日本の物流自動化、「KPI未達成」が濃厚か

次期大綱には自動運転関連KPIも?



出典:首相官邸

次期総合物流施策大綱策定に向けた検討が大詰めを迎えているようだ。2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会が議論を重ねており、2月中にも提言を取りまとめる予定だ。

一方、現在の大綱の進捗状況に目を向けると、目標達成に向けさらなる取り組みが必要な項目が多いことに気付く。物流業務の自動化などの現状値は41%(2025年1月時点)とされており、目標達成は厳しいものと思われる。


待ったをかけることはできない物流問題。現大綱下の進捗状況を見ていこう。

編集部おすすめサービス<PR>
車業界への転職はパソナで!(転職エージェント)
転職後の平均年収837〜1,015万円!今すぐ無料登録を
タクシーアプリは「DiDi」(配車アプリ)
クーポン超充実!「無料」のチャンスも!
新車に定額で乗ろう!MOTA(車のカーリース)
お好きな車が月1万円台!頭金・初期費用なし!
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり)
「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今!
編集部おすすめサービス<PR>
パソナキャリア
転職後の平均年収837〜1,015万円
タクシーアプリDiDi
クーポンが充実!「乗車無料」チャンス
MOTAカーリース
お好きな車が月々1万円台から!
スクエアbang!
「最も安い」自動車保険を提案!

■総合物流施策大綱の概要

輸送力不足解消へさらなる対策を

総合物流施策大綱は、物流に関する新たな方向性を中長期的視点で示した国の方針だ。5年ごとに更新されており、現行大綱は2021年~2025年度、次期大綱は2026年~2030年度を計画期間とする。

2025年3月に開催された「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」で、石破茂前内閣総理大臣が「物流の2024年問題は、『物流革新に向けた政策パッケージ』に基づく取り組みの成果などにより懸念された物流の深刻な停滞は起きていない。一方で、2030 年度には34%の輸送力が不足する見込みで、これを確実に乗り越えるためには対策を抜本的かつ計画的に講じていかなければならない」とし、新たな大綱の策定を指示した。

▼第8回 2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000288.html
▼現行の総合物流施策大綱のKPIの達成・進捗状況
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000288.html


現大綱におけるKPIの大枠

現大綱では、以下において細かくKPIが設定されている。

  • ①物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)
  • ②時間外労働の上限規制の適用を見据えた労働力不足対策の加速と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流の実現)
  • ③強靭性と持続可能性を確保した物流ネットワークの構築(強くてしなやかな物流の実現)

①では、物流業務の自動化・機械化などに関する11項目、②ではトラックドライバーの労働環境関連など17項目、③では都市間速達性の確保やモーダルシフト関連など12項目のKPIがそれぞれ設定されている。各項目の進捗状況については後述する。

自動運転に直接関連する項目は見当たらないが、物流事業者によるDXの一環で、倉庫内や敷地内などで自動運転モビリティを導入した場合などは、物流業務の自動化・機械化や労働力不足の解消などに当たりそうだ。

物流業務の自動化・機械化やデジタル化などに着手している事業者の割合は、目標100%のところ2025年1月時点で47%に留まっている。また、物流DXを実現している事業者の割合は目標70%中41%、荷主と連携している事業者の割合は目標50%中23%の状況だ。


1年前の数字とは言え、2025年1月時点の進捗が目標値の半分に満たないものが多く、2026年3月までに目標を達成するのは困難と思われる。

自動化・機械化については、倉庫などの物流施設へのロボット導入支援や、隊列走行・自動運転の実現に向けた取り組みの推進などが相当する。デジタル化関連では、サプライチェーン全体の最適化を見据えたデジタル化、サイバーポートの推進による港湾物流の生産性向上、データ基盤の整備、特殊車両通行手続の迅速化、ICTを活用した点呼の推進などが含まれる。

それぞれ前進しているのも事実だが、日本全国すべての事業者に浸透させるのはやはり容易ではないようだ。

■総合物流施策大綱の進捗状況

①物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化関連のKPI

①物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化――に関する主なKPIは以下の通りとなっている。(初期値→現状値→目標値)

・物流業務の自動化・機械化やデジタル化に向けた取組に着手している物流事業者の割合
 0%→47%(2025年1月時点)→100%

・物流業務の自動化・機械化やデジタル化により、物流 DX を実現している物流事業者の割合
 0%→41%(2025年1月時点)→70%

・物流業務の自動化・機械化やデジタル化に向けて、荷主と連携した取組を行っている物流事業者の割合
 0%→23%(2025年1月時点)→50%(2025年度)

・サイバーポート(港湾物流)へ接続可能な港湾関係者数
 0者→1,412者(2025年12月時点)→約650者(2025 年度)

・物流効率化法による総合効率化計画の認定件数
 141 件→295件(2025年12月時点)→ 33 件(2025年度)

・物流・商流データ基盤を活用したビジネスモデルの社会実装件数
 0件→6件(2025年2月時点)→3件(2021年度~2025年度)

・物流・商流データ基盤利活用事業者数
 0社→16社(2025年2月時点)→100社(2025年度)

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)
出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

物流業務の自動化・機械化・デジタル化関連は遅れが目立つ。その要因として、各効果に対する物流事業者の理解や荷主との連携の機運に課題があり、取り組みの着手が限定的となったことが挙げられている。

一方、物流・商流データ基盤関連は一定の成果が出ているようだ。活用する事業者総数は停滞しているものの、ビジネスモデルの社会実装はすでに目標を達成している。

②時間外労働の上限規制の適用を見据えた労働力不足対策の加速と物流構造改革の推進関連のKPI

②時間外労働の上限規制の適用を見据えた労働力不足対策の加速と物流構造改革の推進――に関する主なKPIは以下の通りとなっている。

・トラックドライバーの年間所得額平均に関する目標
 大型トラック 454万円、中小型トラック 419万円 → 大型492万円、中小型437万円(2024年) → 全産業平均(487万円→527万円)まで引き上げる

・トラックドライバーの平均労働時間に関する目標
 大型2,532 時間、中小型トラック 2,484時間 → 大型2,484時間、中小型2,424時間 → 全産業平 均(2,052時間/2024年)まで引き下げる

・新設倉庫における荷待ち発生率
 約25%(2020 年度) → 19%(2024年3月末) → 0%

・物流業の労働生産性
 2,569 円/時(2018年度) →  2,623円/時(2023年度) → 2018年度比で2割程度向上

・トラックの積載効率
 37.7%(2019年度) → 41.3%(2024年度) → 50%

・宅配便の再配達率
 10%程度(2020年度) → 8.3%程度(大手事業者6社ベース) →  7.5%程度

・地方公共団体におけるドローン物流の社会実装件数
 ―― → 13件(2025年2月時点) → 174件

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)
出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)
出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

トラックドライバーの待遇に関しては、改正物流法などの施行を進めてきたもののその効果は限定的となっているようだ。新設倉庫における荷待ち発生率やトラックの積載効率に関しても、施設を利用する荷主との連携や、荷主・物流事業者の取り組みは限定的となっている。

宅配便の再配達率は、置き配をはじめとする多様な受取方法の普及・浸透やポイント還元実証事業の効果などにより若干改善が見られるものの、目標値には至っていない状況だ。

③強靭性と持続可能性を確保した物流ネットワークの構築関連のKPI

続いては、「③強靭性と持続可能性を確保した物流ネットワークの構築関連のKPI」についてだ。

・道路による都市間速達性の確保率
 57%(2019年度) → 57%(2023年度) → 63%

・モーダルシフトに関する目標(鉄道による貨物輸送トンキロ)
 184 億トンキロ(2019年度) → 164億トンキロ(2024年度) → 209億トンキロ

・モーダルシフトに関する目標(海運による貨物輸送トンキロ)
 358億トンキロ(2019年度) → 371億トンキロ(2023年度) → 389 億トンキロ

・脱炭素化された物流施設の数
 ―― → 125施設(2025年12月時点) → 35施設

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)
出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)
出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

高規格道路の整備延長は着実に伸びている一方、交通流の変化や新たな速度低下箇所の発生などさまざまな要因が影響し、実績値が横ばいになっているようだ。

モーダルシフトもやや低調だが、度重なる自然災害による大規模な輸送障害などが要因となっているようだ。

■総合物流施策大綱と自動運転

現大綱では、隊列走行やレベル4トラックへの期待に言及

現大綱(2021~2025年度)においては、物流分野の技術革新やデジタル化が遅れているという指摘がある一方、社会実装の条件が整いつつあるドローンや自動運転については官民連携により実用化やビジネスモデルの構築に向けた取り組みが進んでいるとしている。

幹線輸送における自動化・機械化の導入に向けた取り組みに関しては、トラックの隊列走行や自動運転トラックの物流への活用については、ドライバー不足の解消をはじめ、燃費改善など生産性向上に大きな効果が期待できることから、車両などの安全を確保しつつ、技術開発や実証実験などの取り組みのほか、イノベーションに対応した道路の将来像について検討を進めるとしている。

特に、高速道路での後続車有人隊列走行システムについて、2021 年に商業化していくとともに、より高度な車群維持機能を付加した発展型を開発し、2023 年以降の商業化を目指すほか、隊列走行システムも含む運行管理システムを検討し、高速道路でのレベル4自動運転トラックについては2025 年以降の実現を目指すこととしていた。

道路整備の観点では、三大都市圏を繋ぐダブルネットワークの安定性・効率性をさらに向上させるとともに、本線合流部での安全対策や隊列形成・分離スペースの確保など、新東名・新名神高速道路を中心に隊列走行の実現に向けたインフラ側からの支援策について検討を推進するほか、自動運転に対応した道路空間の基準などの整備を推進するとしている。

航空分野においては、 空港における地上支援業務の自動化・効率化に向け、2025 年までに空港制限区域内における車両に係るレベル4無人自動運転の導入を目指すこととしている。

次期大綱にはレベル4トラックが盛り込まれる?

次期大綱には、サービスの供給制約に対応するための徹底的な物流効率化の観点から、自動運転トラックの導入台数や新モーダルシフトに関する指標、船舶・鉄道等による農水産品・食品の輸送の割合、宅配便の再配達率、地方公共団体におけるドローン配送の社会実装件数――などの設定が予定されているようだ。

また、別の資料では、次期大綱策定に向けて考慮すべき点の一つに自動運転などの技術革新の進展が挙げられており、1対Nの自動運転実現による労働生産性の向上などに触れている。

2050年までの人口減2,100万人(▲17%)に単純比例すると、トラックやバス、タクシーなどの商用車ドライバーは▲20万人となるが、自動運転などで生産性を向上して現在の事業規模を維持すると、人件費の減少分に相当する年間1兆円が活用可能になるとしている。

また、政府の中長期計画「デジタルライフライン全国総合整備計画」において、現在進行形で自動物流道路の構築に向けた調査・検討が進められており、早期に取り組むアーリーハーベストプロジェクトとして自動運転サービス支援道の研究開発などが位置づけられている。

まず、新東名高速道路 の駿河湾沼津SA~浜松SA間100キロでレベル4自動運転トラックを実現し、その後東北自動車道の佐野SA~大谷PA間約40キロに拡大し、物流ニーズに応じて2031年以後に東北~九州へインフラ整備を拡大していく計画だ。

レベル4自動運転トラックの開発・実証はすでに本格化している。このほか、協調型自動運転の通信方式や物流拠点となるモビリティハブの整備に係る国としての方針、共同輸送システムや車両情報連携システムの構築・実証、車両情報連携インターフェースなどの規格・標準化などについて検討が進められている。

こうした自動運転関連の指標が、次期大綱にどのように盛り込まれるのか必見だ。

自動運転トラック、国交省が「予算40倍」を決断

■【まとめ】次期大綱には自動運転が盛り込まれる可能性大

現大綱は、コロナ禍で始まったこともKPI未達の一因になっているものと思われるが、非接触・密回避などの観点からデジタルソリューションに注目が集まった点も事実だ。

計画期間後半に自動運転トラック実装の機運が高まり、取り組みは大きく前進し始めている。次期大綱に自動運転関連の取り組みが直接盛り込まれることはほぼ間違いなく、2030年度に向けどのような目標が設定されるのか、改めて注目したいところだ。

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事