自動運転AI、道路交通法の「脆弱性」を見つけてしまう

無人化加速へ改正必須



法律は独特の言い回しで成文化されており、理解しづらい条文も少なくない。道路交通法はその典型例の一つと言える。解釈が判然としないケースが多々あり、時に現場の警察官でさえも間違うほどだ。


また、クルマや歩行者などが介在する道路交通においては、予測不可能な状況の発生も数知れず、すべてのパターンを網羅する形で明文化するのは困難を極める。

こうした「あいまい」さが、自動運転実用化に伴い浮き彫りになり始めた。道路交通法には判断基準が明確に示されていない、言わば「脆弱性」があり、関連省令を把握している警察であっても明確な回答を示せないケースが出てきていることが明らかになりつつある。

自動運転開発者からはどのような声が上がっているのか。道交法の課題に触れていこう。

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■自動運転開発者の声・要望

自動運転には判断基準の明確化が必須

自動運転車の公道走行に必須なのは、高度な技術だけではない。走行ルールとなる法律の整備も必要不可欠だ。自動運転の脳となるAI・コンピュータは、道路交通法などをベースに基本的な走行ルールを学び、判断基準とするためだ。


しかし、自動運転サービスが具体化するにつれ、法規定のあいまいさゆえに自動運転システム(開発者)が判断に窮する場面がいろいろと出始めているようだ。

判断基準が明確でなければ、コンピュータであるシステムは正確な挙動を行うことができない。また、法と道路交通の実情が著しく乖離していれば、一般車両との間で摩擦が起きやすい。

こうした問題については警察庁も認識しており、同庁は2025年度、開発者が抱える課題の把握や交通ルールの解釈の明確化に向け、ヒアリング調査を実施した。

その結果は「令和7年度自動運転の拡大に向けた調査研究報告書」にまとめられている。以下、同報告書の中身に沿って、事業者からの声と警察庁の回答について紹介していく。


警察庁、自動運転AIの悩みに「あいまい回答」!道交法の解釈めぐり”解決放棄”か

右折レーン進入時に先行車列が長い場合の導流帯の走行

右折レーンがある交差点手前において、レーンが分岐する前のポイントに導流帯(ゼブラゾーン)が設置されていることがある。右折レーンに入る場合、正しくはゼブラゾーンを避けてから入ることになるが、入ったとしても特段の罰則はなく、普通にゼブラゾーンを通過して右折レーンに入る一般車両は少なくない。

自動運転車が本来のルールを遵守してゼブラゾーンを避けてから右折レーンに入ろうとした際、右折待ちの車両の列がゼブラゾーンの中まで延びていてレーンに入れなかったり、ゼブラゾーンから突っ込んできたりする後続車両に注意を払わなければならない。

それゆえ、開発者からは「自動運転車もゼブラゾーンを走行できないだろうか」――といった意見・要望が寄せられたようだ。

ゼブラゾーンは「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」において「車両の安全かつ円滑な走行を誘導するために設けられた場所」と位置付けられており、「交通の方法に関する教則」では「車の通行を安全で円滑に誘導するため、車が通らないようにしている道路の部分であること」とされている。

つまり、通行は禁止されていないものの、教則においては通行しない方向で定められているのだ。警察庁は「通行せざるを得ない状況以外の通行を控えるようお願いする」と回答している。

非常にあいまいで、結局、ゼブラゾーンの通行はドライバー次第……ということになる。明確なルール化が必要な自動運転車にとって、何の解決にも至らない回答となっているのだ。

信号のない交差点における歩行者等の定義

信号のない横断歩道の問題だ。横断歩道に差し掛かった際、付近にいる歩行者などが渡ろうとしているのかそうでないのか、判断しにくい場面は多々ある。

人間のドライバーであれば、歩行者の目線や動き、ジェスチャーなどを総合的に判断して予測することもできるが、それでも100%予測は難しい。ましてや自動運転車は、こうした細かな挙動をもとに予測するのは現状苦手で、正確な判断ができない。

ゆえに、開発者からは「横断しようとする歩行者や自転車」の定義を明確にしてほしい旨要望が出ているようだ。

道交法第 38条第1項の「歩行者等があるときは、(中略)通行を妨げないようにしなければならない」と規定されており、歩行者などが優先されることに争いはない。その判断材料としては、「交通の方法に関する教則」において、横断しようとする歩行者は手を上げるなどして運転者に対して横断する意思を明確に伝え、左右を確認するなどの行動をとるよう示されている。

しかし、横断歩道を渡ろうとする際に手を上げるのは、幼児や小学校低学年くらいまでで、9割以上の歩行者はこういったアクションを示さないため、参考にならない。

明確な「渡るサイン」が義務付けられれば、人間のドライバーも自動運転車も困らない。そういった規定が新設されることを望みたい。

自転車の追い抜き(追い越し)

3つ目は、車道の走行車線に十分な幅がない場所で前方を走行する自転車を追い抜く(追い越し)場面だ。車速を維持したまま追い抜く際、どのくらい側方間隔を開ければよいのか不明確で、走行車線に十分な幅がない場合、自転車との側方間隔の距離によっては中央線を若干超える場合があるが、問題ないか――といった声が上がっているようだ。

道交法17条第5項第4号では、追い越しについて、「車両が通行する道路の左側部分の幅員が6メートルに満たない道路で、かつ道路標識などにより追い越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されていない場合は、道路の中央から右の部分にはみ出して通行することができる」とされている。

また、道交法改正により、18条に「自動車等が自転車等の右側を通過する場合において、両者の間に十分な間隔がないときは、自動車等は自転車等との間隔に応じた安全な速度で進行しなければならない」旨新たに盛り込まれた。

この「十分な間隔」や「間隔に応じた安全な速度」については明確な規定はなく、警察庁は「例えば都市部の一般的な幹線道路においては、十分な間隔として1メートル程度が一つの目安になると考えられ、両者の間隔と安全な速度について現在実証を行っている」という。

状況により細かく数字が変動することになりそうだが、厳密な数字が出たほうが自動運転車も人間のドライバーも運転しやすくなることは言うまでもないだろう。

車両の走行速度

高速道路上の区間において、雨などで時速50キロメートル規制など速度規制が設定された場面では、可変標識によって規制速度が表示された直後に時速50キロメートルに落とすと後続車両に追突される危険性がある――といった声も上がっているようだ。

一般ドライバーであれば柔軟に対応し、可変標識の前後で多少速度がオーバーしても緩やかに減速するものと思われるが、杓子定規に制限速度を守ろうとする自動運転車にとっては、その辺の柔軟な判断が難しいのだろう。

高速道路に関しては、合流時の「速度差」も話題になることがある。直前の規制速度が時速30キロ程度であるにもかかわらず、加速車線で本線並みの速度まで上げなければならない。加速車線が長ければ問題ないが、場所によってはわずか70メートルしかないところもある。

急激に速度を変えなければならない場面に対するケアが必要なのかもしれない。

右左折時の合図

ウィンカーのタイミングに関する意見も出ている。右左折する交差点の手前の道路区間が30メートルに満たない場合、道路交通法施行令で定められた30メートル手前で合図が出せない――といった声だ。

この問題に関しては、道路形状によっては物理的に不可能な場合があり、警察としては、30メートル手前で合図を行うことができない場合、可能な限り手前の地点で合図を行うようお願いしている。

杓子定規過ぎる気もするが、道交法を厳密に守ることを前提とすれば、右左折不可能となる。こういった細かな部分も、施行令などで「物理的に不可能な場合は~~」など、一言添えるだけで柔軟な対応が可能になりそうだ。

■【まとめ】脆弱性は道路交通法の運命?

日本では、これまでも自動運転走行を可能にする道路交通法の改正などが逐次行われてきたが、それは大枠としての改正で、細かい部分は考慮されていない。

自動運転サービスが具体化するにつれ、既存の道交法では対応しきれない面が浮き彫りとなっており、ある意味、道交法の「脆弱性」が次々と見つかっているような状況だ。こうした問題の多くは、本質的に人間のドライバーにも共通するものであり、さまざまな事項への明確な定義付けが必要な時期が訪れたとも言える。

ただ、無限とも言える人間の行動を予知・予測するには限界があり、すべてを明確に定義することは困難とも感じる。脆弱性が含まれ続けるのが道路交通法の運命なのだろうか。

警察庁、ひいては国は今後どのように改善を図っていくのか。要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転関連の法律・ルール解説(日本・海外)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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