
警察庁が、道路交通法に関する自動運転AIの悩み相談を実施したようだ。道路交通法においてあいまいな解釈や定義を解決する取り組みの一環で、開発事業者を対象にヒアリング調査を実施した。
事業者からどのような悩みが相談され、警察庁はどのような回答を行ったのか。中には根本的な解決を放棄しているともとられかねない回答もある。各社の悩みと具体的な回答に触れていこう。
▼令和7年度 自動運転の拡大に向けた調査研究報告書|警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/r7_tyosakenkyuhoukokusyo.pdf
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■道路交通ルールに関する各社の悩み
自動運転は「あいまい」「抽象的」なものが苦手
自動運転は、AIやセンサーが目・脳の役割を担うことで自律走行を実現するが、周囲と協調した安全な走行を行うためには指針となるルールが必要となる。それが道路交通法だ。同法を正しく理解し遵守することで模範的な運転をおこない、事故を抑制するのだ。
ただ、自動運転は新しい技術であり、運転手の存在を前提に作られた道交法では未整備の部分もある。また、同法は道路における交通主体の挙動を網羅的に定めた規範ではない。内容が抽象的なものも多く、具体の交通状況を総合的に判断する必要があるが、実際の道路交通は千差万別で、適切な規定を一義的・定量的に定めることは困難となっている。
こうしたあいまいな点をコンピュータが理解する(プログラミングする)のは当然難しい。そこで、開発上課題となる具体的な交通上の場面について、関係規定の法解釈や開発の目安となる事例に関し事業者と意見交換を実施した。
ヒアリングは2025年7~8月に47 主体を対象に実施し、このうち 29 主体から計 82 事例を得たとしている。「令和7年度 自動運転の拡大に向けた調査研究報告書」において、事業者から提出された事例のうち代表的な5つの事例が掲載されているので、以下これらを紹介していく。
事例1:右折レーン進入時に先行車列が長い場合の導流帯の走行
一つ目は、ゼブラゾーン(導流帯)に関する事例だ。交差点で右折するため右折レーンへ進入する際、右折待ちのクルマが多く車列が長くなり、その車列がゼブラゾーンまで達している場合、経路に従って右折レーンに入ろうとすると割り込む形となり、他車両との事故リスクが高くなる――といったものだ。

問題は、ゼブラゾーンの存在にある。ゼブラゾーンは「道路標識、区画線及び道路標示に関する
命令」に規定されており、「車両の安全かつ円滑な走行を誘導するために設けられた場所」と定義されている。
道交法上はゼブラゾーンの通行は禁止されておらず、一般車両も自動運転車も通行することができるが、一方で、「交通の方法に関する教則」において「車の通行を安全で円滑に誘導するため、車が通らないようにしている道路の部分」と示されており、通行せざるを得ない状況以外は通行を控えるよう指導されている。
ゼブラゾーンの通行は禁止されていないものの、なるべく通行しないでね――といった位置づけなのだ。交通ルール遵守の立場で言えば、基本的に避けて通るべき――となるが、こうした運用を行うと、現実的に車列に割り込む格好となる場合がある。
警察庁はこの課題に対し、ゼブラゾーンの取り扱いを説明したうえで「導流帯を通行せざるを得ない状況以外には通行を控えるようお願いします」と回答している。
……こういった回答をされると、開発事業者は困るだろう。この回答は「現場の状況を踏まえて柔軟に判断してね」といったもので、根本的な解決を放棄しているためだ。
開発事業者としては、ゼブラゾーンの走行を明確に認めるか、一般車両に原則ゼブラゾーンを通行しないよう求める2者択一が望ましいのだ。検討課題として、議論が継続されることが望まれる。
なお、ゼブラゾーンをめぐっては、千葉県柏市内の自動運転実証などでゼブラゾーンの削減・消去などを行う取り組みが行われている。ゼブラゾーンの削減・消去を行っても特に問題がないことが確認されており、今後、本当に必要な場所以外ゼブラゾーンがどんどん消されていく現象が国内各地で起こるかもしれない。
【参考】関連記事「日本から「ゼブラゾーン」が無くなる?自動運転を阻害」も参照。
事例2:信号のない交差点における歩行者等の定義
2例目は、信号のない交差点における歩行者などの挙動判断についてだ。自動運転車は、人間の感情や挙動を正確に予測することができないため、信号のない交差点において歩行者や自転車が横断しようとしているのかどうかを正確に判断することが難しい。どういった挙動をもとに判断すればよいのか、 「横断しようとする歩行者や自転車の定義」を明確にしてほしいとする意見が出ている。
これに対し、警察庁は「横断しようとする歩行者等」については、歩行者と横断歩道の距離、車両の速度、歩行者の速度などの具体的な状況を総合的に判断することが必要であり、一義的・定量的に定義することは困難としている。

個別具体の「横断しようとする歩行者等」の判断に当たっては、道路交通法第 38条第1項「歩行者等があるときは、(中略)通行を妨げないようにしなければならない」という規定に違反しないよう、車両の通行によって、歩行者などが自らの進行速度を変えたり立ち止まったりしないようにすることが必要という。
また、「信号のない場所を横断しようとする歩行者」に対しては、「交通の方法に関する教則」において、手を上げるなどして運転者に対して横断する意思を明確に伝える、左右を確認するなどの行動をとるよう示しており、こうした行動についても判断の参考とするようお願いしている。
教則通り、すべての歩行者が横断歩道を渡る際に手を上げるのであれば、それは重要な判断材料となる。しかし、実際手を上げているのは幼児と新一年生までではないだろうか。実例の少ない判断情報だ。
一般車両の運転においても、横断歩道付近に歩行者がいれば一度停止するが、その後歩行者が横断するそぶりを見せない場合、どうするか。対向車の様子をうかがって立ち止まっているかもしれないし、クルマに対しお先にどうぞ……と思っているかもしれない。その判断は単純ではない。
「〇〇秒間停止し、渡るそぶりを見せなければ進行して良い」「歩行者が渡る際は必ず手を上げる。上げられない場合の代替措置として……」といった感じで、明確なルールを設けなければ、自動運転車も人間のドライバーも、取り締まる警察官もあいまいな状態となる。
警察庁として、一定の見解を出してほしいところだ。
事例3:自転車の追い抜き
3例目は、今話題の「自転車を追い抜く(追い越す)」シーンだ。車道の走行車線に十分な幅がない場所で前方を走行する自転車を追い抜く場面において、 速度を維持したまま追い抜く際、どのくらいの距離の側方間隔を開ければよいのか不明確という意見が出された。
また、 走行車線に十分な幅がない場合、自転車を追い抜く際の側方間隔の距離によっては中央線を若干超える場合があるが問題ないか――といった悩みも打ち明けられている。

警察庁は、通行中の自転車を追い抜く場合、基本的には道路交通法第2条第1項第 21 号の追越しに該当し、同法第 17 条第5項第4号に示されるとおり、車両が通行する道路の左側部分の幅員が6メートル未満で、かつ、道路標識などにより追い越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されていない場合であれば、道路の中央から最小限はみ出して通行することができる。
また、道交法改正により、自動車等が自転車等の右側を通過する場合において、両者の間に十分な間隔がないときは、自動車等は自転車等との間隔に応じた安全な速度で進行しなければならない旨の規定が第18条に盛り込まれた。
本規定に定める間隔については、自動車等と自転車等との具体的な通行状況、道路状況、交通状況等により異なるため、具体的な基準を一概に設けることは困難で、例えば都市部の一般的な幹線道路においては、十分な間隔として1メートル程度が一つの目安になると考えられ、両者の間隔と安全な速度について現在警察庁において実証を行っている――としている。
黄色のセンターラインのエリアでは自転車を追い越すことができず、渋滞ができるよね――と、各所で話題になっている内容と被るものだ。
自転車との間隔は、警察庁が提示した目安(1メートル)や、ゆとりをもって1.5メートル確保すべき――といった内容が乱立している印象だが、明確には規定されていない。速度も関係してくるため、実証結果を待ちたいところだ。
事例4:車両の走行速度
4つ目の事例は、高速道路における速度規制への対応だ。高速道路走行中の区間に、雨などで時速 50 キロメートル規制といった速度規制が設定された場面において、 可変標識により規制速度が表示された直後に時速 50 キロメートルに落とすと後続車両に追突される危険性があるという意見が出された。
警察庁によると、最高速度を示す標識は、速度規制が行われている区間の始まりの地点に始点標識、終わりの地点に終点標識をそれぞれ設置しており、また規制区間内では、本線車道への流入部付近や、おおむね2キロメートルを超えない範囲で必要な地点に図に示されているような区間内標識が設置されている。

速度規制を認知した場合のほか、運転中に天候や交通状況の変化により速度規制が急遽行われた場合、規制速度の変更がわからない場合であっても天候や交通状況に応じ安全な運転に努めること、 また、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、急ブレーキは禁止されており、速度規制を認知したときは、周囲の車両に合わせて安全に減速するよう要請している。
速度域が高い高速道路においては、周囲の車両との速度差も大きくなりがちで、特に大きな速度差が発生しやすい合流時を懸念する意見も過去に出されている。
柔軟に対応すべきところだが、杓子定規に交通規制(制限速度)を守る自動運転車にとっては、規制の方を柔軟に変更してほしいところなのだろう。
【参考】関連記事「自動運転車、「速度超過」を一部容認か 首都高など一定条件下」も参照。
事例5:右左折時の合図(30メートル未満の場合)
直線区間が30メートル未満の場所で右左折する際、30メートル手前で合図が出せず、右左折ができない――とする意見が出された。交差点を右左折した後、30メートル未満の場所で再度右左折する場合などを想定した悩みだ。
警察庁は、連続して右左折するため、当該交差点の手前の側端から30メートル手前の地点で合図を行うことができない場合、可能な限り手前の地点で合図を行うようお願いしている。

杓子定規にもほどがあるのでは……と突っ込みたくなるほど自動運転車は頭が固い。道路交通法施行令で30メートルや3秒ルールが定められており、30メートルルールを守れないため右左折できない……といった悩みだ。
さすがに、こうした事例に関しては柔軟にプログラムして対応すべきでは……と思うが、ヒアリングの機会を通じて公式見解を求めたのかもしれない。そう思いたい。
■メール窓口で相談や質問に常時対応
警察庁は2025年10月、自動運転車の開発・実用化に資する交通ルールの解釈の明確化について、開発事業者と意見交換する窓口を設置した。
メールアドレスを窓口とし、明確化すべき交通ルールを関係事業者などから募集し、逐次回答するという。会議体のようなものではないようだが、気軽に問い合わせできる点がポイントとなりそうだ。さまざまな質問が寄せられれば、課題の早期発見にもつながる。
▼自動運転車の開発に資する交通ルールの解釈の明確化に関する意見交換枠組みの設置について
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/ikennkoukann.pdf
【参考】関連記事「自動運転AI向けに、道交法の「曖昧な表現」を明確化へ」も参照。
■【まとめ】杓子定規過ぎても交通実態となじまない
これらの悩みは、基本的にルールベースの開発者から寄せられたものと思われる。こうした問題に対し、今後主力となるだろうE2Eベースの自動運転はどのように対応するのだろうか。
道路交通法というルールを学習した後は、あいまいな点は実地で試行錯誤し、グレーゾーンに対して人間同様の対応を身につけていくのだろうか。それとも、グレーは排除する方向で学習を重ねていくのだろうか。
ゼブラゾーンへの対応や方向指示器の30メートルルールなど、杓子定規に守り過ぎても実態の交通となじまないことは往々にしてある。
安全を前提に、道路交通全体の効率性なども踏まえた上で柔軟に運用できるよう、施行規則の明確化をはじめとした法改正を進めていくのも一つの方向性だろう。
【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標・ロードマップ一覧【表付き】」も参照。













