史上初、テスラ車が安全テストに合格 日本車超えか

日本はまだ合格していない



テスラのModel Yが「史上初」の快挙を達成した。2026年5月7日、米国の道路安全局NHTSAがテスラModel Y(2026年型)を「新しいADAS安全テストに全項目合格した世界初の車両」として発表したのだ。自動運転支援技術8項目の合格で、トヨタホンダ日産を含む他の自動車メーカーはまだ合格ゼロという状況だ。


合格はテスラの自己申告によるもので、他社の多くはまだテストを提出していない。また同じNHTSAが、テスラの監視付き運転支援ソフトウェア「FSD(Full Self-Driving)」を搭載した約320万台を「視界が悪い条件下での事故リスク」で調査中でもある。

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■テスラが「史上初合格」。新ADASテストとは何か

NHTSAは米国の新車安全評価プログラム(NCAP)に新たなADAS評価項目を追加した。ADASとは先進運転支援システムの略で、自動運転レベル2相当の安全機能群を指す。運転支援であり、常にドライバーが注意を保ち制御する必要がある技術だ。

今回合格した8項目のうち新たに追加された4項目は、歩行者AEB(自動緊急ブレーキ)・車線維持支援・死角警告・死角介入。既存の4項目は前方衝突警告・衝突直前ブレーキ・動的ブレーキサポート・車線逸脱警告だ。対象は2025年11月12日以降に製造された2026年型Model Yで、NHTSA長官のJonathan Morrison氏は「消費者に最も包括的な安全評価を提供する重要な一歩だ」と述べた。

【自動運転ラボの視点】
ADASテストはあくまで「運転支援技術」の評価であり、自動運転そのものとは別物だ。テスラが合格した8項目は、多くの量産車にすでに搭載されている安全機能の評価であることを踏まえた上で理解する必要がある。

■他社がまだ合格ゼロの理由

死角警告・車線維持・歩行者AEBはトヨタ・ホンダ・日産を含む多くのメーカーの車種に標準または広く搭載されている技術だ。他社が合格ゼロなのは、技術がないからではない。


理由はNHTSAの規制タイムラインにある。当初NHTSAは新ADASテストを2026年型から義務化する予定だった。しかし2025年9月、トランプ政権が自動車業界団体「Alliance for Automotive Innovation」の要請を受けて実施を2027年型へ1年延期した。この延期により2026年型では任意提出方式となり、テスラが真っ先に提出したため「史上初」という結果になった。NHTSAも「ほとんどのメーカーが未提出の理由はタイムラインが後ろ倒しになったためで、技術がないからではない」と認めている。

【参考】関連記事としては「自動運転の「国際標準」 6月制定へ 日本はどうなる?」も参照。

■テストは「自己申告方式」。2027年型からNHTSAが独自検査

もう一つの重要な文脈が「自己申告方式」という点だ。今回の合格はテスラが自社でテストを実施し、その結果をNHTSAに提出したもので、NHTSAが直接試験走行して検証したわけではない。TechCrunchによれば、メーカーが合格を主張してもNHTSAの確認テストで不合格になれば認定が取り消される仕組みにはなっているが、現時点ではテスラの申告をNHTSAが確認した形だ。

NHTSAは2027年型から契約試験ラボを使った独自の検査を開始する予定で、その段階になれば各メーカーの客観的な比較が初めて可能になる。「自分で採点して提出した段階」の合格であることを念頭に置く必要がある。


【参考】関連記事としては「テスラ、自動運転車向けの「巨大洗車場」建設」も参照。

■FSD約320万台の調査との同時進行

NHTSAは同じタイミングで、テスラのFSD(監視付き運転支援ソフトウェア)を搭載した約320万台を「視界低下条件下での事故リスク」でエンジニアリング分析調査中だ。太陽光のまぶしさ・霧・砂塵などで視界が悪い状況でのFSDの安全性が調査対象で、少なくとも9件の記録された事故、うち1件は死亡事故を含む。この調査はすでに予備評価から格上げされた段階にある。

NHTSAの公式見解では「ADASテストはFSDとは独立した基本機能を評価するものであり矛盾しない」としている。技術的には正しい整理で、テストで合格した8項目はFSDとは別の安全機能だ。また今回の合格対象は2025年11月12日以降に製造された2026年型Model Yで、調査対象の約320万台には旧型ハードウェアを搭載した車両も多く含まれる。ただし読者の目線では「同じNHTSAが同じテスラを賞賛しながら調査している」という見え方は避けられない。

【参考】関連記事としては「テスラ、ロボタクシー事故をすべて隠蔽」も参照。

テスラ、自動運転ロボタクシー事故を隠蔽か

■2027年型からが「本当の比較」。日本メーカーへの影響

今回の「史上初合格」の本当の意義は、2027年型に向けた起点という点にある。NHTSAが独自検査を開始すれば、トヨタ・ホンダ・日産など日本メーカーも合否の結果が公開される。日本車は欧州NCAPの安全評価でも高い実績を持っており、技術面での問題はない見方が一般的だ。

2027年に向けて各社が提出し、客観的な比較が始まった段階が「本当の比較」となる。テスラが真っ先に提出して合格した事実は評価に値するが、それは「史上初」であって「唯一」ではない。自動運転支援技術の安全基準が世界的に整備されつつある流れの中で、今回のテスラの合格が一石を投じたことは確かだ。その流れを日本のメーカーも注目しながら進んでいくことになるだろう。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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