
「初めてのWaymoだったのに」
カリフォルニア州サニーベールに住むDi Jin氏の第一声はこの一言だった。4月27日、仕事の出張でサンノゼ国際空港に向かったJin氏は、Googleの自動運転タクシー「Waymo(ウェイモ)」から降車した直後、トランクが開かないまま車だけが走り去るという事態に直面した。
Jin氏は降車地の空港に取り残され、スーツケースも一緒に消えた。中には仕事用の資料と着替えが入っていた。Waymoのカスタマーサービスに連絡したところ「車は戻せない、デポまで自分で来てほしい」と回答したことでSNSが炎上した。ドライバーがいない自動運転ロボタクシーならではのトラブルが、また一つ記録された。
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■大事な荷物を降ろす前にタクシーが出発。取り残される事態に
4月27日の月曜日、Di Jin氏はサニーベールの自宅からサンノゼ・ミネタ国際空港まで約20分のWaymoライドを予約した。自動運転タクシーへの初乗りだ。乗車中は問題なく、空港に到着した。
しかし降車後、Jin氏がトランクの解除ボタンを押したが何も起きない。アプリの「トランクを開く」ボタンも機能しなかった。確認できる手段をすべて試したが、その間にも車はそのまま走り去った。荷物を下ろせないまま降車地に取り残されたJin氏は、着替えも仕事の資料もないままサンディエゴ行きのフライトに搭乗するしかなかった。Jin氏のコメントは「ボタンを押したが何も起きず、すぐに走り去った。着替えも仕事の資料も全部スーツケースの中だった」というものだ。
Waymoの公式ポリシーによると、トランクは目的地での下車時に自動で開く設計で、外のボタン・アプリ・車内ディスプレイの3つの方法でも開けられるとしている。今回はそのいずれも機能しなかった。人間ドライバーであれば声をかけたり確認したりできるが、無人の自動運転ロボタクシーでは乗客が唯一の判断者だ。
【参考】関連記事としては「Waymoの自動運転タクシー、NYから追放か」も参照。
■Waymoの「自己負担」対応でSNS炎上
Jin氏はすぐにWaymoのカスタマーサービスに連絡した。折り返しの回答は「車はすでにサンフランシスコのデポに向かっており、引き返すことはできない」というものだった。当日中にメールで「荷物はデポで安全に保管されている」との連絡はあったが、そこに添えられた対応策が問題となった。
Waymoが提示したのは「デポまで自分で取りに来てほしい(送迎として無料ライド2回を提供する)」か「荷物を送ってほしい場合は送料自己負担で」という2択だった。デポはサンフランシスコで、サニーベールからの往復は約2時間かかる。Jin氏は「これは忘れ物じゃない。トランクのボタンが壊れていたのだ」と反論し、Waymoの初期対応への不満をSNSで発信した。
Waymoが送料負担を認めたのはその後のことだ。NBC Bay Areaによると「金曜日の午後にWaymoの担当者から電話があり、送料を会社が負担すると伝えられた」とJin氏は語った。TechSpotも5月6日にWaymoが送料免除を確認したと報じている。複数のメディアが問い合わせを行った後のタイミングでの方針変更であり、メディアからの注目が対応を変えた可能性は十分あるが、Waymoは公式にその因果関係を認めてはいない。
【参考】関連記事としては「テスラとGoogleが喧嘩?自動運転車の事故でSNS炎上」も参照。
■Waymoの規約と「補償しない」問題
今回の初期対応の根拠とみられるのがWaymoの利用規約だ。規約には「旅行終了後の忘れ物は補償しない」と明記されており、Waymoは今回の荷物置き去りを「忘れ物」として扱ったことになる。
Jin氏が最も強く反論したのもここだ。「私は忘れていたのではない。トランクボタンが機能しなかったのだ」という主張は規約の適用範囲をめぐる本質的な問いを突きつけている。ボタンが正常に動作していれば荷物は取り出せていたわけで、機器の不具合による損害を「忘れ物」扱いにすることへの批判は当然だろう。また人間ドライバーが乗っていれば「荷物を取り出せましたか」と確認できたはずだという指摘もあり、ドライバーレスゆえの不具合への対応力の低さが改めて問われた。
■過去にもあった置き去り問題
今回のトランク置き去りは初めてではない。SFistによると、2025年2月にはサンフランシスコのテニスコーチ・Daniel Linley氏がゴールデンゲートパークでのWaymoライド後に高額のテニス道具をトランクごと置き去りにされ、小額裁判所に最大12,500ドルの損害賠償を求める訴訟を起こした。
また2025年10月にはフェニックスの空港でも乗客の荷物をトランクに乗せたまま車が出発する事案がX(旧Twitter)で拡散し話題になっている。SFistはその後「Waymoのトランクに荷物を入れるときは注意が必要」という警告記事も掲載した。トランクに荷物を入れる機会が多い空港利用は特にリスクが高い使用シーンで、同様の事案が繰り返されていることは看過できない。
【参考】関連記事としては「自動運転車の事故、日本・海外の事例・事案まとめ」も参照。
■自動運転タクシーが「使える乗り物」になるために
Jin氏は自動運転技術のファンだと述べつつも「この体験で苦い思いをした」とコメントした。Futurismはこの事件を「2026年らしい新しいフラストレーション」と表現した。ドライバーレス技術が日常の移動手段として広がりつつある今、トランクの機器不具合・引き返せないシステム上の制約・「忘れ物扱い」という規約の構造的な問題が浮き彫りになった。
Waymoが今回の件を受けてトランク開錠システムの改善や、機器不具合時の緊急対応フローの整備を行うかどうかはまだ発表されていない。しかし今回のような炎上があるからこそ問題が可視化され、改善につながる。自動運転ロボットタクシーが本当の意味で「使える乗り物」として社会に根付くために、こうしたトラブルが一つひとつ解決されていくことを期待したい。













