaaSも登場





異業種参入が相次ぐ自動運転やMaaS(Mobility as a Service)業界。近未来の巨大産業目掛け、自社のビジネスと未来のモビリティをどのように結び付けることが可能か模索する動きが広がっている。







その象徴の1つがMONETコンソーシアムだ。自動運転を見据えたMaaS事業の開発に向け、企業が業界の垣根を越えて横断的に取り組む場としてMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)が2019年3月に設立したもので、加盟企業は2020年7月1日時点で582社に達している。

もともとモビリティ業界と結び付きが強い企業を除くと、多くはまだ連携の在り方を模索している段階と思われるが、着実に新たな芽が育ちつつある。

異業種はどのように自動運転やMaaS事業に参入すべきか。実例を含めながら参入への道を紹介していこう。

■小売業:自動運転車を活用した無人移動販売

小売業は、自動運転車を活用した無人移動販売に注目だ。海外では実用実証がすでに始まっており、店舗ごと移動して販売する移動コンビニや、注文に応じて宅配するオンデマンド形式による販売などが行われている。

後者は新型コロナウイルス対策でも一役買っており、コンタクトレスな新たな販売手法として注目を集めそうだ。

自動運転の実用化は将来、モノの配送にかかるコストを大幅に引き下げることが予想されている。ECを中心とした通信販売の勢力はますます拡大する可能性が高く、小売業は実店舗のメリットをどのように生かすかが鍵を握りそうだ。

■不動産業:自らモビリティサービスの付加も

不動産業においては、MaaSの活用が重要になってきそうだ。MaaSによって移動の利便性が高まると、駅近の一等地と郊外の不動産価値の格差が縮まるケースが出てくる。自社ビルやマンションなどに自らモビリティサービスを付加することで、利用者の効用を高めることも可能だ。

国内でも、日鉄興和不動産が2020年2月、自社開発した分譲マンションにマンション向けMaaS「FRECRU(フリクル)」を導入する実証実験を開始した。実験では、利用ニーズや行き先の検証をはじめ、MaaS導入によるマンション向けモビリティの採算性向上の検証、最適オペレーションの検証などを行うこととしている。

不動産業ではこのほか、所有するオフィスビルや商業ビルなどで自動運転ロボットの導入を図る動きも活発化しつつある。

自動運転技術を応用したサービスは、モノを運ぶ配送ロボットや警備ロボット、掃除ロボットなど多岐に渡っており、三菱地所などが導入に向け積極的に実証を行っている。

より大きな目線では、トヨタのWoven City(ウーブン・シティ)のようなスマートシティ構築を視野に、デベロッパーが自動運転やMaaSの活用を図っていくことも考えられそうだ。

【参考】日鉄興和不動産の取り組みについては「「マンション向けMaaS」、実験的に始動!日鉄興和不動産が発表」も参照。

■金融業:増加する決済機会に着目を

金融業は、MaaSをはじめ自動運転によるさまざまな新サービスやコネクテッドサービスによって増加する決済機会をどのように取り込んでいくかが問われそうだ。

タクシーやバスなどが自動運転化された場合、現金を授受するドライバーが不在となるため、これらの自動運転モビリティは基本的にキャッシュレス決済が前提になる。また、さまざまなモビリティを円滑に結ぶことが求められるMaaSも、その性質上アプリで決済することが理想とされるため、キャッシュレス化を促進することになる。

実用化が進むコネクテッドサービスは、自動運転の実装とともに大きくサービスを拡張する。映画や音楽をはじめ、車両の位置情報を活用したゲームや、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)技術などを活用したさまざまなサービスも提供される可能性が高い。車内の移動時間を有効活用するサービスに付随して多くの決済機会が生まれるのだ。

こうした決済機会の増加は金融業にとって無視できないものとなる。早期参入を果たし、パートナーシップを拡大していくことが鍵になりそうだ。

■保険業:新モビリティサービス向け保険商品の需要が増加

自動車のコネクテッド化に伴いテレマティクス保険を導入するなど、自動車業界と密接な関係にある保険業界。自動運転レベル3の実用化に伴い、作動状態記録装置やドライバーモニタリングシステムの解析など、自動運転中の事故の責任を明確にする取り組みが進められているほか、自動運転の実用化において実証段階から積極的に参加し、想定されるさまざまな事故や不具合を事前に洗い出す作業が進められている。

今後、無人の自動運転サービスを手掛ける運行管理者に向けた保険をはじめ、MaaSによって新たに導入されるモビリティサービス向けの保険商品も需要が高まるものと思われる。

【参考】自動運転の責任の所在については「自動運転の事故、責任は誰が負う?」も参照。

■観光業:MaaSアプリで観光情報やクーポンなど発信も

地方に点在する観光地など、移動手段の確保が課題となっているエリアでは、MaaSの導入に期待する声が多く挙がっている。

地域ぐるみでMaaSを導入し、各モビリティの乗り換えを円滑にする交通結節点の設置をしたり、地域に適応したモビリティのシェアサービスを導入したりするほか、MaaSアプリの中に観光情報やクーポンなどを盛り込むことで需要を喚起する取り組みも有効だ。

また、自らシェアサービスを導入し、施設内の移動や周辺の移動に利便性をもたらす取り組みなども進められている。

ツアーなどを企画・実施する観光業者は、柔軟な移動を可能にするMaaSによって個人旅行向けの企画の幅を広げることができるほか、MaaSに旅行クーポンや観光情報を付加することをはじめ、ツアーそのものをMaaSに組み込むことも可能だ。

■医療系:コンタクトレスでの問診・搬送に着目を

医療分野では、MaaSの活用を模索する動きが進められている。ヘルスケア大手のフィリップス・ジャパンは2019年、長野県伊那市とともにヘルスケアモビリティの導入・活用に向け実証に着手した。

看護師とドライバーが乗車したヘルスケアモビリティが自宅を訪れ、患者はビデオ通話で医師による診察を受け、看護師による処置や検査を受けることができるサービスで、移動による身体的負担や経済的な負担を軽減することができる。

オンライン診療と一定の医療処置を組み合わせる形で、医療環境が乏しい地域などでの導入に期待が持たれる。

このほか、自動運転技術を活用したモビリティが実現されれば、新型コロナウイルスをはじめとした感染症対策などでの活用も考えられる。感染の疑いがある患者をコンタクトレスで問診・搬送することができそうだ。

【参考】フィリップスの取り組みについては「地方のヘルスケア課題、「医療×MaaS」で解消!MONETとフィリップスが専用モビリティ」も参照。

■メディア・広告業:車内やMaaSアプリで広告・コンテンツ配信

広告業においては、現在タクシーのデジタルサイネージなどが成長を続けているが、自動運転サービスの普及とともにこうした媒体を搭載可能な車両が増加し、広告効果をいっそう高めることが可能になりそうだ。

位置情報や移動を伴うモビリティ広告は、視聴者の目的などに合致したジャンルの広告を流しやすい。ビッグデータを有効活用することで訴求効果もより高めることができ、将来のメディアとしての期待は高い。

また、大勢の利用が想定されるMaaSアプリにも広告機能を設ける余地がある。地域の飲食店や観光施設、土産物屋など、ローカルな情報を広告化するビジネスも想定される。

【参考】タクシーにおけるデジタルサイネージについては「注目の新広告枠…タクシー内テレビの仁義なきシェア戦い」も参照。

■製造・卸売業:自動運転はもちろん、物流版MaaSにも注目を

商品の製造・卸売りを担う業種も、各地に商品を配送する運輸の段階で自動運転やMaaSを導入することが可能だ。

自動運転の導入に関しては説明する必要もなさそうだが、興味を引くのはMaaSの導入だ。物流現場では現在、ドライバー不足の解消に向けライバル社と手を組み配送をシェアする動きが広がりつつある。

メジャーどころでは、アサヒビール、キリンビール、サントリービール、サッポロビールのビール大手4社が運輸事業者の協力のもと共同配送に取り組んでいる。配送をシェアすることで物流に関するコストを引き下げる狙いだ。

すでに配送ドライバーと荷主をマッチングするサービス「PickGo」なども登場しているが、将来的には物流版MaaSとして、全国各地への配送が体系的に整備され、柔軟かつ効率的な物流網が形成される可能性も高そうだ。

■【まとめ】「移動」をキーワードに新規ビジネスを

「自分の業界には関係ない」と高をくくっている事業者もいるかもしれないが、一度MONETコンソーシアムの加盟企業一覧に目を通してもらいたい。ライバル企業がすでに加盟し、研究を進めているかもしれないのだ。

▼加盟企業一覧|MONETコンソーシアム
https://consortium.monet-technologies.com/member

人やモノをはじめ「移動」という行為は非常に多くの業種に関わる。この移動に変革をもたらすのが自動運転やMaaSだ。また、これまで移動を伴わなかった業種も、新たに移動を結び付けることで新規ビジネスが生まれるかもしれない。

利便性の高い「移動」をキーワードに、今一度事業を見つめ直す機会を設けてみてはいかがだろうか。

【参考】関連記事としては「自動運転社会の到来で激変する9つの業界」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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